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凛として外道のごとく 『ワレ、異世界ニテ特殊部隊ヲ設立セントス』  作者: 振木岳人
◆ オペレーション・セメタリー(墓地作戦) 編
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92 魔女戦線 中編


 それはパルナバッシュ王、レアンドロ六世が謁見の間に「運ばれ」、王の娘である宰相マファルダが集まった家臣たちから政務などの報告を受けていた時の事。

 (まつりごと)がつつがなく終わり、家臣たちがうやうやしく謁見の間から退出を終えた時に、突如始まった。


「宮廷魔女よ、王の御前に!」


 まるでオペラでも歌い上げるかのような、甲高く仰々しい声で宰相マファルダが宣言した。すると謁見の間の両扉と正面口の扉がドンと開き、完全武装の近衛親衛隊がなだれ込んで来たではないか。


「な、何でしょう?何が起こったの?」

「あたしらに敵意向けるって、どう言う事よ!」

「怖い、怖いです……」


 怒りや怯えに支配され、戸惑うコンチェッタたちは近衛親衛隊の兵士に銃剣を突き付けられて玉座の前に。

 本来ならば宮廷魔女は建国の象徴としての存在しか無く、王が進める日々の行事に傍観者として臨席するだけで、決して王の前に立って膝を折る事は無い。

 だがしかし、この時宰相マファルダは、宮廷魔女三名を王の御前に出させて、膝を折って(こうべ)を垂れよと強要したのだ。


「お待ちください宰相マファルダ。我ら宮廷魔女は玉座の傍らに寄り添いながらも侍従を問わないしきたり。玉座の前で伏せる事は……」


 騒然とする謁見の間において、望みもしないのに嵐の中心となってしまったコンチェッタたち。そう言って抗弁するもマファルダは聞く耳を持っていない。


「黙れ裏切り者、貴様らには王に対する反逆の嫌疑がかかっている!申し開きがあるならば、王の御前にて申し開きをせよと言っているのだ!」


 こうして宮廷魔女三名は玉座の前に担ぎ出され、審判を受ける身として膝を落とした。

 宰相マファルダが問うている内容はズバリ、宮廷魔女が『他国の軍人と秘密裏に接触している』疑惑。つまり、コンチェッタたちと三課のメンバーが情報交換していたのがバレたのである


「貴様らは建国の象徴である魔女、西海魔女連合から派遣された宮廷魔女の立場にありながら、事もあろうにアムセルンド公国の軍人と密かに会っていた。何を話していたのか洗いざらい白状しするのだ!」


 三十名ほどの近衛親衛隊員に囲まれて逃げ場を完全に失ったコンチェッタたちは、宰相マファルダの問いに対してこう答える。──確かに城を抜け出して人と会っていたが、彼らは東の自由貿易王国フォンタニエの陸運業者と聞いた。フォンタニエの化粧品や魔導具を仕入れる商談をしていた と

 これはもちろん、オレルから入れ知恵された言い訳であり、魔女の身に何かあったらそう答えろと言われていたシナリオである。

 だが、そのコンチェッタの言い逃れすら想定済みだったように、宰相マファルダは下卑た笑みをこぼしつつ、勝ち誇ったかのように完全に否定したのである。


「とぼけるのも大概にしなさい、あの者たちの正体は分かっておる!アムセルンド公国陸軍参謀情報部三課、オレル・ダールベック中佐なる者を指揮官とする隠密部隊だそうじゃないか!」

「そんな身分など私たちは知らされていません!彼らはあくまでもフォンタニエの陸運商だと名乗り、フォンタニエの商品について説明を受けていただけです」

「そうだよ、あたしら魔法のホウキや帽子の話を聞いてただけだよ」

「この期に及んでまだそんな事を言うか!」


 正直なところ、魔女の()は悪い。

 マファルダから示された情報は全て合っており、簡単に言い逃れる事が出来ない状態だ。ここまでズバリと真実を突いて来るのであれば、それなりに事実確認を行なっている事にも繋がる。言い逃れや嘘を重ねれば、自分たちの立場が更に悪化してしまうのだ。


 だが、コンチェッタたちはここで「疑問」と言う名の事実に直面する。

 ──何故宰相マファルダは、彼らがアムセルンド公国陸軍 参謀情報部三課の所属だと、事細かに知っているのか──

 この疑問が腹の底から湧き上がり、そして絶対的な疑問として思考の全てが支配された瞬間、その疑問の側面に気付いたのである。


【裏切り者がいる。誰かは分からないが、全ての情報を知る者の中に、間違い無く裏切り者がいる】


 コンチェッタやクラリッチェ、そしてアンナベッラは戦慄し、全身に悪寒を覚える。宰相側は全てを知っており、勝てるタイミングを狙って攻めて来たのだと。

 だが、いずれにしても「おっしゃる通りです」とは言えない。余計な嘘で上書きは出来ないが、オレルに言われた通り商談だと押し通すしか無い。

 相手の正体がアムセルンド公国の軍人であったとしても、我々はフォンタニエの陸運商としか聞いていないと抗弁を続ける。「人と会ったが、真の正体は知らない」と、そしてその正体がもし本当にアムセルンド軍人であったならば、軽率だった反省してるととぼけたのである。


 だが、宰相マファルダの追及が収まる事は無かった。

 彼女は突き付けた事実を認めない魔女を烈火の如く怒りながら、彼女の側近に例の者を呼べと指示する。

 例の者とは?とコンチェッタたちが呆けていると、側近が謁見の扉を開けて頭を下げる。どうやらそこに待たせていた者がいるようで、その者こそが宰相マファルダの切り札らしい。


「入られよ、宮廷魔導師フィルデナンド・ベスタロツァ!(なんじ)の情報を魔女どもに突き付けてやれ!」


 コンチェッタ、クラリッチェ、アンナベッラ。三姉妹のような三人の魔女は腰を抜かす勢いで驚いた。

 このパルナバッシュ王国の建国以来、宮廷魔女の存在はあっても宮廷魔導師の存在などは一切無かった。無かったのだが、宰相自ら宮廷魔導師の存在を声高に叫んだ。

 魔女たちは盛大に驚くと共に、今現在自分たちの置かれた立場を寒々と実感したのである──我々は蚊帳の外なんだ と



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