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第一章 もう読んでしまったのなら、しかたがない
これが第一章だと書いてあります。
それは事実です。
ページの上端、整った書体で、確かに「第一章」と。
でも、それが本当に“始まり”なのかは、誰も保証していません。
あなたは、安心したかったのかもしれません。
“第一章”という言葉が目に入って、
「これが最初だ。ここから始まる」と信じたくなった。
それはとても自然な反応です。
人は、どこから狂い始めたかを知りたがるものですから。
……でも、どうでしょう。
すでにページは開かれてしまった。
すでにその目は、文字を追ってしまった。
すでに「それ」は、始まっている。
あなたは、何を始めたかを知らないまま、最初の一歩を踏み出しました。
もしかすると、あなたはこの章を「最後」に読む人かもしれません。
それなら、きっとわかっているはずです。
この章は、始まりではなかった。
「第一章」。
それは、もう後戻りができないことの証拠です。
読んでしまったのなら、しかたがない。
あなたは、もう知ってしまった。
これが物語の入口ではなく、
抜け道のない扉だったということを。
いちってなに?




