第188話 昂る鼓動
188話~
「ほぇ~……それで東雲ちゃん達は朝早くからどっか行っちゃったんだ。」
「そうなんです。」
朝食を食べながらルアとミリアは、東雲とルシファーのことについて話していた。
「私も一回仕掛けてみてわかったけど……あれにはまだまだ勝てる気がしないなぁ~。もし七大天使ってのが全部あれと同じ位の実力なら、だいぶ絶望的かも。」
そう言ったミリアに、おかわりを運んできた由良が口を挟んだ。
「そんな風に弱気になるとはお主らしくもないのぉ~。」
「いや~……あそこまで実力の差を見せつけられるとね~。私でもなかなか精神的にくるものがあるよ?」
ため息混じりにそう言ったミリアだったが、ルアへと艶やかな視線を向けると、続けてこう言った。
「まぁ~でも~?もしルア君の濃厚な体液をい~っぱいくれるんだったら~、チャンスあるかも?しれないねっ♪」
「ダメに決まっておるじゃろうがっ!!」
「え~……赤いのでも白いのでも良いんだよ?」
「色の問題ではないっ!!お主にはこれで十分じゃ!!」
由良はミリアの前にコップいっぱいに注がれた牛乳を乱暴に置いた。
「牛乳かぁ~、まぁこれも血液みたいなものだから良いんだけどさ。でもやっぱり人間の……それも若い♂の体液が一番いいよね~。」
「ぴぅっ!?」
捕食者のような貪欲に染まった視線を向けられたルアは、背筋にゾクリと冷たいものが走り、思わず素っ頓狂な声を上げる。
「おいミリア、ルアが怖がっておるではないか!!ルアのことを獲物として見るのはやめるのじゃ!!」
「あははっ♪ごめんごめん。ちょっとした冗談だよ。」
そしてミリアはフォークとナイフを皿の上に置き、コップに注がれた牛乳を一息で飲み干すと手を合わせた。
「それじゃ、今日もご馳走さま。美味しかったよ由良ちゃん♪料理の腕上がってきたね。」
「ふん、わしの料理が美味しくないはずがないのじゃ。」
照れを隠すようにそっぽを向いた由良。その隙にルアのもとへと歩み寄ったミリアは彼の耳元で囁いた。
「あはっ♪もしルア君がしてほしかったら……いつでも言ってね?」
「!?!?」
そんな甘く危険な言葉を囁いたミリアは、ルアが呆気にとられている間に去っていった。
その時ルアの頭を過ったのは、以前ミリアに身体中を舐め回されたあの記憶……。熱い舌がナメクジのように身体中を這い回る、あの官能的な記憶。さっきのミリアの言葉でそれを思い出したルアは、お腹の奥がキュン……となるのを感じた。
「あ、お、お母さんボクもご馳走さま。」
「むっ?もうお腹いっぱいかの?」
「うん。美味しかったよ。」
「そうか、なら良いのじゃが。」
朝食を食べ終えたルアは、昂った気持ちのまま足早に自室へと向かう。そして体に似合わない大きなベッドに横になると、自分の心臓の鼓動が一際大きくなっていることに気がついた。
「こ、これなんだろう……。すごいドキドキする……。」
全身の肌が布に擦れるだけでどこか心地いい……そんな不思議な感覚に包まれていると、ルアの体がフワリと宙に浮いた。
「わぁっ!?」
そして先程までルアが横になっていたベッドに突然ルシファーが姿を現した。
「お待たせいたしましたルア様…………っておや?」
ルアを正面から抱き締めたルシファーは、違和感を敏感に感じとった。
「ルア様、少々心臓の鼓動が早いようですね。それに体温も少し高いようです。」
「ふぇっ!?こ、これはあの……。」
「人間という種は様々な疫病にかかってしまうと聞いております。もしやこれも疫病の類いでは?ルア様少し失礼致します。」
そう言うと、ルシファーはルアのおでこに自分のおでこをぴとりとくっつけた。お互いの顔が急接近したことで更にルアの鼓動が早くなる。
「……んん?また更に鼓動が早く……しかし体の中に異常は見当たりませんね。これはいったい……。」
「あ、あのルシファーさん。だ、大丈夫ですから。ちょっと疲れてるだけ……だと思います。」
「本当にそうですか?」
「は、はい……多分。あっ!!それよりも東雲さんはどうしたんですか?」
「あぁ、こちらにしっかりとおりますよ。」
ルシファーはおもむろに自分の胸の谷間へと手を入れると、その中から狐の状態に戻ってしまった東雲を取り出した。
「うむむむ……牛乳の化け物…………。」
取り出された東雲は意識はないようだが、なにかに怯えている様子。いったい何があったのだろうか?
それではまた次回お会いしましょ~




