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耕作…いや、この場合はエネオットと言うべきか…彼がアンネッタを気にしている事。王籍云々については、アンネッタとの話し合い次第ではないか…という、フィーの考えも話しておく。
聞き終えたヨリアンナは、深い溜息を一つ溢した。
途中、ネルローネがお茶の用意を終え、カップを置いてくれていたのだが、用意した本人も口にしないまま、いつの間にか温くなっている。
「そう…あの子がそんな事を…」
ポツリと、ヨリアンナが落とした呟きには、複雑なものが入り混じっている。
「でも、アンネッタと向き合ってくれるのは、喜ばしい事じゃない?」
ネルローネがパッと笑顔になった。
「だって、これまであいつ…ごめんあそばせ! お兄様って最悪だったし、アンネッタの事を蔑ろにしてたわ」
そこで言葉を一旦区切ったネルローネは、テーブルに置いたままのカップに目線を落とす。
「でも…まさか劣等感に苛まれてたなんて……。
お兄様は少し……あ~かなり足りないところが多いけど、それでもいい所だってあったのよ。
もっと小さい頃は、お兄様の笑顔で安心できたの。
わたしの話もちゃんと聞いてくれて……でも、そうね……アンネッタもケルナーも、優秀だもの。劣等感を持ったって不思議じゃなかったんだわ。
でも、お兄様がそれに気付いて、立ち直ってくれるなら、これから関係性を変える事だって可能でしょ?
そうよね? フィー」
縋るような視線を送ってくるネルローネに、フィーは淡々と『何でこっちに振って来るんだ』…と小一時間…いや、なんでもない。
「話し合い次第かと思います。
ですが、私も悪い事にはならないのではないかと思っております。
私共が自慢のお嬢様は、王子殿下に対し、悪感情はないとおっしゃっていました。まぁ好感情もないともおっしゃっていましたが。
耕さ……んん…エネオット王子殿下が今のまま、しっかりと話をなされば、お嬢様は無下になさらないと…いえ、少なくとも今暫くの猶予は望めると思われます」
ヨリアンナとネルローネが、ほぅっと肩の力を抜いた。
公爵本人やメナジアには嬉しくないかもしれないが、フィーが優先するのはアンネッタの気持ちで、それ以外は二の次三の次なのだ。
アンネッタがエネオットの隣を、もう一度受け入れるのならそれを尊重するのみ。
「そう。
本当にアンネッタ嬢には頭が上がらないわ…。
これまで、本当にあの子は酷かったもの……見限られても、文句は言えない状況でしたからね」
「えぇ、わたしもアンネッタには本当に申し訳なく思っていたの。
だってあの馬鹿兄をおしつけちゃうんだもの……。
でも、やっとまともになったお兄様に、まだ猶予をくれるというのなら、本当に……もう、どう感謝を伝えれば良いのか…」
なんだか肩の荷が下りたと、安心した二人には申し訳ないが、婚約継続になるかどうかは、それこそ話し合い次第だぞ?……と、内心で零すフィーであった。
まぁ破談になるならなるで、継続なら継続で、フィーは自分が旅立つまでの期間は、最大限の協力は惜しまないつもりだ。
聞けば耕作は、前世日本人だった時、大学では公衆衛生を学んでいたそうだ。
その知識は、ボーカイネン王国にとって、有益過ぎる程に有益だと思われる。
インフラ整備に公衆衛生の知識が加われば、病の蔓延を少しでも軽減できるに違いない。
まぁ、耕作自身は公務員試験に少しでも有利になるように…だったらしいが…。
つくづく、あの根岸 直美には勿体ない弟である。
「兎に角、首の皮一枚でなんとか繋がった…ってところかしらね。
それならエネオットの側近の事も、話し合い以降にした方が良いのかも?」
「わたしもそれに賛成するわ、お母様。
オファーロ公爵子息様は良いとして、デービーもチェポンも、酷過ぎたのよ」
ネルローネのきっぱりとした口調に、ヨリアンナは苦く微笑んだ。
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