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神話物語3 青薔薇の悲哀歌(エレジー)  作者: 琴音
プロローグ
1/22

飛べない鳥

 此処はメール・アンテュール海。気が付けばそれは静かにオレンジ色に染まっていくー


「陛下、そろそろ帰りませんと……皆が待っております。」


声を掛けられ、私は我に帰る。


…ヴィオレットの言う通りだ。本当は今日中に帰らなければならない。


(だが、私は………)


「……帰りたく、ない。」


私は我儘を言った。あまり、歳が離れていないヴィオレットだからなのだろうか?


「また、そんなことを言って……。陛下のお気持ちはお察し致します。ですが、妹君がお待ちです。」


いつも、ヴィオレットには苦労を掛けている。それは重々承知しているのだがやはり、帰りたくないと思う。

…民に迷惑を掛けている私が情けなくても。


「あと1日だけ、此処に居させてくれ。」


(フォーリア、最愛の妹。会いたい。だが……)


父との思い出にもう少しだけ、浸っていたかった。此処にいると幼いときに亡くなった父の匂いがしそうで……。


「…本当にあと1日だけですから、ね?」


ヴィオレットは溜め息をつくと苦笑しながらも、承諾してくれた。

……私が衰弱していくことを知っているからだろうか?


(私は……母のように死にたくない。)


そう思う一心で逃げてきた。こうして甲板で思いを巡らせ、方法を探ってはいるのだが……。


私の思いは波にさらわれて、何処か遠くへいってしまう……。


(私には王としての責任は重すぎる。…どうしたら、一族を救えるのだろう?)


しかし、問に答える者はいない。


(……本当に…)


「……王とは空しい者だな、菫姫(ヴィオレット)。」


「陛下………」


そのまま二人は何も言わず、ただ波間を眺めていた。願いが届く日を夢見て。

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