第1話
私、婚約破棄されても自分のペースで生きるわ!
今夜はパーティーだった。王宮の広間には豪華に着飾った紳士淑女があふれている。
クリス・フェアチャイルドも鮮やかなドレスを着てパーティーに参加していた。しかし、今夜は誰からもエスコートはされていない。
婚約者である、この国の王子バーナードから「今夜は君のエスコートはしない」と告げられていた。
エスコートできない、ではなく、しないという言葉に多少引っかかりがあったが、クリスは気にしなかった。
そして、今。目の前に王子バーナードが立っている。バーナードは、冷ややかな視線をクリスに向けた。周囲に聴こえるように高らかに言い放った。
「クリス・フェアチャイルド! 僕は君との婚約を破棄する!」
思わずきょとんとした表情になってしまった。
「はあ…… そうですか。分かりました」
そう答えると、王子は烈火のごとく怒りだした。
「いや、リアクション薄すぎだし! 分かるの早すぎだろ! 普通は、何でですか? 私のどこがいけなかったのでしょうか? とか聞いたりするでしょうが!」
「はあ。チッ。じゃあ、お聞きします。私のどこがいけなかったのでしょうか?」
「そういうところ! 今、めんどくさいって思ったでしょ! 舌打ちしたでしょ! 王子がまた何か言い出したって、顔に描いてあるからね! あのね。言っとくけど、婚約破棄だからね! 重大なことなんだからね! 僕の婚約者じゃなくなるんだよ? それでもいいの?」
バーナード王子のこういうところが本当にめんどくさい。男なのに、女々しいというか。神経質というか。
「はいはい。婚約破棄でいいです」
「いやいや、ちょっと待って。何でそんなにマイペースなの? 普通、婚約破棄とか言われたらショックで泣いたりするでしょ? ご飯も食べられなくなっちゃうでしょ?」
「ご飯は食べられますね……」
「出た! そういうところ! そういうところが本当に嫌い。マジ無理」
これ以上、王子と話すのは時間の無駄だと感じた。
「じゃあ、お先に失礼します」
帰ろうとすると、バーナード王子は慌てて呼び止めてくる。
「待って! 残業せずに帰るサラリーマンみたいなノリで帰ろうとしないで! あのね。僕も鬼じゃないんだから。君がどうしてもと言うならね。泣いて謝ったりするならね。婚約破棄の撤回を考えないこともないんだよ?」
「あ、別にいいです」
「本当の本当に、婚約破棄するよ! いいの!?」
「はーい。けっこうでーす」
こうして、バーナード王子と侯爵令嬢クリス・フェアチャイルドの婚約は破棄された。このニュースは、瞬く間に王宮に、そして城下町にと広まった。
そして、婚約破棄の理由は、不本意にもクリスの性格に問題ありとされた。
自己中心的でマイペース、典型的なB型。熱中しやすいが、飽きるのも早い。単独行動が多いが、実は寂しがり屋である。
しかし、クリスはめげなかった。
「一国の王子のくせに、心の狭い男。こっちから願い下げよ。もっと良い男を見つけるわ。私のペースでね」
婚約破棄されたけど、マイペースに生きるわ。
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