春美と杏花(9)
[杏花]:「失礼しまーす」
[春美]:「はあ、夜なのにこんなに汗かくとは……」
[杏花]:「良い運動になったでしょう?」
[春美]:「別に良い運動したいとは思ってなかったよ」
杏花、春美の方に目線をやるが、すぐに戻す。数秒した後、杏花がしゃべる。
[杏花]:「ねぇねぇ、お兄ちゃんは何か夢とかないの?」
[春美]:「夢?」
[杏花]:「うん、夢。アメリカンドリーム」
[春美]:「それだと意味合い全然違ってくるぞ」
[杏花]:「アメリカンいらないね。夢、夢」
[春美]:「どうして急にそんなこと聞くんだよ?」
[杏花]:「別に、理由なんかねぇよ。ただ、何となくだ」(杏花、声マネをしながら)
[春美]:「真似をするな」
[杏花]:「えへへ、似てなかった?」
[春美]:「似てない、0点だ」
[杏花]:「うわ、激辛採点だね」
[春美]:「というか、話が行ったり来たりしすぎだ。結局お前は何が聞きたいんだよ」
[杏花]:「あ、そうだった。えへへ、お兄ちゃんの夢のことが聞きたいな」
[春美]:「夢、か……」
[杏花]:「何かないの? 社会人とか、フリーターとか」
[春美]:「そんなの夢じゃねぇよ。……そうだな、今はないかな」
[杏花]:「今は、ない?」
[春美]:「ああ。特になりたいと思うものはない」
[杏花]:「ええー、そうなんだ。でも、今ってことは、昔は夢があったってこと?」
[春美]:「そう、だったかな」
[杏花]:「聞きたいな~。教えてくれない?」
[春美]:「…………」
春美、少し苦しそうな表情をする。




