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咲宮紅―――攻略されるのも、悪くない


はじめまして、あなたの隣に一人いたら百人いる、腐った世界の一等星、A子こと 咲宮さきみや べにと申します。



・・・いきなりのアイドルみたいな自己紹介、失礼しました。ちょっと今、高校の入学式なんですが、混乱してて。

改めまして、咲宮紅と申します。

転生者です。

ポジションはモブという名の傍観者、この世界の主人公たちの恋愛模様を草葉の陰からによによと見守ることが我が使命と心に刻み、日々精進を胸に誓った一般人です。


頭はおかしくありません。


いや、私もね?おかしいと思ったときはありまして。

三歳ぐらいで、あれ何で私こんなとこでスモッグ着て幼児とお手手つないでんだろ仕事いかなきゃ、と思ったのが記憶の始まり。

夢かな?と思いながらランドセルしょって、セーラー服に身を包んだ頃に包んだ頃には現実だと気づき、あれこれじゃあ転生ってやつじゃないですかやだーと自覚できた頃に現・母親が再婚しまして。

因みに父親はいつの間にか居なくなっていました。離婚か死別かは定かではありません。そのころ私、夢見心地(笑)だったんで。

ともかく、母親が再婚しまして。そのお相手の方が、所謂お金持ちの方でして、私の進路が国公立から金持ち私立学校に代わる、と聞いてパンフレットを見せられた時は、制服が可愛くて嬉しかったなぁ。

んで、その後。

あんたの弟になるのよ、と紹介された色白栗毛の美少年を見たときは心の中でサンバを踊った。私の時代が来たと思った。お母様再婚してくれてありがとう今から心の中でゴットマザーと呼ばせていただきます、と誓った。

さらに、高校の入学式当日。壇上に立った生徒会長の姿に、全身が震えた。―――歓喜で。


生徒会長、 あららぎ ゆかり

ご先祖様に欧州の方の方がいらしたとかで、日本人離れした金に近い薄茶の髪に、グリーンがかった瞳、シミひとつない真っ白な肌を持つ美少年。いや、美青年か。このくらいの年の子は判別が難しいが、

とにかくえらい美形で、美人さんで、テンションが一気にMax振り切った私が震える程度で己を律せてこと、誰か褒めてください。

成績は優秀、素行も優良、指導力を買われて2年生にして生徒会長になった彼のただ一つにして最大の弱点は、その性格だ。

クールというより冷たい、そっけない以上に冷酷、平等に無慈悲。人を人とも思わない、その非道さが素敵と学内に多くのファンを持つ。

なんでも、幼少時のトラウマで人を信じられなくなったとか。—――確か母親が男を作って出ていき、父親は愛人を家に連れ込んでその愛人に邪魔者扱いされ信じていた使用人(男)には襲われる(未遂)という、人間不信のための設定てんこ盛りな彼の詳細なプロフィールが脳裏に浮かんだ私は何者か。


そう、私が転生者です。

この世界、この学園が舞台のBL・・ゲームをプレイしたことが、ありまくります。転生者です。

生徒会長さんは攻略相手で、私は彼を攻略したことがあるので、彼についてはよーく、それこそ下手すると本人よりもよーく、知っていました。

おかげで、この世界がゲームの世界だと判明したようなものですから。

まさかあの学園が共学だったなんて、私のプレイしていた画面には主にブレザーと肌色しか映らなかったのでついぞ気づきませんでした。学校名を見ても、男子の制服を見ても、実際に校舎に入っても全然、ちらとも、この世界がゲームだなんて思いもしませんでした。


壇上の生徒会長を見る。

穴が開くほど見る。—――大丈夫、害意はない。だから通報はしないでください。

ゲームでは、彼はこれから主人公と出会い、トラウマを掘り返されて新しい感情で埋められ、拒絶しつつも受け入れ、やがて・・・な関係になる。

ゲームでは。


ここで、一応の自己紹介の補足をしておこう。

皆さんすでにお気づき、というかしょっぱなから全開ではあったが、私は所謂オタクであった。しかも腐女子であった。

同時に、社会適合者の仮面を十数年かぶり続けていた、世間の評価はあくまで「真っ当」な、常識人でもあったと自負している。

その私が思うには、だ。

この世界はゲームである。―――ただし、それは以前の私の世界において、の話である。

この世界は、この世界を生きる者、例えば現在の私とか、にとっては、まごうことなき現実なのだ。

例え、目の前に前世で攻略した生徒会長がいて、仮に、この後主人公であるちょっと世間を斜めに見てるヤンキー入った主人公が現れようとも、彼らには彼らの人生があり、彼らなりに歩んでいるのだ。

それを、ゲームではどうだったから、やれそれが運命だからと介入したり暗躍したりするつもりは毛頭ない。そんなこと、常識人としての私が許さない。

だから私は、前世の知識を生かして何かしよう、なんて、欠片も考えていない。

そもそも、ゲームの特質上、モブでしかありえない私が何かできるなんて、そんなおこがましいこと考えてもいない。

私は彼らの良き級友であり、先輩であり、後輩足るべく行動する。

そうして、私も私の人生を、目一杯楽しむのだ。



たとえば。




心の中で妄想するだけなら許されるよね大丈夫害はない、害はないから!

社会人歴=猫かぶり歴ン十年の実績にかけて、私はこの世界を、前世と同じく波風立てずに、前世以上に堪能することをここに誓う!!




って感じでも、私は私の人生を(以下略)






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