第一章 産み落とされたのは悪役令嬢 〜08〜
皆さまごきげんよう。
今日はマナーの先生がいらっしゃっております。
週一ぐらいの頻度で来るけど、本当は週二の予定だったらしい。
なぜなら私が優秀過ぎたから…ではなく基本のマナーをある程度知っていたからである。前世ではたまに高級レストランとかは行ってたからそこらへんは大丈夫。
まあでも完璧でもないし、食事以外のマナーは知らないことが多かったから(パーティとかでのマナーとか)週一で教えてもらっているところだ。
でもまあ飲み込みが早いのに変わりはないわけで。
「お嬢様完璧ですね。一度お教えすればほとんど間違いませんし、もう2、3ヶ月で社交の場に出てもおかしくないですわ。」
「ありがとうございます。しかしダンスがまだまだなので。」
「あら、お嬢様ぐらいの年齢の方がダンスを踊ることはないので出来なくてもパーティーに出るには十分ですのよ?」
「でもおとうさまのあしをひっぱってしまわないかふあんです。まだほとんどそとに出たことがありませんし。」
「確かに、大御神家までにもなるとわざわざ外に出る用事がありませんものね。広い庭もあれば料理人もいて、習い事の先生はあちらから出向いてきますし。」
うわー、聞けば聞くほどやばいな大御神家。
ちなみに今習い事は、ピアノとバイオリンと英語とフランス語とイタリア語と茶道。本当は、お嬢様ならもっともっと習ってるんだろうけど、めんどくさかったから私がやりたいのを加えてあとは絞った。茶道は昔からやってみたかったんだよね。
とりあえず私はパーティーに出たくない一心で生きているのでどうにかこうにか言い訳する。
ちなみにダンスは先生が子供だからってすごく見下してくるうざい奴だからわざと足踏みまくったりして進みを止めている。
メイドさん達とかの目が届かない範囲でネチネチ嫌味を言ってくるけど高校生メンタルだから全くもって効果なし。早く不祥事目撃されて解雇されちまえ〜。
まあ告げ口したらお父様が有無を言わさず即解雇すると思うけど、ダンスの先生をおちょくるのも楽しいから目撃されるまでってことにしている。あ、マナーの先生はめっちゃ好き。可愛いし美人だし優しいし。
「お嬢様はお花はお好きでしょうか?」
「おはな?はい、みるのはすきですよ。」
「それでは伊邪那岐家のお庭に素晴らしい薔薇園があるので一緒に見に行ってみませんか?旦那様からは私が一緒であればお嬢様の外出許可は出ておりますし、私は伊邪那岐家も懇意にさせて頂いてるので自由に出入りはできるんです。まずは近いところからで良いので、敷地の外に出てみませんか?」
「えっ、行ってみたいです!」
え、それはとても興味がある!!花を育てるのはめちゃくちゃ出来ないけど、見るのはめちゃくちゃ好きだ。それに、うちにも花はたくさんあるはあるのだが、薔薇は言うほどない。
いやしかし先生お父様からの信頼絶大だな。まあ私がお父様と話す時に先生が優しくて〜大好き〜みたいなことばっかり話してるからなんだろうな。
「それでは今日のレッスンも終わりましたし行きましょうか。すみません、お車用意していただけますか。」
「かしこまりました。すぐ御用意致しますので玄関でお待ち下さい。」
あ、ハイ。やはりお車ですよね。
まあ大御神家の敷地から出るのも車じゃないと時間かかるしな。
「わぁ〜!!とてもきれいですね!」
「そうでしょう?ここの薔薇園は私邸のお庭の中では日本一ですからね…ってお嬢様?!どこに行かれてしまったのですか?!」
「やばいガチのばらのトンネルじゃん!!!」
レンガのタイルが敷き詰められた小道を小走りして、トンネルを抜ければ一面に広がる色とりどりの薔薇、薔薇、薔薇。
薔薇の生垣で区分けされているこの薔薇園では、分けられたゾーンごとに豪華で美しい装飾が施された真っ白なガゼボが一個あった。
屋根はステンドグラスが使われていて、柱には赤い薔薇が巻きついている。
私が駆け込んだ庭にあったガゼボの方へ、沢山の薔薇を楽しみながらゆっくり歩いていく。
赤はもちろん、ピンクや紫、オレンジや黄色や白。二色が花びらの中で混ざり合ってマーブルみたいになっているのもあった。
前世からガゼボに対しての憧れみたいなものがあったのもあり、ワクワクしながら白い柱の方へと近づいていく。
ふと、丸い構造に沿って作られたベンチにちいさい人影が背を向けて座っているのに気がつく。じっとその背中を見ていると、視線に気がついたのか、その子が振り返る。
「…そこにいるのはだあれ?」
……とんでもない美少年キタァァァ。




