10
しばらく走行していくとある建物に辿り着いた。研究施設なのだろうか頑丈そうな門と警備員が歩いている。そして、近くに工場らしき物もある。
「アクアルーム……?確か…君にエールを作っている会社だったよね?」
クロトが、言うようにたしかに“アクアルーム”と言う会社は、君にエールを作っている会社だ。今まで、いくつの研究から幾度も新たに発見された細胞を発表して、開発し市場において販売している。人体には、影響がない。と言うのは、本当なのかは、実際のところ本当かどうかは、解らない。
先生がいる場所は、研究施設の三階に糸は、繋がっている。しかしながら辺りには、影も無く侵入経路は、無い。
「見学に来たと言うのは、どうかな?」
「見学ですか?しかし、私は、顔を知られていますから……」
「なら、私は?」
クロトは、近くのコンビニの駐車場に車を止めて、私を見た。
「私なら、簡単に入ることが出来るかも知れない」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。だから、その白衣を貸して」
彼女が行かないと中には、入れない。でも、でも……いや、最悪な事は、考えるな。今、最善な考えは、それしか無い。私たちができる事は、それしか無い。私は、白衣を脱いでクロトに渡した。
「解りました。私は、クロトの影の中に隠れています。もし、危険と感じたら直ぐにでてくるので、安心して下さい」
クロトは、頷いて、白衣を着てから車に降りた。辺りには、誰もいない事を確認してから私は、影に隠れる事にした。
「アミー行くよ」
「はい」
そう言って、歩き始めた。口から心臓が出そうなぐらい緊張している。本来は、クロトがそんな感情なのだろうけど、何があるか解らないと言うのは、これ程まで心臓が鼓動を鳴らしづけるとは、考えた事は、ない。
「あの〜見学したいのですが……」
「ご予約は?」
「やはり予約とか必要ですよね……大企業であるアクアルーム様の研究を同じ研究者として、尊敬しているので、少しでも私の技術において、学びたいと志し飛び出して来た者を突然来られたらそちら側にとって当然に見知らぬ者である私を簡単に通すわけがないですよね……
残念……あと少しで、私の研究が進み……世のため人の為になる者を開発する可能があった高くなると考えた私が甘かったのです。解りました。諦めて、帰ります……」
長々と、堂々と嘘を言うクロトは、迫真の演技をして、警備員を騙した。警備員は、困った顔で、クロトを見て
「わかりました。社長に電話をするので、少々お待ちください」
「はぁ!ありがとうございます!」
そう言って警備員は、電話をし始めた。数分後に警備員は、電話を切って、ニッコリした顔でこう言った。
「OKの事です」
「ああ!何という優しい社長なのでしょう!神さまの様な形なのでしょうね!ありがとうございます」
深々とお辞儀としてクロトは、微笑んだ。その笑顔に心を奪われたのか警備員は、優しい笑顔で、
「いいえ。一様、このネームホルダーを着けて下さい」
そう言って、警備員は、ネームホルダーを渡した。この子は、演技がかなり上手だ。私と友達になりたいと言う言葉は、私を心配したと言う言葉は、もしかすると嘘かも知れない。
いいや。疑っては、ダメだ。こうして、自分の危険を顧みて手伝ってくれている人を疑うのは、よろしくない。
クロトは、あたりを見て、誰もいない事を確認してからトイレへ向かった。
「アミー。出てきても良いよ」
私は、その言葉を聞いて、魔法を解除してた。侵入は、成功したが、見つからずに進むのは、難しい事は、私でも分かる。
「影の魔法って、影と影が重なった場所なら移動ができるよね?」
「はい。しかし、こうした研究施設には、影が重なった場所は、あまり無いので、難しいかと…」
かと言って、このままクロトの影にずっといてもし彼女に何かあっても……
「……私の魔法は、この糸の魔法しか使えないし……」
「…とりあえず、クロトは、見学をしているフリをしていて下さい。
研究などの内容や専門知識が必要な質問などは、“まだ研究段階のため人に話すほどのものではない”とか“まだ未熟者ため解らない事が多い”と言って、受け答えをしないでくださいね」
「うん。解ってるって。アミーは、どうするの?」
「私は、何とかして、先生を探します」
そう言って、親指を立てて微笑んだ。それをまたクロトは、ため息を吐いて、こう言った。
「無理しないでね」
「クロトこそ」
クロトは、微笑んで、出て行った。
さてと、どうしたら三階まで行けるのだろうか、トイレからちょっと顔を出してあたりを見ると、人が居ない。研究施設だと言って、人が居ないのは、以外だ。これなら走って、三階まで階段で行けそうだ。しかし、油断したらダメだ。
「念のため、ブーツと服を強化しとこう」
見た目は、皮と布だけど鉄並の強度なら防御は、完璧だし、相手も油断をする。しかも、これなら負ける気がしない。
「さてと、行きますか」
準備運動をして、私は、走り出した。運動は、苦手ではない。走るのも嫌いではない。しかし、階段は、何処だろうか?
「ーーでさ〜」
「あははは!」
話し声。私は、あたりを見て、近くにあった植木鉢の影に隠れた。曲がり角から現れたのは、男の人が二人組みだ。こっちに来る事を確認して、影が重なった瞬間を見計らって、男の人の影に隠れた。喋らなかったらバレたりしない。が、これもまた口から心臓が出そうなぐらい緊張する。
こんなに何度も緊張したのは、滅多にない。
「エリーゼ博士のお兄さんの奥さんって今朝亡くなった天気予報士だろ?」
「そうそう!俺もニュースを見ていて、ビックリしたよ。でも、あのメリーさんって確かあの俳優と浮気していたらしいぜ」
「まじかよ!」
エリーゼ博士。何処かで聞いた事がある名前だ。多分、先生を攫った人だろうけど、何故、先生が関係しているのか解らない。いや、もしかしたら私に関係しているのかも知れない。
エリーゼ博士のお兄さんと言う人の名前が少し気になるけれど、あまり長居は、出来ないしな。
次、影が重なった瞬間を狙って、進もう。と言うか、さっきの流れが無駄なような気がする。
でも、こうもしないと進めなかったかも知れない。どうやら、エレベーターと非常階段の二箇所しかないようだ。
万が一階段を上っていると見つかっていたかも知れないしエレベーターに乗ってもあっという間にバレてしまう。侵入は、簡単ではない事が良く分かる。
「にしても最近の博士ってそのせいかどうか解らないけど、怖いよな」
「怖い?どの辺が?」
「被虐的と言うか、悲劇のヒロインって感じの顔をしているし、ちょっと聞いただけで、狂ったようにヒステリックになってよく解らないこと言うから痛い」
「あ!それ分かる。レディアント博士の弟子の噂が広まってからだよな」
私の噂。やはり狙いは、私か。私のせいで、先生がピンチになっていると言うことか。彼らは、三階あたりまで、行き角を曲がった。近くにあったまたもや植木鉢の影に重なったので、私は、そっちに移動した。
先生がいる場所は、あの先だ。誰も通らないようだから一気に走って行こう。
私は、魔法を解き走って先生がいる部屋へと走って向かった。ドアを開けあたりを見た。先生は、手錠らしきものをつけてぐったりと座っていた。
「先生!」
「アミー…!どうしてここに?」
「先生を助けに来たんです」
手錠には、鍵がかかっている。金属で出来た手錠を壊す事は、私には、出来ない。あたりを見て、使えそうな道具を見たが何処にもない。
「どうして、魔法で壊さないですか?先生ならこんなの壊せるのに」
「この手錠は、警察が使うやつで魔法を無力化するもので、使えないみたいなんだ……」
先生の魔法は、空間魔法だけではない。それを解っていて、手錠をかけた。魔法を使えなくするためなのだろうか?いや、そもそもこんな事をしてまでも、何故先生を攫ったのだろうか?
「それよりもどうやって……いやどうして此処に来たんだ!?アミー」
「先生が、心配だったからです」
そう言って、私は、先生の近くに座った。少しだけ疲れた顔をしているけれど、怪我は、していない見たい。良かった……
「私は、先生が思っている以上に…私が思っている以上に先生の事がどうやら好きみたいですので……」
その言葉を聞いた先生は、驚いた顔をした後ニッコリ微笑み
「それは、嬉しいよ」
「これでも一様、目一杯の告白なんですけどね。んー……どう言ったから良いのかな?」
「アミー」
その言葉に反応して私は、先生の顔を見ると突然、先生は、優しく唇にキスをした。
「こうすれば良い」
その言葉と行動にしばらく私は、固まり我に帰るまで数秒かかった後に顔が熱くなったのが、良く解る。やっぱりこの人は、抜け目がない。
「ハハ!可愛い。アミー可愛い…!それから、助けに来てくれて、ありがとう」