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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
24/62

マーシャル戦訓分析・水上編

水上戦闘の総括的なアレ?

 マーシャル海戦では、敵艦多数を撃沈破したものの、こちらも甚大な被害を被った。


 空母の損害は全て航空戦で発生したもので、今回は後回しとした。


 早潮・東雲・初雪も航空戦での損害であり、空母と同じ扱いとした。


 直衛艦も航空戦のみ参加であり、空母と同じ扱いとした。


 金剛・那智も航空戦での損害であり、空母と同じ扱いとした。


 航空戦の戦訓分析は他の会議室でやっているらしい。


 ここは水上戦闘での戦訓分析をするため、海戦参加の指揮官・参謀・艦長クラスを集めての会議だ。

 参加者は軍令部総長が出席していることに驚いた。中佐・大佐クラスでも雲の上の人だ。

 それだけ重大事と言うことなのだろう。


「巡洋艦以上で沈没は鳥海のみでした。駆逐艦が思った以上にやられました。倍の数で挑んだはずですが、なぜなのか。その辺を追求したいと思います」


「七戦隊司令部と艦長以下は艦と運命を共にしましたので、高雄艦長からどういう経緯でこの損害を受けたのか説明されたい」


「高雄艦長です。今回はこのようなふがいない結果になり申し開きも出来ません。ただ油断があったのは事実です。敵に倍する巡洋艦と駆逐艦の数で押し切ろうとしました。そして、敵巡洋艦の火力に負けました」


「敵巡洋艦は軽巡でしょう。15.2センチ砲じゃ無いですか。二十センチ砲重巡がなぜ負けるのか」


「単純に弾量です。こちらは毎分三発向こうは八発。10門×3で毎分三十発です。向こうは15門×8で毎分百二十発です。単純に打ち負けました」


「しかしこちらは二十センチ砲ですぞ。簡単に打ち負けるはずが無い」


「机上演習では負けませんけどね」


「貴様、馬鹿にするのか」


「判りますか。戦訓分析の場で、なぜ勝てなかったとか、主砲が強力だから打ち負けるはずが無いなどとか、無意味な言葉の羅列をするだけの人にはこれで十分でしょう」


「貴様、本官を愚弄するか」


「今は戦訓分析の場です。暇人は消えてください」


「貴様、貴様、貴様」


「待て、そこまでだ」

 

「総長」


「は、失礼しました」


「うん、高雄艦長には正直な所を話してもらい誠にありがたい」


「総長」


「君はこの場にいなくても良い。通常業務に戻りなさい」


「なぜ、本官がこの場を去らねばならないのですか。本官は高雄艦長に愚弄されたのですぞ」


「君はこの場が何か判っていないな。早く出て行きなさい」


「しかし」


「これ以上は抗命したと見なす。早く出て行くように」


 総長の本気を見た。皆身が引き締まる思いであろう。


「単純に打ち負けたと言っているがその中身を知りたい」


「は、では説明します。始め一万五千で同航戦に入りました。しかし、水雷戦隊の突入を助けるため早急に決着を付ける必要があり、距離を詰めました。一万二千を切った所からです。それまではお互い修正射の繰り返しだったものが、突然急斉射に変わり、鳥海には数分間で数十発の命中弾があったものと思われます。本艦高雄も敵二番艦に十数発の命中弾を浴びました。摩耶はもっとひどいですね。敵三番艦はどうも高角砲だけを積んだ巡洋艦だったようで、おそらく毎分十二発程度の連装砲塔七基から射弾を浴びました。12×7×2です。毎分百六十発以上です。いくら高角砲とはいえその弾量を浴びました。主防御区画は無事でしたが、上部構造物はめちゃくちゃですぐに戦闘不能になりました。良く魚雷が誘爆しなかったと思います。愛宕は修正射がうまくいかなかったようでなかなか命中弾が出ませんでした。鳥海が航行不能になり隊列が乱れた後は乱戦でした。本艦と愛宕は敵一番艦、二番艦との戦闘で手一杯で三番艦には逃げられました。その後は水雷戦隊の方が詳しいと思います」


「そんなに敵軽巡洋艦は強力だったか」


「はい、一万五千程度の距離であれば、高角砲を積んだクラスは相手にならないでしょうが、ブルックリン級の方は侮れないです。こちらは防御区画は無事でもそれ以外の場所は損害が出ます。砲塔もやられます」


「そうか、ありがとう。次は五戦隊だな」


「七戦隊の苦闘を思うとお恥ずかしいのですが、同級の重巡と互角に撃ち合っていた。ただ、それだけです。ご存じのように那智が航空戦で損傷後退しましたので、三隻と三隻五分に撃ち合っていました。その後四水戦と共に突撃してきた九戦隊の助けを借りて勝利しただけです。九戦隊がいなかったら、どうなっていたかは判りません」


「正直な所を話してくれたな。礼を言う。戦闘詳報でもそのような展開だったらしいな。まずは良くやってくれた」


「ありがとうございます」


「四水戦はどうだったかな」


「四水戦は、敵戦艦雷撃の命を受け突撃していっただけですな。敵駆逐艦との交戦で、子日と白露を失い夕立大破、五月雨中破、有明小破の損害を受けました。その後戦艦一隻を雷撃で撃沈しております」


「ありがとう。まさしくその通りの展開だったようだ」


「では一水戦」


「四水戦と同じく敵戦艦雷撃の命を受け突撃しました。そのとき七戦隊が抜かれた敵巡洋艦との交戦になり、阿賀野一艦で相手取ろうとしましたが敵に無視されました。追撃しましたが、速度差がわずかで追いつけず砲撃を続け牽制はしました。それが限界でした。その後機関に損傷を負ったらしい敵巡洋艦は駆逐隊に追いつけず阿賀野を目標に変えました。その後撃ち合いになり撃沈に至りました。ただ敵艦が機関損傷の他、砲塔四基が使えないようでした。全ての砲塔が使えたらどうなっていたかは判りません。一騎打ちに持ちこもうとしたのは明らかな失策でした」


「正直にありがとう。では雷撃指揮を執ったのは七駆司令か」


「七駆司令です。まさか阿賀野が無視されるとは思いませんでしたが、戦艦への雷撃阻止なら正しい判断でした。相手の意思を見破ることが出来なかっただけです。あの高角砲だけを積んだ軽巡洋艦は近距離では脅威です。朝雲、山雲があっという間にやられました。九駆と十駆で敵巡洋艦に集中させ七駆と八駆は敵駆逐艦との戦闘に入りました。九駆と十駆で敵巡洋艦にある程度の損傷を与え落後させました。九駆と十駆が戻ってきて大潮は大破しましたが敵駆逐艦を圧倒し、最後に敵戦艦を雷撃にて沈めています」


「ありがとう。敵の意思が見えたらそんなに楽なことは無い。自分が打ちまくられながら別の目標を攻撃するなど並みの精神では出来ん。敵巡洋艦があっぱれだったな」


「ありがとうございます」


「九戦隊、いこうか」


「九戦隊司令です。一水戦と四水戦の援護を命じられました。一水戦が最新鋭の艦で固められているのを見て、四水戦にこう言うと悪いですが、古い船ばかりです。四水戦の方が戦力的に劣ると考え四水戦を支援しました。まさかあちらの巡洋艦部隊がそれほど強力とは思いませんでした。今から思えば戦隊を二つに分ければ良かったと愚考する次第であります」


「そうだな、確かに最初に一水戦と四水戦に二隻ずつ付くべきだった。だがこれは後知恵だ。戦場で正常な思考の出来る者がどれだけ居るだろう」


「ありがとうございます」


「一戦隊はどうだった」


「一戦隊は、大和だけがまともに敵戦艦と打ち合えました。大和で二隻を受け持ち三隻目を集中射でかたを付けようとしたのですが、日向がいきなり戦線離脱してしまい伊勢もその後戦線離脱しました。その間に三隻目を戦闘不能にして目的は果たせました。目論み通りには行きました。伊勢と日向の損傷は痛いですが」


「まあそうだな。では我が海軍に敵新型戦艦と撃ち合えるのは大和と長門・陸奥だけか」


「そうなります。武蔵が春、甲斐が秋ですか。信濃はどうなるか判らないと」


「今回の結果を受けて信濃は起工されそうだ」


「今回は忙しい所ご苦労だった。これからも精進してもらいたい」


「ハッ、一層努力します」



軍令部にも精神論的艦隊派が居たようです。勢力は弱くなったとは言え、まだまだ存在しています。

次は艦政本部です。

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