もう1人の侍女
いくら全てを素直にしゃべってもキャンティはもうここで侍女をするのは無理だろう。
仕事の失敗や出来不出来なんて努力でいくらでも変えられる。
でも、1度でも不信感を抱かれたらこれを覆すことはあまりにも難しい。
侍女と言う立場の人間は信用と忠誠心が一番大事だ。
ロジェもキャンティもその1番大事なものを失ったのだ。
そしてもう1人の侍女カーリン。
彼女は正真正銘西の離宮の侍女で侍女副班長まで勤めた人物なのだ。
その彼女がなぜ?
私は驚いた。
だから、サリーの事も心配したのだ。
マルグリット姉さんには窘められてしまったけれど。
別の所属だったとしても、役職がついた侍女は一握りだから、サリーはきっとカーリンの事を知っていただろうし、仲間として認めていた筈だもの。
「カーリン、あなたはなぜ今ここに居るのか分かっている?」
キャンティの部屋からカーリンの部屋に移動した私達は先程と同じ様に話を聞く。
「はい、私の裏切りを知られてしまったと言う事ですよね」
そう言ったカーリンは悲しげに微笑んだ。
「なんで? あなた程の侍女がどうしてこんな…
露見すれはもう仕事が出来なくなるんだよ?
それどころか捕まって罪に問われることだって」
「しょうがなかったのです。
私には拒む選択肢は与えられていませんでした。
言う事を聞かなければ親と妹が…」
カーリンは唆されたのではなく、家族を盾に脅されていたのだった。
彼女を卑怯な手で脅したのは、またしてもロダン伯爵だった。
彼女の妹はロダン伯爵の邸で働いているらしい、カーリン姉妹の父親が病に倒れたのは去年の事だと言う。
それを知ったロダン伯爵は彼女の妹に医者と住む場所を提供してくれると言った。
今まで住んでいた家の大家が父親の病を理由に立ち退きを求めてきたからだった。
姉妹はロダン伯爵に感謝をして好意を受けた、それが罠だったとも知らずに。
ロダン伯爵って用意周到と言うか、先々何か自分に利用価値がありそうって事に鼻がきくのかしら?
「辛かったです、周りを騙している事が。
ばれて、ホッとしました」
そう言うカーリン。
カーリンはキャンティのフォローも命じられていたから、余計にキャンティが離宮の侍女でなかった事が分からないようになっていたらしい。
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