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嵐のあとに凪が来る  作者: 花染
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 魔法というのは、とても不思議でとても不可解だ。人の指先しか発動出来ないし、場合によっては、触らないと条件が満たさない場合もある。そして、指によっては、発動出来ない魔法もあるし、10本の指がそれぞれ違う魔法が使える人もいる。そして、似たような魔法は、あるけれど同じ魔法を使える人は、千人に一人にいるかどうか。


 光、闇、無の魔法を使える人は、さほどいない。


「アミー」


 私は、先生の合図に反応して、魔法を解除した。すると、先生は、猛スピードで走りエリーゼ博士の攻撃にも上手く交わ続け、彼女の腕を掴んだ。


「離しな…!」


 突然エリーゼ博士は、目を見開き泣きそうな顔になった。


「どうしてよ!どうして、止めるのよ!兄さん!」


 兄さん?腕を掴んでいるのは、先生だし、彼女周りには、先生以外に誰もいない。それに先生は、彼女の兄であるホープでは無い。エリーゼ博士は、震えながら座り込み誰もいない場所の一点に見つめながら大粒の涙を流した。


「もう、会えないと思ったのよ。私は…私は……っ!」


 そうか、幻。先生の魔法“幻影魔法”だ。そして、幻影魔法と他にもう一つ魔法を発動している事も何となく解る。


「どうして、そんな顔をするのよ……どうして、そんな事を言うのよ…兄さん」


 嬉しそうな笑顔の裏腹に流す涙は、透明な色から赤く濁り始めた。そして、徐々に体もむくみ始めだした。


「私は……私は……私は、こんなに頑張っているのに!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 エリーゼ博士は、叫び自分の顔を引っ掻いた。手の爪は、捥げ指先の皮膚は、ボロボロになっていた。あれでは、魔法は、使えない。魔法が使えないと言うことは、魔力が減らない。その上、昼間で晴天の空。光が溢れる時間だ。例えば、さっきまで魔法を使っていたとしてもこの天気では、関係なしに補給が出来てしまう。


「兄さん!兄さん!!私を一人にしないでよ!私を見捨てないでよ!私は、兄さんが居ないとダメな妹なのよ……苦しい…痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…ーーー」


 徐々に膨らむ皮膚……あれは、普通で無い。魔力の暴走が始まった。


「先生!このままでは、死んでしまいます!」

「解ってる…!でも、俺の問いかけに答えてくれないんだっ!」


 エリーゼ博士の腕をしっかり掴んだ先生の手を見ると、指先から光が見えた。先生の3つ目の魔法“心の魔法”がやっぱり発動している。心の魔法。心の奥に眠る感情や思いを読み取ることが出来る魔法。この魔法は、先生しか使えない珍しい魔法だ。


 でも、この魔法を使うには、心を閉ざした人には、使えない。と言うことは、エリーゼ博士は、心を閉ざしている事になる。


「……」


 彼女は、大切な兄さんの不幸の連鎖と死を悲しみ、世界を憎み、多くの人を恨み復讐をしようとしている。悲しみも苦しみも痛みも誰かのせいにして、そうすれば自分が悪くないだと思い込む事で、自分が楽になろうとしする。でも、それが間違いだと心の底では、解っていても信じたく無い事実だとしても、


 好きになれない自分を大切だと言ってくれた人が、居なくなった事で、世界が絶望となってしまったんだからいっそう壊してから死のう。


「……そうだとすれば、辛いよね……」


 エリーゼ博士の気持ちを考えると、自然と涙がでた。理解をしてくれる人が居ないって、解ってくれる人が居ないって苦しくて悲しくて寂しくて、辛い。


 大切な人が踠いても誰も手を差し伸ばしてくれる人も居なく、支えてあげようにも彼女の支えすら気づいてくれなかった。伸ばすてすらすり抜けてしまい、消えてしまった兄の事を思えば思うほど、痛く重く感じたのだろう。


 私は、エリーゼ博士の近くへ向かい思わず抱きしめた。


「大切だったんですね。守りたかったんですね。救えなかった事が、悲しくて、苦しくて、寂しくて……でも誰も解ってくれないのは、辛いですよね」

「兄さんは……兄さんは、心が弱かったの。触れれば触れるほど、傷ついて、傷を直そうとしても私では、直せなかった。

 私は……私は、兄さんを救いたかった……」


 エリーゼ博士は、掠れた声でそう言った。状況は、違うけれど家族を失った悲しみは、よく知っている。今でも家族で、遊んでいる子供を見るとあの頃を思い出してしまう。


「どんなに恨んでもどんなに憎んでも寂しさに変わるものは、心を満たさないです。憎むのでは無くて恨むのでは無くて、誰かに求めるだけでは無くて…誰かを愛して、誰かに寄り添って自分の幸せを祈る事で、悲しみも後悔もいつか消えていきます。


 私と友達になってくれませんか?年齢は、少し離れていますけれど、今度、駅前の新しく出来た喫茶店で、くだからない話や恋の話、思い出話などを話しながら一緒にパフェを食べませんか?」


 私は、エリーゼ博士の背中を優しくさすった。

 すると、エリーゼ博士は、安心したのかさっきまで、ヒステリックに叫んだり暴れたりしてきたのが嘘みたいに眠ってしまった。


 寝たと言う事は、先生の魔法“心の魔法”が成功したという事だ。人は、寝れば魔力は、下がる。暴走した魔力も落ち着き基準内に数値も下がった事だ。


「アミー。治癒魔法で、エリーゼ博士の怪我を治してあげて」

「はい」


 辺りは、建物が壊れ多くの人が亡くなってた。一件落着したけれど、彼女の罪は、重い。ただ、理解してくれる人がいない。寄り添ってくれる人がいない。と言うのは、これほどまでも人の心は、傷つき苦しいもので弱い物なんだ。私も彼女も同じで、孤独と悲しみで、周りの人を巻き込んで、もがき続けていただけ。でも、多くの人を殺した事は、償ってほしい。償って、前を向いて、歩いてほしい。


「お疲れ様です。先生」

「アミーこそお疲れ」


 そう言って、私の頭を撫でた。

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