表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
18/62

開戦はしたけれど 

いいのか

いいんだ



 日本がアメリカに宣戦布告を通牒したのが、日本時間正和16年12月1日。

 だってアメリカのやろう、時差で日本が日付が変わる少し前に手渡しやがった。日本が文面を整えて宣戦布告文書を突き返した時には日付が変わっていた。


 何か意図がありそうだったが、誰も考えつかなかった。いくら何でも自国の艦船を雷撃するとは。

 一応海軍からは、そういう事態もありうるとの警告を受けていた。米西戦争の時、アメリカは自国艦船を爆破した。今回もやらないとは限らない。と。

 

 日本時間正和16年12月1日に付けが変わる少し前の時間、ハワイの東五〇海里地点をハワイに向け航行中だったアメリカ船籍の貨物船オーシャン・トレーダーが雷撃を受けた。


 二本の魚雷攻撃を受け一本が命中。哀れ貨物船は短時間の内に沈没。生存者の話によると同船はハワイを出航してフィリピンに向かっていたが開戦の報を受け帰還命令が会社から出ていたという。


 日が昇っていて明るくなっていた時間なので雷跡はよく見えたという。


 この事件の数時間後、アメリカ政府は、

「日本は自国が宣戦布告をしていないにもかかわらず、我が国の貨物船を攻撃した。我が国が宣戦布告をしたとは言え、日本はまだ宣戦布告をしていない。だが、日本は宣戦布告前に我が国の貨物船を攻撃した。これは許さざる事であり、非常に卑怯なことである。我が国はこのような卑怯な振る舞いはしない。我が国は正義を持って戦い、正々堂々と日本に勝つだろう」

と言う声明を発表した。


 賛同を示したのは、ソビエト・共産中国と他中南米のアメリカの影響の強い国々だった。


 他の国々は、我関せずと、またやりやがった。の二つの見方をしていた。



「参ったね。帰投命令が間に合わなかったのかな」


「いえ、全艦帰投命令を受令しています。帰投命令発信後全ての艦から受領信号が発信されました。先走った者はいないと確信しております」


「潜水艦乗りの皆には迷惑な命令だが、万が一に備えなければいけないのだ。我慢して欲しい」


「いえ、皆承知です。浮上して国旗と海軍旗を掲げての全速航行など的になれというものですが、我が国が不名誉を被るよりは良いと」


「ウェーク島とサイパンには、各国記者と武官を招待してあるね?」


「手はずは整っています」


「アメリカの記者と武官もか」


「そうです」


「横須賀・呉・佐世保・舞鶴・大湊・高雄にも?」


「はい、我が海軍の潜水艦基地にご招待申し上げております。各国の武官や記者達は見ることが出来ない場所なので、喜んで招待に応じてくれました」


「酸素魚雷を見せても良かったのか。アレは極秘冲の極秘だろう」


「我が国の名誉が大切です。でなければ潜水艦基地の公開などしません」


「そうか、済まない」


「国あっての軍です。軍だけの世界を築いてはいけませんから」



 イ一三二潜は現在ハワイ東南東二百五十海里の位置で国旗と海軍機を掲げてウェーク島基地に向かって全速航行していた。全速と入っても潜水艦の全速だ。ちょっと早い商船と変わりない、一八ノット。


 狭い艦橋には艦長と見張り2名の他、交代で艦内から太陽を浴びに出てきていた。


 イ一三二潜は僚艦3隻と共にハワイ周辺の偵察任務を行っていた。

 数日前に一〇〇海里以内に近づくなと言う命令を受け、三日前には一五〇海里に変更され、昨日はついに帰還命令が出た。

 

「艦長、本気なんでしょうか。海軍省の命令は。これでは的になれという物です。アメリカが我が国に宣戦布告をしたからなのでしょうが、なぜ?」


「航海、米西戦争のきっかけを知っているか?でっち上げだ」


「はい、それは勉強しました。まさか、今回もでっち上げがあると」


「国はそう判断したんだろう」


「それで潜水艦全艦緊急帰投命令ですか。たまったものではありませんね」


「確かにな。おかげで全速航行の水しぶきがたまらん」


「船乗りらしくて良いと思いますが」


「そう言えばそうだが、海中の静かさもいいぞ」


「艦長、急に積乱雲が発達しています」


「む、これは降るかな」


「降ると思います」


「こちら艦長、全艦に通達。デカい入道雲が出てきた。スコールの可能性が有る。総員入浴の準備をなせ」


艦内からは、石鹸だ石鹸、手ぬぐいはどこだ、褌洗えるかな、等様々な声が行き交っていた。


 イ一三二潜がウェーク島基地に僚艦と共に帰投するとに基地司令や見慣れぬ各国の武官や記者の訪問を受けた。12月29日から今までの航海記録を見せて欲しいというものだった。


 海軍省の正式な命令書である。従うしか無かった。

 

 ウェーク島・サイパン島所属潜水艦は、米国船籍商船オーシャン・トレーダーが雷撃された地点にいるのは、時間的に無理であるとの証明がなされた。


 また、発射管と予備魚雷の魚雷本数も減っておらず、日本海軍の潜水艦が雷撃した物では無いと各国の武官や記者が証明してくれた。


 数日後には、全ての日本海軍所属潜水艦の無実が証明された。


 時間的証明と魚雷本数の証明が出来たので、海軍は我が国の魚雷は気泡がほとんど見えません。と言う事実を発表せずに済んだ。


 日本はこの事実を大々的に発表するが、アメリカ始めソビエト・共産中国は無反応だった。


 中南米諸国は中立を表明した。


 アメリカとソビエト・共産中国の孤立が始まった。


 更にロイズがきつい一発をお見舞いした。


 アメリカ合衆国船籍オーシャン・トレーダーは、船歴が古くアメリカ西海岸沿岸航行しか認められていなかった。

 ロイズが当該船舶と結んだ保険契約は、アメリカ西海岸沿岸航行のみ限定の保険である。

 ロイズはアメリカ合衆国船籍オーシャン・トレーダーに関する全ての請求および払い戻しには応じない。


 世界の海運業界宛てに発信した。


 これは、イギリスはアメリカの味方をしないという意思表明と世界各国は受け取った。

 


 アメリカと日本の戦争勃発後、世界の動きは速く、複雑になっていった。


 ソビエトと共産中国がモンゴルに進駐、占領した。


 共産中国がウイグル国を武力制圧、属国化。油田開発を始める。


 ソビエトがフィンランドにカレリア地峡割譲を求め、冬戦争に突入。


 アメリカがソビエトと相互貿易協定を締結。貿易品目はほぼ全ての物資であった。当然軍需物資や兵器も含まれた。その中には船団護衛も含まれていた。事実上の軍事同盟だった。


 ソビエト、ロシア境界線での紛争増加(両国ともお互いの国としての存在を認めていなかったため)


 ソビエト、バルト3国を併合。


 ソビエト、ベラルーシ西側を返還するようポーランドに要請。 


 アメリカ、メキシコとの相互不可侵条約締結。


 日本、イギリスとの相互貿易協定締結。


 ドイツ、ポーランドに東プロイセンの割譲を求める。


 中華民国、共産中国との内戦激化。


 世界が破壊と死を求めているかのように。



正和17年1月松の内が開けた頃


「サモアだと?」


「サモアです」


「あそこは小さい哨戒基地程度しか無かったはずだが、まさかハワイの影響か」

 

「そうです。真珠湾貸与以前は、ホノルル港やその他の小さい港湾での中継でしたので、たいした物量は動かせませんでした。真珠湾が使えるようになったら、大量の物資が動かせるようになりました。我々監視陣は、真珠湾の軍港化と周辺の飛行場や基地の建設物資だと思っていました」


「その物資の内いくらかはサモアの強化に使われたと言うことか」

 

「そうです。ハワイばかり注目していました。面目次第もありません」


「どのくらいの脅威度なんだ」


「大です」


「そんなにか」


「先日、潜水艦搭載の偵察機が撮影してきた物です」


「なんだこれは、完全に軍港では無いか。空母がいるぞ。他にも多数か」


「空母2隻・戦艦3隻・重巡または大型軽巡6隻、駆逐艦20隻程度。輸送船多数です」


「ソロモンやオーストラリアは無いな」


「マーシャル諸島と言う予想を立てています。ソロモンやオーストラリアは無いと思います。イギリスとはそこまで関係が悪くないですから」


「判った。首相官邸に行ってくる」



「マーシャルか。我が国への影響はどの程度だろう」


「はい、オーストラリアとの貿易が阻害されます。他にも本土周辺まで潜水艦の作戦海域に含まれるでしょう」


「それはかなり重大なことだな」


「国内で使われる毛皮や革製品のかなりの量が豪州産です」


「他に鉄鉱石と石炭、ボーキサイトは最大の輸入先です」


「ボーキサイトって?」


「アルミの主原料です」


「つまり?」


「航空機が作れなくなります」


「大変じゃ無いか。これからは航空戦だとか言ってなかったっけ」


「そうです。至急アメリカの意思をくじく必要があります」


 そうは言ってもサモアに一番近い要衝でもサイパンであった。


 海軍は、ドック入りし点検工事に入ってしまった赤城・加賀を除く、火龍・雷龍・翔鶴・瑞鶴・瑞鳳・龍鳳の6隻で機動部隊を結成し、サモアのアメリカ軍部隊を攻撃することになった。

 翔鳳も使おうという意見もあったが、竣工後2ヶ月では練度不足という意見が多く見送られた。


第一機動艦隊 旗艦 翔鶴

       

 第五航空戦隊 

  翔鶴・瑞鶴

     直衛艦 秋月・夏月

     第六駆逐隊 吹雪・白雪・初雪・夕霧


 第二航空戦隊

  火龍・雷龍

     直衛艦 三日月・凉月

     第一二駆逐隊 叢雲・東雲・薄雲・白雲


 第六航空戦隊

  瑞鳳・龍鳳

     直衛艦 影月・冬月

     第一四駆逐隊 黒潮・親潮・早潮・夏潮



 第一戦隊(第一分隊)

  大和

  第三航空戦隊(水上機)

   千歳・千代田

     第三駆逐隊 初霜・有明・夕暮


 第二戦隊

  伊勢・日向


 第三戦隊

  金剛・霧島


 第五戦隊

  妙高・那智・羽黒・足柄


 第七戦隊

  鳥海・摩耶・高雄・愛宕


 第九戦隊

  最上・三隈・鈴谷・熊野


 第一水雷戦隊 旗艦 阿賀野

  阿賀野

   第七駆逐隊・第八駆逐隊・第九駆逐隊・第一〇駆逐隊


 第四水雷戦隊 旗艦 五十鈴

  五十鈴

   第二駆逐隊・第四駆逐隊・第五駆逐隊


 艦隊油槽船3隻 護衛駆逐隊一

 艦隊補給船4隻 護衛駆逐隊一

 病院船1隻 


作戦目標は、マーシャルを狙うアメリカ輸送船団。

第一目標 輸送船団

第二目標 空母

第三目標 その他艦艇

第四目標 サモア軍港


 目標は優先順位であった。第四目標は出来れば程度で必須では無かった。


 至急電が入った。アメリカ軍マーシャルを目指す



いきなりきつい一発。

日本海軍は、戦力の七割でもって、迎撃。

長門と陸奥は本土防衛です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ