桜の木の下で……(6)
[場所:公園、桜の木の下]
明転
春美、走りながら登場。
[春美]:「おい、杏花。いるんだろ? 杏花」
[杏花]:「はーい」
杏花、反対側から登場。
[杏花]:「どうしたの?お兄ちゃん。というか、名前を呼ばれるのはすごい珍しい気がするな~」
[春美]:「お前に、聞きたいことがある。はぁ、はぁ……」
春美、膝に手を置きながら。
[杏花]:「あれ? 走ってきたの? それに何だか焦ってるような……」
[春美]:「はぁ、はぁ」
春美、立ち上がる。
[春美]:「単刀直入に言う。お前は、この桜の木が切られることを知ってるか?」
[杏花]:「うわ、本当に単刀直入だね……」
[春美]:「どっちなんだ? 知ってるのか? 知らなかったのか?」
[杏花]:「……もちろん、随分前からそのことに関しては知ってたよ」
[春美]:「……どうして、俺にすぐに教えなかったんだ?」
[杏花]:「だって、わざわざ暗くなっちゃうような話題を出すのは嫌だったから。それに、ひょっとしたら嘘って可能性もあったでしょう?」
[春美]:「嘘じゃない。今日の新聞に、そのことが書いてあったんだ。これより前に分かってたのなら、少しだけでも教えてくれたってよかったじゃないか?」
[杏花]:「う……ごめんなさい」
[春美]:「もしかして……お前が幽霊としてここに現れた理由も、それに関係してるんじゃないのか?」
[杏花]:「うーん、半分合ってるけど、半分合ってないかな。確かに関係してないって言ったら嘘になるけど、私が現れた目的はそっちじゃないんだ」
[春美]:「……どういうことだ?」
[杏花]:「……お兄ちゃんも、大分私に親しくなってくれたみたいだし、そろそろ教えてもいいかな」
[春美]:「?」
[杏花]:「――私たち、初対面じゃないんだよ」
[春美]:「初対面じゃない?」
[杏花]:「うん。結構、近しい関係を持ってたんだ。その思い出が詰まった場所が、この桜の木なの」
[春美]:「…………」
春美、杏花の後ろ姿をじっと見つめる。




