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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
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マーシャル戦訓分析

偉そうなサブタイトルですが、グダグダするだけです

 マーシャル海戦では、大戦果を上げた日本海軍であるが、同時に損害も馬鹿に出来なかった。

 軍令部では、大会議室に関係者を集め戦訓の分析を始めていた。

 航空戦であるが、出撃機数の三割が未帰還であり、特に艦攻、艦爆、水偵の被害が大きいのに注目が集まった。

 また、二回の出撃で、使用不能も合わせれば出撃可能機数が半分以下になってしまった事も注目された。


「かなり未帰還が多かったが、原因を探らねば次回も同じ事になる。そんな事になれば、搭乗員があっという間にいなくなってしまう」


「戦闘機は、性能でも搭乗員の腕前でも敵より優位にありました。ただ、電探誘導にまだ慣れていず、違う方向に向かったり、高度を間違えて待機したりしました。これは搭乗員の問題ばかりでは無く、誘導員の能力や電探の性能にも問題があったと考えます」


「水偵は、損害が多かったのは全部ですが、その中でも特に九十五式水上偵察機の被害が大きく敵戦闘機と遭遇すれば逃げ切れませんでした。多くがヒ連送の後消息を絶っていますので、間違いないかと。零式三座水上偵察機は戦闘機と遭遇しても帰ってきた機体もあります」


「艦攻は、魚雷を抱いていれば動けませんのでいい的です。特に電探を使った遠距離阻止で被害を受けました」


「艦爆も、爆弾を抱いていると自由に動けませんのでいい的でした」


「水偵が深刻なのだが、原因と対策を考えよう」


「まず、速度と防弾です。この二点に尽きます」


「九十五式水上偵察機は速度が戦闘機と百ノット以上違いますので、狙われたら逃げ切れません」


「九十五式はかなり運動性がよいと聞きましたが」


「戦闘機ではありません。水偵としては運動性がよいと言うだけです。あの速度差の前には、多少の運動性など気休めにもなりません」


「あの水偵は所謂九十七式以前なので、防弾装備がありません。一連射喰らえばおしまいです」


「零式三座水上偵察は防弾装備がありますし、速度も多少は出ます。運動性は九十五より悪いですが、防弾と速度が帰還できた大きな要因だと考えます」


「では今後水偵の運用はどうすべきかと」


「出来れば確実に敵が居ると判っている場合は、敵の居る方向には索敵に出さない。索敵は高速の艦攻に任せる。等です」


「艦攻を索敵に使えば攻撃力が落ちる」


「しかし、マーシャルでは十三試艦攻を始め艦攻を索敵に出し帰還率も高かったと聞きます」


「水偵は敵が居る場合には索敵に使えないと?」


「電探を使った遠距離阻止迎撃で確実に落とされます。落とされに行けとおっしゃる?」


「いや、そう言う訳ではない。失礼した」


「ともかく、現状では敵方向への索敵や偵察に使えば、高確率で損失するとお考えですか」


「そんな回りくどい言い方をしなくても、確実に撃墜されると言うことです」


「水偵の運用ですが、通常の哨戒飛行と連絡用意外にに使うのは危険としてもいいのではないでしょうか」


「そうなりますか」


「貴重な搭乗員の損失を減らすためには、運用の基準を変えなければいけないと言うことです」


「艦攻に索敵を任せるにしても現状では空母の数が足りません。そこの所はどうお考えですか」


「戦時急造空母である鷹級空母の増産を指示しましょう」


「アレは速力が二十五ノットです。機動部隊について行ける速力ではありません」


「では、鳳級空母を作れとおっしゃいますか。あの空母は平時の贅沢設計で戦時急造には向いていないので鷹級が設計されたのでしょう」


「鷹級の機関を強化して三十ノット出させるというのはどうでしょう」


「少しお待ちください。話がそれてしまいました。水偵の運用に話を戻しましょう」


「そうですな。今話しても仕方無いことでした」


「先程言われましたように、通常の哨戒飛行と連絡用意外にに使うのは危険という判断で宜しいでしょうか」


「賛成です」


「遺憾ながら、認めざるを得ないでしょう」


「賛成」


「では新たな運用基準を作成し全軍に通達と言うことで、水偵の問題は終わりとします」


「艦攻ですが魚雷を抱いた艦攻はほぼ動けません。戦闘機に襲われればまず落とされます。この状態は戦闘機の護衛が無いと攻撃地点にたどり着けないと言うことです」


「艦爆も同じですね。マーシャルの時、敵の電探を使った巧みな迎撃戦術に戦闘機隊は翻弄されていました。艦攻も艦爆も裸になることが多々ありました。そのときに多くを撃墜されました」


「では戦闘機の護衛が付いていれば、射点に着けると言うことですか」


「大まかに言えばですが」


「戦闘機隊はどう考えますか」


「戦闘機隊としては、機数不足です。母艦直援に攻撃隊の護衛となれば、現状の機数では如何ともしがたいものがあります」


「空母に乗せる戦闘機の機数割合を増やせば、攻撃力が足りなくなるではないか。ただでさえ、艦攻を索敵に使おうというのだ。これ以上攻撃力を減らしてどうする」


「戦闘機の護衛が無ければ、目標にたどり着くことも難しいのですよ。攻撃力が減る程度たいした問題では無いです」


「敢闘精神がたらんのだ」


「精神力で勝てるような甘い戦いではありません」


「貴様!言わせておけば先程から攻撃精神が不足したことばかりほざきおって。海軍精神のなんたるかを教えてくれるわ!」


「其処までにしておけ」


「航空本部長」


「この場は戦訓を分析する場だ。敢闘精神だの海軍精神だのは関係ない。そのようなことを言って建設的な発言をしない、いや出来ない人間にはこの場に居る資格は無い。すぐに出て行き給え」


「いくら航空本部長と言っても越権ですぞ、軍令部から抗議させてもらう」


「かまわんよ。どうでもいいからさっさと出て行かないか」


 くそ!と言って、乱暴にドアを開け閉めして出て行った。アレ軍令部作戦課の人間だよな。アレでまともな作戦など立てられるのか?

 航空本部長は、生の声が聞きたいと言って出席されていたんだよね。それなら、あの手の発言は気にいらないはずだ。


「アレではまともな作戦など立てられまいに。抗議か来たらいい機会だ。あの手の人間を減らさせよう」


 俺と同じ事考えているよ。航空本部長は。航空本部からは三人来ているのだが、今までは静かだったな。


「いいのですか、航空本部長。軍令部から睨まれるのでは」


「かまわん。それよりも、まだあの手の人間が軍令部作戦課に居た事に驚きだ」


「それでは、話題を戻します。艦攻と艦爆を減らしてでも、戦闘機を増やすと言うことでしょうか」


「そうしてもらえれば、攻撃地点に着けると思います」


「艦爆としてもありがたいです」


「では、戦闘機の割合を増やすと言うことで宜しいか」


「賛成」


「異議無し」


「割合は艦隊の方に任せてよいのかどうか」


「艦隊の方で考えます」


「ではそう言うことで」


「艦攻の被害を減らす算段だが、一つは護衛を増やすと言うことになった。まだないか」


「艦攻ですが、突入高度を下げることで対空砲火をある程度回避できました」


「現行の突入高度はいくらでしたっけ」


「五十です」


「それをどこまで下げましたか」


「二十です」


「二十!それでは少しでも間違うと海面に突っ込むんでは」


「事実、下げすぎた機体もありました」


「そこまで下げないと対空砲火にやられるのですか」


「いえ、もう少し五まで下げたいです」


「五!正気ですか」


「五まで下げると多くの弾が機体の上を通り過ぎるのです。ただそこまで下げることの出来る搭乗員が少ないのです」


「厳しい戦いですね」


「厳しいですが、やらないと生き残れません。敢闘精神とか言って遊んでいる場合ではないのです」


「遊びですか」


「遊びですね。戦場に出せばそんなこと言わなくなるでしょう」


「出すんですか」


「出すんです。そんな甘っちょろい事言っているような奴は」


 さっきの奴遊びとか甘っちょろいとか言われたよ。すごい低評価だな。


「航空本部からですが、十三試艦攻の実用化にめどが付きました。おそらく五月から順次配備可能と思われます」


「十三試艦攻ですか。マーシャルでも二号艦攻に比べてかなり優速でした。配備されるのはありがたいです」


「そう言っていただけると嬉しいのですが、重量がありまして着艦制動装置が翔鶴級しか対応していないのです。艦政本部にはできるだけ早く他の空母も着艦制動装置の大容量化をお願いしている所です」


「早急にお願いします」


「艦攻は、低空侵入と搭乗員の訓練で対応と言うことで宜しいか」


「結構です」


「では艦爆です」


「艦爆も護衛ですね。とにかく突入地点までたどり着けないと意味がありませんから」


「護衛ですね」


「はい、護衛です。突入してしまえば後は投弾するだけです」


「それで投弾前に撃墜された機体も多かったと聞きます」


「アレは対空砲火がすごかったとしか」


「我が海軍も同程度です。あ、失礼しました。空母雷龍砲術長です。今日は無理を言って参加させてもらいました」


「どうされましたか」


「いえ、艦爆隊の攻撃動作について気になりましたので」


「気になったとは?」


「はい、艦爆隊の皆さんは通常長機を先頭に一本棒で突入ですよね」


「はい、そうすることで命中率を上げています」


「実を言わせてもらうと、迎撃側からは一本棒は迎撃しやすいのです」


「げ・い・げ・き・し・や・す・い?」


「はい、そうです。長機に狙いを定めれば後は勝手に突っ込んできてくれます。いちいち狙いを変える必要もありません」


「そ、そんな」


「事実マーシャルの時、アメリカ軍の急降下爆撃機は三機単位くらいで突入してきました。先頭に照準すれば後続機には微修正で済みました」


「では損害を抑えるにはどうすれば良いと思われますか」


「多方位同時侵入です」


「多方位同時とは」


「艦攻と艦爆で最低でも四カ所、同時が無理ならできる限り時間差を少なくして突入してください。駆逐艦クラスなら砲側では対応しきれません。巡洋艦以上になれば個別目標に対応可能ですが、一機あたり対応する砲や機銃が減ります。出来れば片舷に対してです。両舷からだと対空砲火を散らすと言う目的には足りません」


「下手をすれば空中衝突とか着弾の爆発に巻き込まれます」


「戦争です。訓練ではありません。無理をしないといけないと思います」


「有効なのでしょうか」


「砲術から見れば有効ですね」


「それで損害が減るのであれば、訓練で鍛えるしか有りません」


「航空隊には厳しい訓練が必要と言うことで宜しいですか」


「生き残るためです。皆励むでしょう」


「では、良い時間になりました。本日はご多忙の折、ご足労いただきまして、ありがとうございました」


 解散になった。皆考え込んでいる顔だ。俺も考えよう。




ほとんど会話で終了。いいのかこれで。

次回は水上艦艇のお話。会話主体かな。

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