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朔 ―― 

 ―― 今は昔 ――


 

 漆黒の馬が、風を切り、力強く荒々しい蹄の音を響かせて、桑畑を駆け抜けていく。狩衣(かりぎぬ)の袖を風になびかせた随身(ずいじん)たちが、必死にその後を追った。


「おお、山鳥か。今日の獲物はこいつにしよう」


 男が手綱を片手に矢を放つ。手応えを感じて、男は不敵な笑みを浮かべた。


 仕留めた獲物を見もせず、随身に視線を向ける。随身の一人が草を分け入り、茂みの中から射貫かれた山鳥を片手で持ち上げ、男に見せた。


「主上、見事なお腕前、まこと感服いたします」


 深淵(しんえん)のような孤独と行き場のない情熱。すべてを支配してもなお、この雅なる都の闇を照らすものは何ひとつない。


 男は不意に馬を止めた。桑畑の奥にある暗がりへと鋭い視線を向ける。

 だが、そこには風に揺れる生い茂った草と、濃い影があるばかり。

 随身たちに緊張が走る。


「……気のせいか」


 男は冷めた表情で随身たちを一瞥すると、一気に馬を走らせた。

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