リジーさんの怒涛(?)の日々だヨ 雑事編③
ポチリと拍手等、ありがとうございます。
お風呂にのんびり入って体をほぐした後、あたしはテント内にあるあたしの部屋のベッドに潜り込む。昨夜も思ったけど、マットレスに程よい弾力があって寝やすい。この硬さはあたし好み。
さて。精神的に疲れてはいるけれど、眠るにはまだ早いのか眠気がこない。困った。
眠気がくるまでゴロゴロしているのも時間の無駄だから、寝落ちするまでマルに色々聞いてみよう。マル、平気?
『構いません。何が聞きたいですか?』
うーん……改まって聞かれると、コレってのが思い浮かばない……。あれだ。新人にありがちな、何が分からないのかが分からない状態ってやつ。慣れてくれば何が分かっていないのかが分かり、的確な質問も可能になるけれど、現状じゃ、全てに対して予備知識がないからなぁ……。
どうせだから、この世界に来た時に立ち返り、初歩の初歩から聞いてみよう。
まずは、この世界って何て言うの?
『何て言う、とは?』
うーん……国単位じゃなくて、全ての国や大陸をまとめた名称? あたしの世界で言うと、様々な国を内包し、人類等の多くの生命体が存在する『地球』。あたしが生きていたのは、地球という惑星にあるひとつの国。
『……そういう括りで言いますと、特に名前はないとしか言えません』
え? そうなの?
『はい。『国』という物は認識していますが、それを内包している大きな存在を認識している生命体が地上にはいませんので、名前が存在する意味がありません』
ああ、そっか……コロンブスが新大陸を発見したり、ガガーリンが宇宙に飛び出して初めて地球が『地球』と認識されたのと同じか。今あたしがいるこの世界を内包しているのが惑星かどうかも分からないし、名前を付けようもないか……。
そう考えると、最初から世界の名前が決まっている物語って、便宜上とはいえ凄いな。
んじゃ、次。えーと……。
……この世界の服装のセンスとか内装って……あんなに悪趣味なの?
『あのクズ国のセンスと同一視するのは、この世界の住人に対して失礼です』
きっぱり言い切った!
まあ、あたしの着ている服とか、メルディ国に入ってから見掛けた人達の服装はシンプルだったから大丈夫だろうとは思ったけれど、最初に見たのがアレだからねぇ……ちょっと心配になった。だけど、ディスると同時に断言してもらえて安心した。
と言う訳で、問題ないようだから、次!
うーん……元の世界に戻る方法は、自分で探すとして……。
『……』
そう言えば、あのクズ国の宝物庫。何で鍵がかかってなかったんだろう? あそこまでクズだと、宝なんて名の付くものは自分の近くに隠し持ち、がっちりガードしてそうなんだけど?
『あの宝物庫にあった物は、あのクズ共にとっては価値のない物ばかりだったからです』
……は?
いや待って。だってあそこに『時空神の贈り物』や金貨なんかがあったんだよ? 古い本や武具、アイテムだって、普通に価値ある物でしょ? それなのに、何であのクズ達は価値がないとか思ってんの!?
『以前も説明しましたが、あの国は神々に見放されている為、鑑定や識別の魔法を使える者が存在しません。つまり、本当の価値というものを全く知りません』
……何かゴテゴテと装飾されていればそれだけで価値があると思ってるとか?
『その通りです』
非常食や回復アイテム、他の備品とかが放置されていたのは?
『アレ等が非常食を口にすると思いますか?』
納得。
『回復アイテムも、かすり傷程度でも魔法で治させるので、使用しません。他の備品は……見た目がアレ等の美意識を刺激しなかった為です』
ああ……もう、心の底から悪趣味なんだ……。
マルの指示でトキがごっそりアイテムを回収していた意味がよくよく分かった。宝の持ち腐れになるのも申し訳ないから、そのうち誰かにあげる等しよう。
……金貨が放置されていたのは?
『あの国の内部において、お金等はほぼ価値がありません』
は?
『あのクズっぷりを見れば分かるでしょう。あのクズ共は欲しい物がある時、国の内部に居る者達相手ならば平気で強奪します』
はあっ!?
『そして馬鹿なので、自分達にとって無価値な金貨を対価で投げつけます』
あ~……金貨の価値が分からないから、余分に?
『そうです』
アホだ! アホが居るーーーーーっ!!!
いや、あの国に居る民――というより冒険者達(笑)にとってはラッキーかも? 他国に行けば、普通に金貨の価値はあるからね。
……ん? あれ?
……あいつ等にとって金貨が無価値なら、あの慰謝料を貰ってきた時に多少なりともあたしが気を使ったのは……無駄だったという事?
『いいえ。ある意味、十分有意義な事になっています。自分の為に金貨を使おうとすると消えるので、あのクズ共は物を手に入れる事が出来なくなっています』
うん? どういう事?
『奴等が対価として金貨を投げつけなくなったので、あの国に居る者達はとられても惜しくない物を表に出さなくなりました。つまり、困窮していると見せ掛けているのです』
あ~……見た目は何もなくても、どこかにはしっかり隠してある、と。
『はい。だからこそ、他国に逃げるように見せ掛け、あのクズ国から悠々と出てくる者が増えています』
困窮しているから国を脱出――身分証が冒険者の物だから可能――して拠点を移したように見せ掛け、実際はあいつ等が長年投げ捨てていた金貨で生活地盤を整える訳だ。
そうやって国を出る者が増えているから、あのクズ達が手に入れられる物がさらに減っている……。
『リジーは、大変、良い仕事をしたと思います』
マルに顔があったら、これ絶対、滅茶苦茶イイ笑顔しているんだろうなぁ……。
というか、たくましいな、あの国の人達。いや、たくましくならざるを得なかったんだろうけど……。
『そういう知恵を授けた存在が居ますので』
まさか……。
『はい。冒険者登録を進めたあの偉大な変人です』
その変人、ちょこちょこ出てきては何かしらやってるね……。
『あの変人が遣った事で、結果的に良かった事になった数少ない事例のひとつです』
ああ。結果的に国民を救う事になってるからねぇ。
『それもありますが』
ん?
『あのクズ共をじりじりと絶望の淵に追い詰める良いきっかけになってくれました』
そっちかいっ!!
何と言うかもう、奈落の底に突き落とさなきゃ気が済まない状態になってるね……。
まあ、いい。あのクズがどうなろうと知った事じゃ――ってダメダメ。あたしが徹底的に貶めて生き地獄を味わわせ、国を潰すまでは欠片でも残っててもらわないと。
『大丈夫じゃないでしょうか?』
そう?
『はい。ああいうのほど、しつこいですから』
……。
うん、そうだね。確かにそうだ。納得した。し過ぎた。
もうあいつ等は殺しても死なないだろうし、バカ過ぎて現状は放っておくのが得策と分かっただけでいいよ。
これ以上、無駄な時間を使うのも勿体無いから、次に行こう、次に。
そう言えば……あたしの強さってどのくらい?
『強さ?』
そう。物理的な攻撃力とか防御力? あとは魔法系の攻撃力とか防御力とか。
『……全てにおいて、国家滅亡レベル?』
物騒だねっ!!?
『闘神や魔術神のみならず、どちらかと言えば物理攻撃が得意な竜神に獣神、魔法系が得意な表裏神、時空神がリジーに加護を与えているのですから、そのくらいはサラッと出来ると思います』
サラッととか言うな! サラッととか!! めっちゃ引くわっ!!!
『その為、明日からの戦闘訓練は、手加減の練習に終始した方が良いです』
マルが忠告……分かった。そうする。何と言うか、わざわざマルが言ってくるから、ヤバい案件な気がしてきた。だから、手加減、頑張る……。




