桜の木の下で……(5)
[洋介]:「――やっぱり、ああいう風になっちまうよな。序盤の話で楽しくしてから話せば、多少落ち込み度を減らせると思ったんだけど」
[百合]:「まあこればっかりはしょうがないわよね。市のほうだって本当はこんなことしたくないでしょう。不満の声も上がっているって意見も、たくさんあるみたいだしね」
[洋介]:「苦渋の決断ってやつかね」
[あやめ]:「春美が言ってたけど、何とかならないのかな? いつも春美の寮の窓から見てるけど、普通の桜の木よりも、すごい太い幹をしてるよね? あの桜の木」
[百合]:「ええ、多分3メートル以上はあるでしょうね? 咲いたらそれはもう綺麗な光景でしょ」
[洋介]:「でも、それが見れないってなると、あの公園の魅力は半減しちまうわけだからな。その記事に書いてあったけど、あの公園には桜の木はあれ一本だけらしいから、あの桜の木の事情を知ってしまってる人は、ほとんど来ることなくなって、今じゃああの公園は常に閑散としてるらしいぜ。だからこそ、春美はあそこに居心地の良さを感じてたんだろ。」
[あやめ]:「それ以前に、春美は子供の頃からずっとここで育ってきたんだよね? 言うなら、あの公園と桜の木と、常に一緒に育ってきたようなもの。……結構、ショック受けてるよ、きっと」
[洋介]:「かもな。にしても、会ってみたい人って一体誰のことなんだ?」
[百合]:「――以前、言ってた桜の木のところでしゃべってた人じゃない?」
[洋介]:「なるほど、それはあるかもしれないな。その子もあの桜の木を好きなのかもしれないし、そうだとしたら、何か情報をくれるかもしれないしな」
[あやめ]:「私たちも、何かできないのかな?」
[洋介]:「力になってやりたいけど、そもそもどうすればいいのかが分からないからな」
[百合]:「そうなのよね、難しいところよね」
[あやめ]:「…………二人とも、私もこの後の授業、休んでもいいかな?」
[百合]:「え? あやめも?」
[あやめ]:「うん。ちょっと、春美にさっきのこと聞いてみる。何か手伝えるのであれば、力を貸してやりたいし」
[洋介]:「そうか。いいぜ、ノートなら任せてくれ」
[百合]:「ええ。普段二人に頼りっきりな分、こういう時くらいは恩返ししないと」
[あやめ]:「ありがとう。じゃあ、ちょっと春美を探してみる。というか、あの場所にいるんだと思うけど」
[百合]:「ええ、頑張って~」
あやめ、小走りで退場。
[百合]:「いいわね~、ああいうの」
[洋介]:「ああいうのが、お前は好きなのか?」
[百合]:「何ていうか、一途じゃない? あの子。見てると応援してあげたくなるのよね~」
[洋介]:「まあ分からなくもないがな。俺たちのほうでも、さっきのことに関して情報収集してみるか?」
[百合]:「そうね。気付かれなければ、携帯で調べてみるのもいいわよね? もちろん、ノート取りながらだけど」
[洋介]:「今日の午後の授業は、寝て過ごすわけにはいかなそうだな」
暗転




