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私は、先生にかけられている手錠を眺め何か仕掛けがないかと探した。よく見ると金属製で出来ているように見せかけて、もしかしたらプラッチックで出来ている物の可能性が高い気がする。触った感じ、微量ながら電子系の感覚が感じられる事から、警察が使う手錠を見せて作った物が高い。
「先生、これなら壊せるかもしれません」
「本当?!」
「はい」
にしてもどうしてこんな所に先生だけ居るんだろ?普通は、監視の誰かもいてもおかしくない。それだけ先生や私を甘く見ている事になるだろう。確かに私は、雷の魔法を使うのは、嫌いだ。誰も傷つけたくない。あの手錠を壊すには、先生にゴム手袋をつけて貰わないと危険だけど、今現在この部屋には、どこにも無い。当然ながら私も持っていない。
強化魔法で、ゴリラのように壊すか。肉体強化は、あまりやった事無いけど、出来る。きっと出来る。いや、やってやる。やるしかない。
「隠れて」
小さく先生が呟いた瞬間に扉が開いた。私は、なんとかギリギリに先生の影に隠れてこっそり大人しく話を聞くことにした。現れたのは、先生を攫った女性。
彼女がきっとエリーゼ博士だ。
「気分は、どうかしら?」
「うん。最悪だよ。早く手錠を外してくれないかな?」
「出来ないわよ」
そう言って近くの椅子に座ってパソコンを打ち出した。
「俺を攫って君の目的は、なんだい?」
「……そうねー…ホープって言う人知らないかしら?」
「ホープ?」
先生は、少しだけ考え首を振るとそれを見たエリーゼ博士は、先生を睨みつけた。
「その人は、私たちと同じ優秀な研究者で、優しくてカッコいい人。未来を期待された人。だけど、ある人物のせいで、彼は、奈落の底へと落とされた。絶望して全てを恨んだわ。
でも、そんな彼にも彼女が出来て、結婚をして幸せを掴もうとした。新たな人生へと進もうとしたの。でも、結婚して嫁になった彼女は、浮気をしたの。彼よりも若い男とね」
淡々と話すエリーゼ博士は、立ち上がり涙を流した。
「彼は、恨み辛み、憎しみをこの世の全て込めて、自ら死のうとしたわ。でも死ねなかった。医者は、彼を生かしたの。彼は、生かされたことに絶望した。そして彼は、親に自殺をされないために部屋に閉じ込められた。
何をするんでも監視され、隔離され、「死にたい」って「殺してくれ」って、苦しみ踠いて、どんどん壊れていく彼を見て、私は、彼……兄さんが憎んだ人も兄さんを馬鹿にした人も、兄さんを裏切った人も、全て憎い。だから私は、兄さんを苦しめた人を殺す事にしたのよ」
悲しみが、憎しみに変わり。全てを恨み、苦しみ。そして、兄を思う愛情の裏返しで、彼女は、全てを壊そうと考えたのだろう。彼を苦しめる物を消そうとすることで、幸せにしようと……
でもそれは、間違っている。
憎んだって、悔やんだって、恨んだって、誰も幸せには、なれない。幸運なんて、大小関係なく必ず訪れる。宝くじが当たったとか、くじ引きで一等が当たったとか、双子の卵だったとか、四葉のクローバーを見つけたとか、例えば些細なことでも、大きな事でもそれは、生きている事だけで幸福で、幸せなんだ。
きっと、幸せだと言うことを気付かないだけ。私は、それを小さい時に教えてくれた人が居たから、そう思えるようになれた。
「まだ、思い出せないかしら?なら、これなら分かるでしょ?今、貴方が付けているその手錠を作った人よ」
その言葉を聞いた先生は、ハッとした顔で、彼女を見た。ホープ……そうか……。。。
私は、こう言う機械系とか発明家とかは、疎いから解らないけど、昔テレビで少しだけ有名になった人がいた。その人は、確かホープだったはず。
魔法を使えなくする機械が、発明されたと言うニュースは、世界的に有名で一時期話題の的になっていた。しかしそれは、一瞬で終わってすぐに先生の話題へと切り替えられた事は、私でも知っている。
「貴方も!貴方の弟子も!みんな、そう!兄さんは、どれだけ苦労したか解る?この君にエールを考えて作ったのも!魔法が使えない兄さんが考えたものなの!これも、アレも!それも!!そう!
でも、誰も兄さんを見てくれない。見てくれないどころか、どうでも良い事ばかり!!」
エリーゼ博士は、怒りを抑えるようにうずくまり息も上がっていった。
「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!全て憎い!皆んな死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!
兄さんは、悪くないの!悪いのは、この世界が悪いのよ!!皆んな居なくなれ!!居なくなれ!!!居なくなれ居なくなれ居なくなれ!!」
息を荒げ上げエリーゼ博士そう言った。気分が悪い。こんなの……こんなの……八つ当たりではないか。
「はぁー……はぁ…はぁー……失礼したわ。少々興奮しただけよ。
それでは、実験を始めましょうか」
そう言って、ポケットから注射器を取り出した。




