桜の木の下で……(21)
[春美]:「杏花?」
[杏花]:「ごめん。もう、お兄ちゃんと会えないんだって思ったら……」
[春美]:「杏花……」
[杏花]:「短い間だったけど、お兄ちゃんとまたこうして会うことができて、私本当に嬉しかった」
[春美]:「俺もだ。杏花に会えなかったら、俺はずっと暗いままだったよ」
[杏花]:「うん。……私っていう存在がいたことを、忘れないでね?」
[春美]:「忘れるわけないだろう。お前は、ずっと俺の中に生き続けてるよ。会えなくても、心はつながってるから、心配すんな」
[杏花]:「うん」
杏花、ゆっくりと春美から離れる。
[杏花]:「最後に、もう一度だけ言わせて。お兄ちゃんは、絶対に夢を叶えられる。あきらめないで、自分の意志を貫けば、絶対に達成することができる。それだけ、忘れないで? 終わらせる決断ができるなら、続きを選ぶ怖さにも立ち向かえるはずだから」
[春美]:「ああ、絶対に、忘れないよ」
[杏花]:「じゃあ、私はこれで」
[春美]:「向こうでも、俺のこと、見守っていてくれよ」
[杏花]:「えへへ。もちろんだよ。――じゃあ、バイバイ」
杏花、ゆっくりと後ずさり、泣きそうな顔をしながら袖にはける。
[春美]:「杏花……ありがとう。お前のおかげで、大切なことに気付くことができた。今からでも、遅くないんだよな?」
春美、三人に向き直る。
[洋介]:「春美」
[百合]:「春美くん」
[あやめ]:「春美……」
[春美]:「みんな、本当にありがとな。これからも、よろしく頼む」
[洋介]:「ああ、もちろんだ」
[百合]:「当然よ、嫌って言われても着いていくから」
[あやめ]:「うん。杏花ちゃんの代わりとは言えないけど、私たちはずっといるから。これからもずっと、春美の友達だよ」
[春美]:「うん、ありがとう。……?」
春美、足元に何か落ちていることに気付く。春美、それを拾う。
[あやめ]:「春美、それ……」
[春美]:「桜の枝だ。ひょっとして、こいつのかな?」
[洋介]:「……もらっておいてもいいんじゃないか? 大切な思い出として残るだろ」
[春美]:「ああ、そうだな」
春美、桜の木を見上げる。
[春美]:「今まで、ご苦労だったな。お前が俺を見守ってくれてたから、俺はここまで成長できた。本当に感謝してる、ありがとう。――行こうか、みんな」
[洋介]:「ああ」
四人、袖へはける。桜の木だけが残り、ゆっくりと暗転させる。
明転。




