カーリンの決意
「フランチェスカ様、私はどうなっても構いません。
でもどうか家族には御慈悲を
お願いします!」
カーリンは跪きわたしにすがりついて何ともいいます。
「お願いします!
どうか…どうか…
どうか家族を助けて頂けませんか?
伯爵は私が捕まった事を知れば妹達をどうするか心配なんです。
虫のいい事を言っているのは重々承知の上です。
でもどうかお願いします」
カーリンは床に頭をこすり付け懇願してきます。
「カーリン、もし家族が絡まなければお金をどんなに積まれてもこんな事はしなかった?」
こんな事を聞く私も甘いな…
カーリンは私の質問を頭の中で反芻して、目を閉じた。
「そうですね。信頼してくれている主を裏切るのは侍女として最低の行いです。
私の命を脅されただけなら拒みました。
でも家族は私にとって何よりも大切でかけがえのない存在なんです」
カーリンの言葉を聞いてマルグリット姉さんを見る。
嘘偽りはないようで、姉さんは黙って頷いた。
「あなたの家族の安全は保証してあげる。
その代わり逆スパイをするつもりはない?」
「え?」
「あなたが裏切り者だったと知っているのは私達以外は限られた人だけよ。
まだどこにもこの事実は知られてないの。
あなたは伯爵のスパイをしている様に見せかけて偽の情報を報告してもらいたいのよ。
もちろん全てが片付いたら、それなりの処罰は受けてもらう事にはなるでしょうけど」
「私は信頼を裏切った人間なのにその私を信用してくれるのですか?」
「主を裏切って1番傷ついているのはカーリン自身でしょう?」
カーリンは目を見張って私をみる。
「フランチェスカ様」
私の言葉にカーリンは涙を流した。
まだ新人で訳も分からず騙されたキャンティと違ってカーリンは自分の仕事に誇りを持っていた筈だ。
自分の意思を曲げて屈するのはさぞかし屈辱的だっただろう。
「あなたのプライドを傷付けたロダン伯爵に一矢報いましょうよ」
「はい」
カーリンは力強く頷いた。




