47 変わらないヨ
ポチリと拍手等、ありがとうございます。
あたしは今、不機嫌だった。
頼まれた通り、お土産付きになってしまったがきちんと罪人共を王城に届けた。これであたし達の仕事は終わり、冒険者ギルドへ行ってもう1人の罪人を引き渡し、ギルド登録すれば後は自由の身になる筈だったのだ。
それなのに!
な・ん・で! 王と会わなきゃならないのよっ!!
確かに、王族や貴族に良いイメージがなかったから、頭を下げてきたこの国の王の態度にはビックリしたよ。でも、それと会う事は別問題だよね? あたし、直接会うなんて言われてないし、聞いてもいない。ついでに、面倒だから会いたいなんて言う訳もない。
国王が神獣に会いたいとは言っていたけど、あたし、頷いた記憶ないし? ルベルもブラウもフォスも、基本的に他人――というかあたしや仲間以外の存在――に興味がないと断言しているから、進んで会いに行こうとは思わないだろう。こちらは特に会う理由がない以上、会いたければそちらから会いに来るのが筋ってもんでしょうが!
それなのに、それなのに、だ!!
「何をちんたら遣っているのだ! 国王陛下がお待ちだ。愚民共、さっさと来ないか! 至高の存在である陛下がお前の様な老人や獣達とお会いして下さると言っておるのだ。光栄に思え」
王城の出入り口近くにある質素な石造りの兵舎で罪人を引き渡していると、突然乱入してくる男がいた。なんか白っぽいプレートアーマーと装飾過多な剣を持つ男は近衛騎士とか名乗り、国王の使いだとか言った後、開口一番に言った事がコレ。ふざけんなっての。
この国の王は、名乗る事もできないアホを使者にして、遠回しにあたしに喧嘩売ってきてる訳? もしかして最初に頭を下げたのは、こうしておけば自分の言う事をきくだろうとかいう打算か? 実はこうして喧嘩を売って自分の力を見せ付ける土台にでもする気だったとか? バカじゃない!?
近衛騎士より立場が低いのか、隊長達を含むその場にいた兵士達が不快そうな顔をしながらもこの騎士に対して何も言わない。というか言えないのか。それでも、この騎士の態度を許容している訳ではないと言わんばかりに、引き渡しの手続きを淡々と進めている。まともな反応をする存在に言い返せる力がないって、どこの世界にもあるあるってやつかい。
はぁ……この騎士だけなのか、近衛騎士全体がそうなのかは分からないけど、これが、こんな態度や言葉遣いが普通の事、いつもの事なのだと隊長達の行動で丸わかりだ。
仮にも騎士を名乗っていながらこれで良いのか。言動といい態度といい、あのクズ元副隊長や小物デブと同じじゃないか。
周囲が何も言わないのをどう勘違いしたのか、その騎士はまたまた偉そうに踏ん反り返り、ついて来いと言い捨てどかどか歩き出した。品がないなぁ……。
もっとも、そんなのについて行く必要性は皆無だから、あたしはその背を無視してモンド隊長に向き直った。
「モンド隊長、手続き終わった?」
「もう間もなく終了します。その後は冒険者ギルドに行き、ルチタンの支部長の引き渡しとリジー殿の冒険者登録、指名依頼の処理をして全て完了となります」
「先に行って登録するのはマズイ?」
「出来れば、我々に同行して下さい。リジー殿の身元保証を我々がしておりますので、面倒な手続きを省略できます」
「なるほど。じゃあ、待ってる」
あたしが頷き待ちの体勢になると、一緒に居たネス達も同じく待ちの体勢になった。まあ、モンド隊長達が手続きを取っている場所以外、テーブルも椅子もないから立っているしかないんだけどね。
手続きを進めるモンド隊長も、この王都警備の隊長も、なにか思う所があるのか、あたし達の行動を咎める様な事はしない。というより、むしろそういう態度を取って当然って感じで受け入れている。
なるほどなるほど。やーっぱりアレは、あたしに喧嘩売ってたんだね。納得なっとく。
うん、買うよ? ここに来るまで、バカやアホやクズにかなりの確率で会ったせいで結構イライラ溜まってるから、この国の最高責任者が売ってきた喧嘩だもん。お礼は数倍返しを基本にしてたっぷり買うよ?
「貴様ぁっ! ついて来いと言っているんだっ! さっさとせんかっ!!」
どこまで行ったのか知らないが、真っ赤な顔して戻ってきた男が怒鳴り散らす。
まずはコレ、どうにかしちゃっていいよね?
一瞥すらせず溜め息ひとつ。
それだけで偉そうな近衛騎士は頭に血が上ったのか、あたしにずかずかと近付いてきて、その手があたしの方へと伸び――。
ブラウがその手を掴み捻り上げ、ルベルとフォスが守る様にあたしの前へ、ネスが横に立った。
「いっ、いててててっ! 貴様っ何をするかっ! 獣の分際でっ! 放せ、放さんかっ!!」
アホみたいに喚いているが、あたしに手を上げようとした存在に対し、契約交わしちゃっている神獣達が容赦する訳ない。喚けば喚く程、捻り上げる力が強くなっている。
ついでにその『獣』っていう差別発言は、あたしに対する明確な敵対行動だから手加減しろなんて言う気もない。
「リジー。こいつ、どうする?」
「ウザいから、どっかに捨てちゃって。あ、敵認定しちゃっていいよ」
「お、そうかっ!?」
「心得た」
……なぜ楽しそうなのかな、ブラウは?
……というか、本当に嬉しそうだね、フォス!?
尻尾をぶんぶん振り回すブラウと冷笑を浮かべるフォス。あれ? 選択を間違った?
とか思っているうちに、マップ表記が青小丸から――外側グレーな赤小丸に変化した。うん。変化しちゃったよ!? あれ、敵認定早過ぎじゃない!? しかも既に半死状態!?
『リジーが敵と言った瞬間から、それは全てにとって敵となります。神にとっても、神獣にとっても、ネスフィルにとってもです。即、神罰が付与されました』
は? え? あたしの敵は世界の敵状態っ!?
『表裏神が言うには、リジーの敵は全て無用の長物だそうです』
極端だね!?
『当然の帰結です。なにより、生かしておくだけありがたいと思って下さい』
いやいやいや。敵認定された途端、神罰なんかが付与されるんだから、生きてる方が不親切だよね!?
『リジーは慈悲を与えるのですか?』
いや、別にそういう訳じゃないけど……罪人じゃないのに加護している神々の罰は過剰じゃない?
『リジーへの態度が悪いのですから、自業自得です。それが加護を持つ者と持たない者の差です』
……。
『反論がないようですので、問題ありませんね』
神の過保護というか暴走に唖然としているうちに決定してしまった様だ……。
いや、でも、うーん……そういえば闘神が伝言で、あたしへの態度を気に入らないと思ったら戦う力を没収するとか言ってたな……つまりなんだ。あたしがイラッとする様な態度をとった奴は神も気に入らないって事?
『そう思って下さい』
……ま、いいか。あたしに害ないし。
仮に神罰の影響でこの国が傾きそうになっても、頭を変えれば問題ないから気にしない事にしよう、うん。
……神の遣る事にツッコミ入れてもキリがないからね……流石に学習した。
あたしがマルと脳内会話を繰り広げているうちに、周囲では物事が勝手に進んでいく。
まず――? あれ? あの近衛騎士が消えた?
周囲を見渡してみるが、居ない。あれ? さっきまでブラウが手を捻り上げていたよね?
「ブラウ? さっきの奴はどこへ?」
「リジーが捨てていいって言うから、魔物がいそうな所に捨てた」
「……空間でも繋いで?」
「おう! いやー楽でいいな、これ! フォスなんかが軽く遣ってるのを見ている事しか出来なかったが、魔力が上がったからオレも出来る様になったんだよ! リジーと契約したお蔭だ、ありがとな!!」
キラッキラした笑顔でお礼を言われた……そうか、空間転移系の魔法(?)って高度なんだね……白でも出来る存在と出来ない存在があるとは……。
「……甘いですね、ブラウ」
「何!? フォス! 捨てるのは甘いのかっ!?」
「否。捨て去ったのは褒めますよ」
「だろう!?」
褒めるんだ……。
「甘いと言ったのは、捨てた場所です」
「ん? 魔物の所じゃダメか?」
「どうせ捨てるなら、烙印の魔道具で罪人の証を付与した後、魔物の巣に捨てるのが最上でしょう」
「お、なるほど」
「ちょっと待てっ!? 罪人の証が浮かぶの前提!? フォスの平和主義はどこ消えたっ!!?」
ついツッコミを入れると、フォスとブラウがあたしを見た。
「表裏神様とリジーの前では、そのような主義など塵芥に等しいゆえ」
「だな。獣神様とリジーの方が大事」
「それに、リジーに対しあの様な態度を取るモノです。罪人に決まっているでしょう」
「そうそう」
色々と断定な上に、フォスのキャラが既に崩壊っ!? 言葉遣いまで普通になってるよ!?
『麒麟は元々、こんな感じです。言葉遣いについては、コロコロ変わります』
コロコロ変わるって、気分次第って事?
じゃあ、あの看破結果は……。
『看破結果に本来ならと書かれていたのをお忘れですか』
……つまり?
『元々は平和主義ですが、今は怒っているので違うという事です』
言葉のマジックねー。
がっくり項垂れるあたしの腕をルベルがぽんぽんと叩く。
「諦めが肝心じゃのぉ」
「あんたが言うなっ!」
「酷いのぉ」
言葉では酷いと言いながらもルベルは笑っている。その笑みも「してやったり」という感じだ。
なんというか……神獣3人の根っこの部分、似てきた?
『リジーが不快に思う言動をする者、リジーを利用しようとする者が敵と判定されるようになりました』
マルの知らせと共にマップの表示が変わる。
王城にあった青小丸5つ。うち1つは王都警備隊長。うち1つは赤小丸になって消え、残り3つは――
赤小丸に変わった。
はぁ……。結局、それかい。
どうしてこう、ロクでもない貴族しか会わないんだよ……。




