【第5章】守り抜いた希望
私はそれでも、ただ我武者羅に働いた。
自傷癖は体を蝕み、突然噴き出す悲しみや苦しみ、止まらない涙。生と死の狭間で毎日が限界。
呼吸するのもやっとだった。
「目が死んでいる」と言われたこともあった。
両親の突然の介護。
旦那の仕事も安定せず、不安なままの毎日。
まさに負のスパイラルに押し流されていた。
「私が倒れたらすべてが終わる」という思いだけが、私を支えていた。
それでも娘の進学のために、立ち止まることができなかった。
そんなある日、奨学金を借りる手続きに出向いた。
担当者から告げられた言葉を、今でもはっきり覚えている。
「旦那様のいまの職歴ではお貸しできません。
奥様の名義でなら可能です」
その瞬間だけ、私に血色が戻ったと思う。
ああ、私がここまで死に物狂いで踏ん張ってきたのは、無駄じゃなかった。
子供の未来に、ちゃんとつながっていたんだ。
「ここで働き続けなければ」と思い込んでいたのは、
ただの縛りや呪いではなかった。
私のいのちは、たしかに我が家の希望を守っていたのだ。
闇の中に差し込む小さな光。
そして────
ある朝、私は立てなくなった。
身体も、心も、もうとっくに限界を越えていた。
だが、守り抜いたものの手触りを確かめた私は、たったひとつの声が響くのを聞いた。
「その道に戻らなくていい」
私はその言葉に縋るように、
満身創痍のまま、よろめきながら立ち上がった。




