第一話 デテクティブガール・ミーツ・ケモミミ
昔、昔。
いや嘘。ちょっとだけ昔。
なんなら現代、現代。
人類の暮らす世界に、動物の耳や尻尾を持つ獣人が現れました。
人類は最初警戒したけど、どうやら害は無いみたい。二種は仲良くなって、同じ世界で共存し始めました。多様性ってやつだよね。
そして、獣人の中には、人類の持つ年や時の概念を司る、十二人の神様がいました。そしてその一人が、この月出身超新星配信者、ライチなのです!
あ、『引きこもり探偵』さん、コメントありがとー!
ん?『神様って何するの』…?それはね…
「はぁ…会いたいよ、ライチ…」
大晦日、時刻は二十二時。
私はライチの初配信アーカイブを観ながら資格の勉強に勤むしがない探偵。とは名ばかりの何でも屋。今月だって、依頼は猫探しに迷子探し、老人探し…。それでは足りないので単発バイトを何回か。探偵とは言い難い生活をしていた。オタクだから、漫画やアニメに憧れて探偵を始めたけど、個人でやれることなんて限られてる。よって、何でも屋と化しているのだ。
そんな、なんとも微妙な生活をしている私の心の支えになっているのが、ムンチューバーのライチ。ハツカネズミの獣人で、真っ白の大きな耳がかわいらしい。
まぁ、神様云々は設定だと思うけど。
私は彼女の古参であり、グッズも全種類集めていた。今使っている机だけでも、アクリルスタンドやぬいぐるみがズラっと並んでいる。
この初配信を視聴するのももう37回目。いつになっても、この初々しいライチが好きなのだ。
この頃はともかく、今のライチは超有名人。『会いたい』で会えるような存在ではない。
しかし!私はその権利を得た!
十五分、用意されたお部屋でライチとお話できるチケットに当選してしまったのだ!!!
ライチと会えるのは明日。待ち遠しくて、心臓がバクバクしてる。
早く、早く明日にならないかな…。
「んぅ、…はッ!」
いつの間にか朝!!!
机に突っ伏して寝落ちしていたようで、ガバッと身体を起こす。
今何時?寝過ごしてないよね?
時計の置いてある方を見る。
…ない。時計がない。それどころか、私の机も、椅子も、部屋中のライチグッズも、なんなら私の部屋もない!
代わりに茶色い木の床には、私を中心に大きく魔法陣が描かれ、光を放っている。
「引きこもり探偵さん、大丈夫そ?」
聞き慣れた声にムンチューブのアカウント名を呼ばれて顔を上げると、ライチが私の顔を覗き込んだ。
びっくりして、思わず後ずさる。やばい、運動不足が祟ったのか、腰が、抜けた…。
「うわあぁぁぁああ!ライチ!?ライチだ!!!」
「そーだよ、ライチだよー」
てことは、ここはライチとお話しする部屋?でも、ここまで来た記憶がない。会場へは電車とバスを乗り継いで行くはずだったのだが…。
「お話し会に当選した引きこもり探偵さん…長いから探偵さんでいいよね?」
「はっ、はは、はい!!!」
「無理矢理連れてきてごめんね?突然だけど、ここはライチ達『拾弍神獣』が住んでるお屋敷なんだ」
ライチ達の、お家…?周囲を見ると、ライチの他にも数名の獣人がいた。
「実は毎年、このお屋敷に人間を一人お招きしてて…ライチ達のお仕事とか、生活のお手伝いをしてもらってるんだ。その仕事は一年間住み込みでやってもらうんだけど、大丈夫?」
情報量が多すぎて良く理解できなかった。まさかライチが本当に神様だったなんて。
けど、どうやら私はライチと一年間一緒に住める権利を得てしまったらしい。
なら、返事は決まっている。
「大丈夫です!!!」
「そんなにしんどい仕事じゃないから、身構えなくて大丈夫。それに、一年経ったらちゃーんと帰れるから安心してね!」
むしろ帰りたくないかも。私この家の子になりたいよライチ。
「とりあえず、自己紹介しちゃおうか!ライチのことは知ってるよね?子神のライチ、ムンチューバーをしてるよ!」
「もちろん知ってます!お会いできて光栄です!」
リアルで見る生ライチは、画面越しより何十倍も輝いているように見えた。ライチに加工など不要なのだ。
「次はカウラちゃん!」
「お姉さんの番かしら?丑神のカウラよ。分からないことや、困ったことがあったら何でも言ってね」
ライチの後ろにいた、優しそうな雰囲気のお姉さんが声を上げた。身体の色々なところに乳牛のような模様が入っており、牛の耳とツノが生えていた。
へー、乳牛ってツノあったんだ。
「よろしくお願いします!」
「ふふ、お腹が空いたらお姉さんに言ってね。お菓子をたくさん持ってるから」
たしかに、カウラさんは甘い匂いがする。私は餌付けされるとすぐ懐くチョロい人間(自覚あり)。この人やばいかもしれない。
「あたし、あたしも自己紹介していいか!?」
元気が有り余ってそうな少女が私を見て、目を輝かせている。私とは無縁のタイプだなぁ、と思いながら彼女の方を向く。
「あたしは寅神のココ!お前と同じライチファンだ、よろしくな!あと運動するのが好きだ!」
あれ、このビジュで意外とオタク仲間?案外喋りやすいかも。でも運動はちょっとできないな…。
とりあえず、純粋というか、性格が悪いタイプの陽キャではなさそう。
「えと、お手柔らかに…」
「次、いい?」
私とココさんを不機嫌そうに睨んで、片目を髪で隠した少女が言う。仲が悪いのかな…?
彼女はバニーガールの様な服を着て、足はロングブーツで覆っていた。全体で見ると露出はそこまで多くない。
ポンチョについたフードを被っており、その隙間から長いうさ耳が伸びている。
「…卯神のラビ。ライチの幼馴染、ゲーム友達。ファンクラブ会員番号一番」
圧がすごい!!!何、マウント!?
ラビ。見覚えのある名前。ライチのファンとして有名で、どの配信でも確実に一コメをかっさらう。
その字名は…。
「ラビって…まさか、『ヴォーパルラビー』さん!?」
そう、『ヴォーパルラビー』。ライチの最古参。本人も不敗のゲーマーであり、偶に実況配信をするが、アーカイブは一切残さない。幻の存在だった。
「なんだ、知ってたの」
「あのラビーさんですよ!?知ってるも何も!私が何度貴女と一コメ争いをして敗北したか!」
今にも頭を掻きむしって悶え始めそうな私を見下ろし、何やら満足そうに口角を上げるラビーさん。
悔しいが、この人には勝てない。
「…大丈夫かい?」
情緒のおかしい私に困った様子で、長髪の青年が声をかけてくれた。
顔立ちが非常に整っており、背が高い。上着の前は開いていて肌が見えるが、程よく引き締まった身体つきをしている。お腹は薄め。
彼には重そうなツノと、長い尾が生えていた。神々しい。龍って存在したんだ。
「私は辰神のユウリ。この中では神獣歴が一番長いから、いくらでも頼ってくれていいよ。よろしくね、探偵さん」
「お世話になります」
微笑む姿も非常に様になっている。
格好いい、というより美しい。芸術品みたい。
あ、私の名前はもう探偵さんで行く感じなんだ。
「アオイ、自己紹介を」
「巳神、アオイ。ユウリの同期で、護衛みたいなもの。よろしく」
ユウリさんの後ろからひょっこりと顔を出した、アオイと名乗る少年は、忍者か侍のような格好をしていた。
着物は全体的に黒色、これまた黒い髪を後ろで一つに縛っている。
ユウリさんよりは短いが、腰あたりから蛇の尾が生えている。また、よく見ると舌がスプリットタンになっていた。
少し目つきが悪いが、綺麗な顔をしている。
「残りのみんなは多分…自分達のお部屋にいるよね!じゃ、ライチと一緒にご挨拶しに行こー!」
そう言って、ライチは私の手を握り、「こっちだよー」と歩き出した。ニコニコで。ニコニコライチかわいい。眼福。
…うん?
ちょっとまって。
私の手を、握り?
ら、ライチが、私ごときの手を!
「…この手は一生洗いません!!!」
「あはは、洗ってねー。あと皆んなタメ語でいいんだよ?これから一年間一緒で、家族みたいなものなんだから!」
「ライチと、私が、か、家族!??」
それから、キャパオーバーで立ちくらみを起こし、暫く私は蹲っていた。私の目の前でライチがおろおろしてる。正直困ってるライチもかわいい。
とりあえず、これは全国のライチファンに土下座案件である。ライチに迷惑かけてごめんなさい。
本作をお読みいただきありがとうございます、リアス式海岸です。
この作品は私のオリジナルキャラクター達にざっくりと存在した設定やストーリーをまとめたものになります。元はTRPGのシナリオ用に制作していた話なので、本編は短めになるかと思います。
また、キャラクターの魅力を重視しているので、番外編などを盛り込みながら、皆さんの推しと呼べる存在に出来たら嬉しいです。
それから、各種設定が終わり次第、(アナログですが)キャラクターのイラストや設定画も載せていく予定です。
完全に趣味なので投稿頻度は未定ですが、一ヶ月以内には更新できたらいいなと思っています。
評価やコメントもとても励みになりますので、よろしくお願いします。
コメントについては、どこかでまとめてお返事を書かせていただく予定です。
キャラへの質問などももちろん大歓迎です。




