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109話 エトランゼ 9/16

 この町で手軽な買い食いの選択肢は、甘いドーナツかスブラキ(肉の串焼き)だ。 

 

 四人もこれに漏れることなく、この二択で少し揉めたが、スブラキのピタサンドになった。

 成り行きで奢る事になってしまったラズロックは、安価なドーナツにしたかったようだったが、どこの世界も女子は強い。押し負けてしまった。


「シュテフィ、こっちこっちー!ここで食べよっ」

 幼馴染の三人には「いつもの場所」があるようで狭い路地をクネクネと曲がり、白い壁と壁の間を通り抜け、海が臨める階段までやってくると四人は腰を下ろした。

 


『相変わらずの良い眺め……』


 見晴らしが良い。

 ここに来たのが初めての者なら誰でもこの景色にしばらくは見入ってしまうだろう。


 青い空と、それを映した海。水面は飽きることなくずっとキラキラ輝いている。

 所狭しと岸壁がんぺきに建てられた白い家々と、この街を象徴しているような青で塗られた教会のドーム屋根。

 大通りにあたる黄色いレンガの道以外は、道も石を真っ白なモルタルで固めてあり、どこを見ても白い。そこかしこが光で眩しいキラキラした世界。

 メイシアの記憶と何も変わらない景色。


『って、相変わらずは変か……。だってユイ加那志ガナシがいるって事は、ここは過去のはずだもんね……?』

 などと考え始めたが、これが本当に起こったことだという確証も無い。

 ただの想像の世界かもしれない。と言ったところで「誰の?」となるだけれど。


『うーん……、』



 階段は四人で並んで座るには狭い。


 並んで座ろうとしたラズロックに、 

「アンタが、シュテフィと前に座ったら良いでしょ?」

 と碧眼美人のベリルが顎で指図して、上段にベリルとサブリナ、その前の下段にラズロックとシュテフィが座る。

 メイシアはシュテフィの前の空間に腰を下ろし壁にもたれかかった。


 座るなりラズロックがあからさまにムシャクシャした顔で、ピタサンドにかじりついた。

 

『フフフ。あなた、なかなか苦労しているみたいね。……それにしても、いいなぁ、それ。私も食べたい』

 

 思い返してみれば、メイシアはずっと何も食べていないのだ。

 私だってお腹が減って……と思ったが、減っている訳ではない事に気が付つく。


『……やっぱり、夢の世界だからなの?ま、いっか。ねー、ユイ加那志ー、もう帰ろう?

 ん?帰るってどこに?

 というか、私は何でユイ加那志を知っているんだったっけ?』


 夢とは不思議なものだ。

 重要な気がして考えるのだが、そこまで重要でも無い気もしてくる。



「ねぇ、明日はシュテフィも一緒にいこう!」

 いきなりサブリナが目を輝かせた。


「?」


「何言ってんのよ、そんなことできるわけないでしょ。」

「お前なぁ……。オレはお前が潜るのも賛成していないんだからな。」


「だってさぁ、一緒の方が絶対楽しいじゃないっ!ねー、行こーよー、シュテフィー、」


「どこに……?」

 シュテフィが困ったようにうつむいた。


『ラズロック、今、潜るって言った?んー、何だっけ……?なんか、思い出せそうなんだけど……』


「どこって……そうねぇ。明日はどこにする?」

 

「だーかーらぁー、話聞いてる?ってか、この話はもうお終いっ」

「いたたたっ……もぉっ!」


 ベリルがサブリナの耳を引っ張ったが、それを振りほどいたサブリナが食い下がる。


「シュテフィ、すっごい景色なんだよ!あれを知ってしまったら、冒険しないなんて無理だよ!」

「ったく、お前は……。オレは反対だって言ったよな。それがどれだけ危ない事なのか、まだ分かってないのか?」

 

「ラズだって、楽しんでるじゃない。何よ、急に態度かえちゃって。裏切者っ」


「はぁ?オレは最初からお前が、落ちてしまわないように、仕方なく付き合っているだけだからな!」


「はいはいーー、その話はもうここまで!ラズロック、あんた馬鹿なの?ほんっと、使えないわね!」

「ば、馬鹿ってなんだよ!オレはただ、サブリナが心配で、」


「知ってる知ってる。あんたのお姫様はサブリナなんだから。」


「はぁ?!オレは別にサブリナの事、どーでもいいと思ってるしぃ!」


 ラズロックが、一際ひときわ大きな声でまくし立てると、残っていたピタサンドを口の中に詰め込んで膝に肘をつき、そっぽを向いてしまった。


「ほんっと、男って子供よね、」

「ラズもベリルも、元気だよねぇ」


 いつもの事なのかサブリナが、酸いも甘いも噛み分けたお婆ちゃんのごとく落ち着き払って、ピタサンドにかじりついた。


「もー、サブリナは食べるのが本当に下手ね。ヨーグルトがはみ出してる!」

 ベリルは世話焼きなのか、サブリナの口元をポケットから出したハンカチで拭いていた。


『幼馴染なのかな。気が置けないって感じで、こーゆーのいいなぁ。……でも、ユイ加那志にはなんだか疎外感だよねぇ、』


 うつむいてピタサンドを食べるシュテフィを見て、心がぎゅっとなる。

 

『私が話しかけてあげられたらいいんだけどなぁ、ごめんね、ユイ加那志……』



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