第二話 拾弍神獣お部屋ツアー、その一
「拾弍神獣お部屋ツアー、始めちゃうよ〜!」
私の手を引いて上機嫌に廊下を進むライチが言う。
何かが始まってしまった。限界オタクの私は、未だ彼女に握られた右手の手汗を気にしてるのに。
「まずはここ!ラムちゃーん、サクラちゃーん、入るよ〜」
「どうぞ」
低めだけど落ち着いた、優しい声。ずっと聞いていたいくらいだ。
声の主は…長い白寄りの銀髪と、頭の両側に巻いた重そうなツノ、それと口元を覆う布が特徴的な青年。中性的だが、身長と体型から、かろうじて男性だとわかる。
肯定的な返事を確認して、ライチが扉を開ける。
「ああ、新たな迷える子羊ですか」
青年は、私を見るなりそう言った。私、そんなに迷って見えますか…。確かに人生迷子だけども。
「そうそう、探偵ちゃんっていうの!」
ライチ、元気よく肯定しないでね。
「サクラ、起きてください」
「くぁ…あ、初めまして、人間さん」
青年は自身の隣で寝息を立てる、車椅子の少女の肩を軽く揺さぶる。茶髪をツインテールに結び、頭には馬の耳。また、草食動物の獣人には珍しく、脚が馬のそれだった。
長いまつ毛に綺麗な瞳。可憐だ。
しかし男女で同室とは。お二人は恋人同士だったりするのかな。
「ボクはサクラ、午神です。走るのが好きなんですが…今は怪我でリハビリ中です」
「えっ」
驚いた。男声。声変わりの終わり切った中学生くらいの声。ってことは。
「えっ、あ、男性!?てっきり女性かと…」
「えへへ…よく言われます」
そりゃそうだろ。顔立ちも完全に女の子のそれ。体型のわかりづらい服を着ているが、その下のミニスカートはとてもよく似合っている。神様が実在することより、男の娘が実在することのほうが衝撃である。
あまりじろじろと見るのも不躾なので、銀髪の青年の方に向き直った。改めて服装を見ると、神父にも似ているし陰陽師っぽさもある。それに口元の白い布。『宗教』という概念そのものの擬人化みたいだ。
「わたくしはラム、見ての通り未神です。今はサクラの世話係…もとい、お目付け役をしています」
なんだ、彼氏ではないのか。少しただならぬ関係を期待してしまっていた。それにしてもお目付け役とは。サクラさん、清楚系に見えて意外とじゃじゃ馬なのかな…。
「…どうかしました?」
いかんいかん。またじろじろと見つめてしまった。慌てて目を逸らし、何でもないです、と言おうとしたとき。
「あ、ボク分かりました。アナタ…ラムさんのふわふわの髪、触ってみたいんでしょ?」
サクラさんはじゃじゃ馬だった。
草食動物なのに、獲物を見つけた目をしている。
「ラムちゃんの髪の手触りは異常だよ?ほら、遠慮なく!」
お転婆具合はライチも負けていない。面白がってか、はたまた天然か、便乗して私の手をラムさんの髪に突っ込む。
「えっ、あ…く、雲みたい…!」
ラムさんの髪は、ストレートなのにふわふわで。緩く編まれた髪に包まれた手には、触れたことのないものの感触がした。
「…」
うわ、すごい。なんかもう、ゴミを見るみたいな目をしている。初対面の人に急に髪を触られたらそうなるよな。実は羊って、毛刈り体験とかで見ず知らずの人に毛を刈られる時、みんなこういう顔をしてるんだろうか。いっそのことそうであってくれ。私を異端にしないでくれ…!
「あっ!すみません!お邪魔しましたぁああ!」
絶対私悪くない。これは事故。てか他二人が悪い。それでも、この圧に耐えかねた私はあわてて部屋を飛び出した。サクラさんはラムさんに小声で説教されているようだが、聞く耳を持たずクスクスと笑っている。これが本当の『馬の耳に念仏』…?
本作をお読みいただきありがとうございます、リアス式海岸です。
まだ二話目にも関わらずお話が短くて申し訳ございません。このごろリアルが忙しくて...ご容赦ください。
さて、新規キャラとしてサクラとラムが登場いたしました。ライチとラビもそうなんですが、作者のお気に入りコンビです。
名前の由来はもちろん(?)お肉。不謹慎かなとも思ったんですが、どうせ殺神事件に巻き込まれるので丁度いいかなと。
二人を皆さんにも好きになっていただけるよう尽力していきます。がんばるぞー!!!
完全に趣味なので投稿頻度は未定ですが、一ヶ月以内には更新できたらいいなと思っています(短かったので早めに更新したい)。
評価やコメントもとても励みになりますので、よろしくお願いします。
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