ミッドウェー西航空戦 終章
少ないと予告しましたが三千六百文字くらいです。
ミッドウェー西航空戦が終わり約一ヶ月。MI艦隊が日本帰って二週間のある日。
首相官邸
「アメリカ政府は何も反応が無いかね」
「スウェーデンに仲介してもらいましたが、今だ戦争意欲は高いようです」
「あれだけ失えば我が国などとっくに根を上げている」
「日本が太平洋を渡って上陸など出来ないことを分かっているから、余裕があります」
「どれだけ損害があったか、アメリカ国民に分かるように宣伝しているのにな」
「「日本の謀略的宣伝で在り、海軍は健在である」と、政府が声明を出し国内を落ち着かせています」
「落ち着くものなのか?」
「東海岸の造船所から次々と出てくる海軍艦艇を新聞に載せていますから、真珠湾の戦力を知らなければ簡単にだまされるでしょうね」
「まだ続くのか」
呉海軍工廠では、雷龍の復旧工事が行われていた。
左舷に取り付けられていた火龍との合体用ボックス構造体の撤去と、左舷対空火力の復活をするために。
監督に来ている造船士官は大佐の襟章をつけていた。中佐で良いと思う。こいつらは。
いやー良かったよ、損害を最小限に食い止めた功績で大佐になれました
まさか「「こんなここもあろうかと」の書」が、使われるとは思ってもいなかった。冗談半分で書いたのにな
ああ、あれには驚いた。榊整備班長だっけ?雷龍艦長と共にやってきて、発破装置を蹴飛ばしたのは
あの気持ちは分かる。俺だって蹴飛ばす
あのドクロマークを描いた時、おまえだってノリノリでもっと丸くとか言ってたじゃ無いか
だってなあ、「「こんなこともあろうかと」の書」だぞ。実行するとは思わなかったんだよ。その場ののりで発破装置一式を積み込んでしまったが
でも完璧に実行してくれたから俺たちは大佐になれた
感謝しなければな
そうだな
海軍省
「搭乗員の損耗が激しい。もっと養成を増やしてほしい」
「ですが、予算の関係も在りこれ以上は」
「金か」
「金です」
「金と言えば、海軍大臣だな」
「会われるのですか」
「正規の予算が無い以上は、頼るしか有るまい」
「最近渋いそうです」
「金欠か?」
「さて?」
長いこと海軍次官で我が世の春を謳歌したが、開戦後すぐに海軍大臣に任命された人の執務室
「大臣。搭乗員養成費用を少し出していただきたい」
「のっけから金の無心か」
「海軍省に行きましたら、予算が無いと言われました」
「来週第二次戦時補正予算を組むので、それまで待ってくれ。それでも足りなければ、ある程度は出そう」
「金無いんですか」
「無いわけじゃ無い、回収が遅れているだけだよ。高野個人名義の資産は去年、きな臭くなった時点で出来る限り回収した。あれだ、麻薬騒ぎの時だ。一割ぐらいは間に合わなかったがな」
「では有るのですね」
「個人名義なのは全体の三割だ。残りは中立国の金融機関を使って会社名義で運用していた。もちろん名義人は俺じゃ無い。その回収が遅れている」
「中立国ですか?どこにそんな国が」
「辛辣だな。ベルギーとかフランスとかだよ。ドイツが急に右傾化した時に、かなりスイスやイギリスに移動したのだがさすがに時間が無かった。海軍次官は忙しいからな」
「スイスなら問題なんじゃないのですか?」
「奴ら手数料が高いのだ。他の国の二倍以上はする」
「スイスという国にそれだけの値打ちがあると言うことでしょう」
「確かにな。スイスに攻め入った国は他の国が寄って集って叩きのめすだろう。それだけ各国や企業・個人の公開口座や秘密口座が有る」
「では、期待しても」
「大丈夫だ。海軍が負ければ終わりだ。それは内閣・議会の共通認識だ。勝つための金を惜しむようではいかん。必ず、出す」
「ありがとうございます」
人員が一新された軍令部では
「これだけ損害を受けても平気な国というのは、どういう国だ?」
「平気では無いでしょうが、人口が倍、国家予算が四倍、生産力が六倍ですから」
「二年後には戦力で圧倒できるから、今は負けても問題ないと言うことか」
「おそらくは」
「今まで与えた損害がこれだけか」
「そうです。正規空母四隻。ヨークタウン、ホーネット、レキシントン、サラトガです。戦艦が新型のみ五隻、ノースカロライナ、ワシントン、サウスダコタ、インディアナ、マサチューセッツです。
巡洋艦は十二隻、駆逐艦は二十三隻あまりを撃沈しました」
「航空機は」
「撃墜数は総計で一千機以上となりますが、誤認や重複があります。いいことろ五百機から七百機だと推測されます」
「それでも戦争継続か、かなわんな」
「でもいくらアメリカと言っても、この損害を埋めるのは大変でしょう。撃沈した船から人員を救助できたのはインディアナと数隻の巡洋艦・駆逐艦だけです。後は、海の底か我が方の捕虜です。いくら他の船から引っ張ってもこれだけの人的損害です。とくに空母乗組員と艦載機搭乗員の損失が大きいです。恐らくあと半年は作戦行動はとれないものと考えます」
「半年後に増える敵艦の予想は?」
「今回取り逃がした、エセックス級空母が一隻。商船構造の軽空母が三隻。軽巡洋艦がクリーブランド級二隻。アトランタ級二隻。駆逐艦はフレッチャー級が二十隻。これは開戦前の予算計上からのもので前倒しはあると思いますが、大きくずれていないと思われます」
「それでは空母機動部隊として作戦行動はとれないな」
「今年中は無理かと」
「早くても来年春以降か。そのあたりで焦って作戦行動を起こしてくれるとありがたいな」
「そうですね。戦力の逐次投入で各個撃破されるという、我が方には願ったりなのですが」
「そこまで馬鹿では無いだろう。最低でもエセックス級を五隻か六隻そろえてくるはずだ。」
「そうなると、完熟期間を含めて来年冬以降ですね。敵の攻勢は」
「まさしく二年後だな」
「そうするとか勝ち目がかなり薄くなります。その前に敵をなんとしても引っ張り出して消耗してもらわないと」
「手立ては考えよう、軍令部の仕事だ。我が方の戦力はどのくらい増える?」
「来年秋以降としてでよろしければ」
「それで良い」
「では、戦艦が甲斐。空母が翔鶴級黒鶴。瑞鳳級仙鳳。海龍級海流。雲龍級雲龍・飛龍、前倒しがあれば蒼龍・天龍も。鷹級空母は雲鷹・冲鷹・大鷹・神鷹・白鷹・黒鷹・天鷹・海鷹の八隻。前倒しがあれば山鷹・翔鷹も」
「待て、意外に多いな。空母ばかりか」
「空母が重点建造艦ですから」
「鷹級は前線に出しても大丈夫なのか」
「後方で活動する補助空母という位置づけですので、最前線はつらいと思われます」
「そうか、でも戦訓として飛行甲板は多い方が良いという結論だったな」
「はい、母艦が着艦不能になっても帰還機が困りませんから」
「それは大事だな」
「では次に巡洋艦です。これは足りないです。5500トン級が航空戦では全く役に立たないことが判明しました。急ぎ整備しないといけませんが、阿賀野級酒匂・夕張・石狩、前倒しで大淀・仁淀。改最上級伊吹・生駒。越百級越百・八海。巡洋艦はこれだけです」
「足りんな。艦政本部はなんと」
「無理の一言です。開戦後に緊急起工しましたが、造船所の関係で今現在の計画以上には建造困難だそうです。他の艦はいずれも19年春以降の進水です」
「駆逐艦は」
「夕雲級が残り全艦。秋月級直衛艦も残り全艦。戦時急造の一千五百トン級が十五隻から二十隻程度と言っていました」
「では・・・・・・
世界では
ソビエトとフィンランドの冬戦争(あの地域の冬に始めるという非常識さから冬戦争)は、フィンランドが攻め込まれたもののソ連を押し返し国境線まで押し返したところでソビエトが停戦を呼びかけた。
フィンランドは勝手に戦争を起こして勝手に止めるソビエトに怒り心頭であったが、ソビエトからかなりの譲歩を引き出すことに成功。停戦を受諾した。わずか四ヶ月の戦争だった。白い悪魔は実在したようだ。
冬戦争停戦後、ソビエトは併合したバルト三国と中部国境地帯からポーランドに侵攻。ベラルーシは西側どころか全体を取り込んでしまった。冬戦争の停戦は、この戦力を絞り出すためだった模様。
ポーランドも抵抗したものの、東プロイセン奪還を名目にドイツが侵攻してきたため少ない戦力を二分され、わずか一ヶ月でソビエトとドイツに占領・分割されてしまった。
ソビエトとドイツに密約があったのは明白だった。
このときドイツが繰り出した一号戦車、二号戦車がポーランドの騎兵隊によって多数撃破され、馬に負ける戦車として記憶に残った。
ポーランドへの侵攻を受け、ポーランドと協定を結んでいたイギリス、フランスがドイツに宣戦布告。
ヨーロッパは戦争へと転がっていった。
大陸では、中華民国と共産中国の内戦が激化しており、武器輸出による利益を上げるべく各国が入り乱れていた。一番有利なのはロシアで次が日本だった。軍閥によって好みや利益誘導があるため、武装の統一はされていない。
奥地から出撃してきた共産中国が目指しているのは北京であり、他の重要都市を無視しているのは不思議だった。
世界を戦争の影が覆い尽くす日が来るのだろうか。日本の運命は?
本編はこれにて終了。
8月中に終わりました。
お付き合いして頂き、感謝します。ありがとうございました。
一旦完結します。
これ以降は、双龍の世界をボチボチと上げていけたらいいなと思います。




