桜の木の下で……(12)
[あやめ]:「はあ、はあ……やっぱりここにいたんだ」
[春美]:「お前、授業はどうしたんだ?」
[あやめ]:「春美と同じだよ。二人にノート頼んできたの」
[春美]:「……心配させちまったみたいだな、すまない」
[あやめ]:「ううん、そんなことないよ。……それより今、誰かとしゃべってたように見えたんだけど」
[春美]:「あ、いや……その……」
[あやめ]:「……ねえ、春美。私でよかったら、本当のこと話してくれないかな?」
[春美]:「あやめ?」
[あやめ]:「私、春美が何か隠してるんじゃないかって、少し前から思ってた。言いづらいことがあったから、適当に誤魔化そうとしてるんじゃないかって。私たちは親友でしょう?
親友は助け合うものじゃない? 少しでもいいから、あなたのために頑張りたいの。だから、本当のこと、私に教えてくれないかな?」
[春美]:「……ありがとう、あやめ。俺は、良い友人を持ったと思うよ」
[あやめ]:「え、ええ? そんな、私はただ……」
[春美]:「じゃあ、聞いてもらえるか?」
[あやめ]:「もちろん」
[春美]:「――実は一ヶ月程前からこの公園に亡くなったいとこの杏花が来てるんだ」
[あやめ]:「え? いとこ?」
[春美]:「ああ、病気で亡くなった俺のいとこ。俺には姿が見えてるけど、他の人には見えてないみたいなんだ」
[あやめ]:「そっか。だから話し声だけが聞こえてたのね」
[春美]:「ああ。俺は最初会った時、『いとこの杏花』であることを思い出せなかったのにアイツは、それでも俺のことを心配してくれて、わざと自分が幽霊であることをネタにして笑わせてくれようとしてくれた」
[あやめ]:「春美のことが、心配だったのかな?」
[春美]:「そうかもしれない。俺と杏花の現実での最後は、とっても苦々しいものだったから。それでも杏花は、忘れていた俺の夢を思い出させてくれるために戻ってきてくれた。だから俺は、その恩返しとして杏花と共に過ごしたこの桜の木を守りたいんだ」
あやめ、うんうんとうなずいて。
[あやめ]:「なるほど、事情は分かったよ」
[春美]:「あんまり、驚かないんだな」
[あやめ]:「うん。最初はびっくりしたけど、話を聞いていくうちに、本当の話だってことが伝わってきたから。というより、春美がそんな作りこんだ嘘を話せるはずがないし」
[春美]:「何て反応すればいいのか分からないんだが……」
[あやめ]:「あ、ごめんなさい。とにかく、春美の話は全部信じる。安心して」
[春美]:「ああ、サンキュー」
[あやめ]:「とにかく、その杏花ちゃんのために、春美はこの桜の木を何とかしたいんだね?」
[春美]:「ああ。あいつのために、この木を守って、桜の花を咲かせたい」
[あやめ]:「この話は、洋介と百合にも伝えたほうがいいんじゃないかな? 多分、協力してくれると思うよ」
[春美]:「そうだな。人手は多い方が助かる」
[あやめ]:「とりあえず、触りだけでもいいから、どう動けばいいのか計画を立ててみよう。あまりゆっくりしてる暇はないだろうし、早く解決できればできるほど、杏花ちゃんも喜ぶでしょ」
[春美]:「ああ、そうだな」
[あやめ]:「頑張ってみよう」
[春美]:「おう」




