プロローグ
勇者の掲げた聖剣が、魔王へと振り下ろされる。
魔王はそれをふらつきながらも下へ避けると、魔力を右手へと込め、砲撃へと変え、放つ。
勇者はなんなく避け、切りかかろうと魔王へと接近する。
両者、すでに限界に近い。
魔王は魔力の砲弾を次々と勇者へ放つ。
空であることが幸いか、勇者は上下左右、回避範囲が広い。
しかし、なかなか接近できず、埒があかない。
勇者は意を決し、身体強化にほとんどの聖力を注いだ。そして、刺突の構えを取ると、
「魔王!」
これで最後だとばかりに空を駆ける。
魔王も黙っていない。
「くっ、ゆうしゃぁああ!」
残りの魔力を砲弾に変え、乱れ打ちする。
身体強化された勇者の肉体は、ものともせず、真っ直ぐ突き進む。
魔王は魔力砲を放つ。
それが勇者の右肩に当たり、蒸発させるも、すかさず左手に聖剣を持ち替え、突き進む。
そしてその刃は魔王の胸を食い破り、
「落ちろぉおおお!!!」
遥か下の地面へ向けて魔王ごと打ち下ろす。
「ごぷっ、まだ……まだ終わらんぞぉおお!」
魔王は血反吐と共にそう叫ぶと近づきつつある地面へ眼を向け、目標物を探す。
「ふふ、見つけたぞ! 我が器!」
果たしてそれは、道を歩く少年であった。
乗り移る気だと直感した勇者は、
「ふんっ」
拙くも、頭突きをした。
もはやこれほどにしかチカラがないと歯噛みする。
「私は……私はまだ死なん! 滅びぬぞぉおお!」
そして魔王は地面に叩きつけられた。肺が衝撃で破裂する。
「かっはぁ……ヒュー、ヒュー」
魔王はそれでも眼を見開き、勇者を見る。勇者は事切れていた。
それを確認すると、魔王は横を向き、目当てを視認する。
早く乗り移らねばならない、と魔力を練る。しかしそこで魔王は気付いた。自身に魔力がもう毛ほどしか残って無いことに。
これでは魂を癒着させることはできても、精神の乗っ取りができない。
それに歯噛みするも、もう迷っている時間もない。
突然の事態に震える少年を見据え、
「その身体……よこせ」
そう言って、なけなしの魔力で魂を飛ばすと、少年をの身体に潜り込み、少年はそのショックで気を失った。そして魔王の身体はついに事切れた。




