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気絶してしまったデービーは、警備兵に頼んで保健室に運んで貰う事になった。
その騒ぎを聞きつけたのか、コターがカザロ学院長を引っ張る様な形でやってくる。
最初は厭味ったらしい笑みを浮かべていたコターだったが、経緯の説明を進めていくと、だんだんとその表情は暗く沈みこんでいった。
話しの途中で、デービーは警備兵に運び出されて行く。
その様子を眺めつつ、最後のトドメとばかりに、カザロが上機嫌に笑いながら『お咎めなし』を宣言した。
「なるほど。
ノクレンダ君の方から最初に騒ぎ出したんですな、そして多くの生徒達はノリノリだったと…なら仕方ないですな。
実際、生徒達を黙らせるのは大変だったでしょう。プライドだけは一人ま……げふんがふん…。
ま、まぁ実力を示す提案も、この場合は致し方なしと言える。
何しろ侯爵令息が騒ぎ立てて、授業にもならなかったようですしな。
リッケ講師と助手には、落ち度はなかったと言う事で処理しましょう。
いやはや……3年にもなり、成人も目の前だというのに情けない……リッケ先生とフィーさんには、反対に手数をかけてしまいましたな」
ちらりと学院長が……今は静けさを取り戻しているので『待機席』で良いだろう…そこで大人しく並んで座っている生徒達を一瞥する。
『ノリノリ』だった生徒達は、カザロの視線を避け、決まりが悪そうに俯いてしまった。
カザロの後ろで暗い顔をしていたコターは、当然のように不満そうだったが、難癖をつけるのも難しいと判断したのか、ムッと不機嫌も露わに口引き結んでいた。
テストの監視員だったコターは、フィーを排除する絶好の機会…とでも思っていたのだろう。
用は済んだとカザロは判断したらしく、軽い会釈だけしてくるりと背を向けて歩き去って行く。
去って行く背中を、コターが苦々しく見つめていたが、溜息一つ残してトボトボとカザロを追ってその場を後にした。
その後は、信頼のおけなくなった生徒達の評価表…それの見直しを行う事にする。
訓練場に移動しているのだから、丁度良い…と言う訳である。
それと言うのも、あのデービーは入学以降、前任の魔法教師から『A』と言う評価をされている。
しかしフィーもセルも、到底その評価はありえないと思ったのだ。
学院からの指示があり、評価の仕方は5段階評価と定められている。
一番上は『S』で、次がA、以下BCDと続く。
そのように評価する様にと言う指示だったのだが、デービーがA評価で、あの実力なら、それ以外の生徒の評価も、資料を鵜呑みにする事は出来ないと判断したのだ。
そして案の定と言うか……。
ケルナーが『S』…これは妥当だった。
フィーがかなり扱いたのだから当然だろう。勿論実戦で使えるかとなると、難しい局面があるかもしれない。
と言うのは、ケルナーは持久力に少々難があった。
練度と精度は合格点なのだが、持久力だけ及第点でしかない。だが学院評価なら堂々と『S』と言えるので、全く問題ない。
S組の女子2名。
此方については両者共に、前任からの評価は『A』。
一応問題はなし…としても良いだろう。
学院の基準に照らし合わせるなら『S』でも問題ないと思えるが、彼女達も持久力がない。
持久力がないというのは、魔力の総量が多くない……いや、有体に言えば少ないと言う事を示唆しているのだが、ボーカイネン王国の貴族達は、総じて魔力量が少ないのだ。
隣国……名をイボルボン王国と言う。
ボーカイネン王国の東側に位置している其処には、魔法士一族として名高いリッケ家が存在している。
その事から推察出来るかもしれないが、魔法国といえば、暗黙の了解でイボルボン王国の事を指す。
彼の国の貴族達は魔力も高く、量も問題ない。
その上リッケ家に代表されるように、それを誇りとしている家が多いのだ。
比較対象がイボルボン王国と言うのが辛い所だが、其処と比べると、ボーカイネン王国は、どうしたって平均すると2、3段階劣ってしまう。
ただ、フィーのように突出した人材も、数える程だが居るには居るらしいと言う噂が、無きにしも非ずではあるが……。
ま、結局……魔法に於いては、ボーカイネン王国貴族は見劣りすると言う事だ。
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