02.アベルの告白
リリーヌ視点です(^-^)
「お見合い……ですか?」
「えぇ、そうよ。お相手は、紅の騎士様だわ」
にこやかに微笑むお母様。
紅の騎士様といえば、私の国の英雄。戦う姿は勇ましく、見るものを魅了するという。敵味方に容赦がないその姿は清々しいほどとの噂。
「紅の騎士様……そんな方とのお見合いが務まるのでしょうか」
私には恐れ多い。
そう感じて近づく日々に不安を抱いていた私に、今ならいらない心配よと言えるわと思う。
「アベル様は優しいのですね」
私のこともレディーとして接してくれる。向けられる笑顔にも蔑みや差別など感じられず、暖かい笑顔そのものだ。
「自分が惚れた女性に優しくするのは、普通ではないですか?」
紅茶を啜りながら、こちらを見る紅の瞳。その視線に捕らわれそうになる。ドキドキと胸が高鳴る。
「……」
惚れた女性。それが指し示すのが自分と理解できるまで、数秒かかった。そう思うと、紳士的な態度も好意を寄せてるからというわけで……
「わ、私は……」
お母様に仕立ててもらった淡い黄色のドレスの裾をギュッと握る。座りながら相対しているというものの、突然の告白?に、戸惑いを隠せない。
「私は……漆黒の薔薇です。一人で咲いて散って行く定めなのです。興味本位の言葉ならやめて下さい!!」
緊張と困惑から、捲したてるように喋ってその場を走り去る。
「わ、私……なんてことを…………」
慌てて待たせていた馬車に乗り込んで、自宅へと帰ってきた私は、自室に戻ると項垂れた。相手は一国の騎士だ。それも英雄と言われるほどの。そんな偉い方を相手に、私は、私は……無礼な言葉の数々を。冷静に考えると、私が放った一言一言が鮮明に思い出されて、いたたまれない。
切れ長な瞳を細めて、柔らかく微笑んでくださったアベル様。見つめてくる視線からは嫌悪感なんて微塵も感じなかった。それなのに、私は……
「やっぱり、私には一生恋愛なんて無理なのかもしれない……」
漆黒の薔薇。
関わるとロクな目に遭わない。
それが私なのだから……
あれ?アベルって奥手じゃなかったっけ?あれ?あれれ?となった久遠です 笑 そんなこんなで続きます。