女神ハルモニアのお仕事。その2
『私が把握している限りで女神ハルモニアが今までに討伐したデーモンロードはアグレアス、ウァプラ、ヴエルの3体です』
・・・・おー?どれも「公爵や総帥」クラスの大悪魔達ですねー。
一応、参考資料によってはヴリトラ君も彼らと同列に挙げられる事もありますね。
でもヴリトラ君は華麗に彼らを裏切りましたから別に仲間とかでは無いのでしょう。
『は?』
おそらく未だかつて無いほどの間抜けな声を上げるゼウス。
『討伐どころかアグレアスなんて木っ端微塵になってましたよぉ~』
『木っ端微塵?!デーモンロードをか?!』
高い防御能力を有するデーモンロードは物理的に倒すのが難しく討伐には封印する手法が多く用いられます。
そんなデーモンロードを女神ハルモニアは最も簡単に爆砕してしまったんですね。
『他の討伐数は上位悪魔は約200体、中位悪魔は約1000体、死霊や下位悪魔は・・・もう数が多すぎて正確には分かりません。軽く地獄の一個軍団を滅ぼしてますね』
地獄の一個軍団で小規模な惑星の文明など簡単に滅ぼす事が可能とされています。
ちなみに地獄の軍団は666軍団ある(諸説あり)と言われています。
一軍団が12000名として推定される地獄の全軍の総員数は800万程度、八百万の神と同数なのが面白いですね。
ちなみに八百万の神と言うのは「八=多い」「百万=無数」のたとえで「数えきれないほど多い」という意味でもありリアルな数字として800万の神が存在すると言う訳ではありません。
これは日々、宇宙の拡大と共に神や悪魔の数も増え続けていると言う意味でもあります。なのでどちらかの陣営が完全な勝利をする日は来ないと言われてますね。
『まてまてまて!アテネよ!どう言うこったい?!
幾らなんでも信用出来んヨタ話だ!なぜハルモニアに地獄の軍団を滅ぼせる?!』
『だーかーらー。お父さんが雷霆なんて強力な武具をハルちゃんにあげるからハルちゃんが「軍神に覚醒しちゃった」のよ?
元々の素質にプラスして雷霆の神力が底上げされてハルちゃんはめちゃくちゃ強くなったのね。
私は前にお父さんに言ったよね?「ハルちゃんに戦わせちゃダメ」って』
『それは確かに聞いたが、それは「か弱いハルモニアの身が危ないから」戦わせたらダメだと解釈するのが普通じゃね?!
だから護身の意味も含めて雷霆をハルモニアに貸したんじゃが?!』
『だーかーらー。そうじゃなくて。「下手に刺激するとハルちゃんの内に眠る軍神が目覚めるから戦わせたらダメ」って言ったの。
それを知ってるヘスティア叔母さんもハルちゃんを戦いから遠ざけるために教育実習の時は内勤ばっかりやらせてたでしょ?』
『そうなのか?!我の娘と妹は何で1番大事な説明を省くのかな?!』
『・・・普通・・・私達が気が付いている事を最高神のお父さんが気が付いてないって思わないでしょ?』
『ぐぬぅ!』
えーと?つまり、女神ヘスティアや女神アテネは女神ハルモニアの中に軍神が眠っている事に気が付いていて・・・それをゼウス神に忠告したんだけど、その忠告をゼウス神が変な勘違いしてしまい一番やっちゃいけない事だったと思われる強力な武具を女神ハルモニアに渡してしまい案の定、女神ハルモニアは軍神に目覚めちゃった・・・って事かな?
よっしゃあ!少なくとも今回の件でわたくしには責任は無い!悪いのは旦那だ!
軍神アレスの子供なんだからその可能性は考慮するべきだったよね!うんうん。
『私だってお父さんが雷霆をハルちゃんに渡すなんて予想外もいい所ですよ?
それに護身の為にってハルちゃんが魔法世界に赴任する時に私も「イージス」の複製を渡したから二つの神器が相互に作用したのも原因だと思います。
ちなみに、私のイージスの方は雷霆に吸収されて「ニュー雷霆」になってます』
『・・・・・・・ニュー雷霆・・・・』
あ~なるほど~。
何で女神ハルモニアが属性違いの爆炎攻撃を使えるのか理由が判明しましたよ。
あの爆炎攻撃はアテネちゃんの「太陽」の属性の力だったんだね。
えーと?つまり。女神ハルモニアは自分の光の他にゼウスの雷とアテネの太陽の属性を使える多属性な神様になったのね。
・・・・・・・凄えなハルモニアちゃん!
『それから。ニュー雷霆はハルちゃんの魂と融合しましたからもう切り離す事は出来ません』
『神器って神の魂と融合すんのか?!そんな話は我も初めて聞いたが?
雷霆の奴など融合どころか戦闘時以外は随分と我をウザがっておったが・・・』
『普通なら神と神器は融合なんてしませんが・・・しちゃったモンは仕方ないですね』
『ち・・・チート少女・・・・・・・メーティスはこの事を知っておったのか?』
わたくしが何でもかんでも知ってると思わんといて下さいな。
多分、ニュー雷霆は前から漢臭いのが嫌だったんじゃないですか?知らんですけど。
『そうね。お父さんって特に漢臭いもんね』
『臭い臭いってお前ら酷えな!お父さん泣くぞ?!風呂にはちゃんと入ってるぞ!』
んー?臭いってのも漢らしくて良いんじゃないですか?知らんですけど。
『使者の前で内輪揉めしないで下さいよぉ~。それよりハルモニア様を何とかして下さいよぉ~』
天使という者達は基本的に慈愛博愛を大切にする優しい生き物なのである。
哀れな悪魔の為にも破壊神を野放しには出来ないのだ。
『あー。それは大丈夫ですよ』
女神アテネが天使族からの使者のサキエルに対してニコリと笑う。
そして『女神ハルモニアはまだまだ本気じゃありませんから大丈夫です』と・・・更に絶望的な恐ろしい事実を告げる。
『?!?!?!?!・・・・・・・・・・あれで本気でないとかマジですかぁ?』
『マジなんです』
『アテネよ・・・お前らは彼の魔法世界を助けたいのか?それとも滅ぼしたいのか?』
この辺りからゼウスもやっと「あれ?ハルモニアってかなりヤバくね?」と感じる様になって来たのだ。
『女神ハルモニアは「アレスお兄様よりは間違いなく強い」ですけど大丈夫です。安心して下さい』
『ええーー?往年の軍神より強いとか安心出来る要素が皆無なんですけどぉ?!』
『娘よ!今の一言で我も不安でいっぱいなんだが?!え?なに?ハルモニアって父親のアレスより強いの?』
『私の体感的にそうですね。
まあ・・・かく言う私もアレス兄ちゃんより強いんですけどね。
今のところ模擬戦と言ってもアレス兄ちゃんには約300戦全勝しています』
兄貴を一方的に負かしてめっちゃドヤ顔の女神アテネ。
『え?なに?我の知らん所でお前らってそんなに兄弟喧嘩してたの?』
『だってアレス兄ちゃんが楽しそうに「アテネ!今日も兄ちゃんと勝負しようぜ!」って突っかかって来るんですもの仕方ないですね。
まあ、兄ちゃんも「極界」の神技を使ってませんからお遊びの域は出てませんけど」
確かにギリシャ神話においても軍神アレスは妹の軍神アテネにボコられてますね・・・これはハルモニアの件も含めて親族会議確定事案ですな。
『なんかアテネ様とハルモニア様だけで魔法世界が滅ぶ気がして来ましたぁ~』
『いえ?私や女神ハルモニアは単純に強いだけで別に破壊神とかじゃありませんから?私だって目の前で動く敵が「全て滅べば」暴れるのを止めます』
『それを「破壊神」と言うのではないですかぁ?』
『逆に言えば、お前らは動く敵が居る限り暴れ続けると言う事か?それってまんま破壊神じゃね?ちなみにお前とハルモニア・・・どっちが強いのだ?』
『うーん?多分・・・単純なパワーなら私じゃないですかね?
戦った事ないので知りませんけど?気になるなら今度ハルちゃんと模擬戦でもやってみますか?』
『せんでいいわ!!!!と言うか絶対に面倒臭くなるから止めて下さいお願いします!』
オリュンポス神族の新世代のヤバさに戦慄するゼウスだったのだ。
確かにアテネVSハルモニアなんて模擬戦なんかやったら絶対にどちらかが謎覚醒しそうですよね。
一応の応急処置としてゼウス神から直接、女神ハルモニアに対して「少しは自重しなさい」との厳重注意が内密に入りました。
「内密での厳重注意とかそれ役に立つん?」と思われるかも知れませんが女神ハルモニアはアホが付くレベルで真面目なので直ぐに注意された通りに自重しましたよ。
聞き分けの良い良い子なのは良い子なんだよな~。
それにより悪魔達には刹那の安息が訪れたのだった・・・でもあくまで「禁止」ではなく「自重」なので明日討伐再開しても全然不思議じゃないですけど。
『なんか最近、私の事を「破壊神」とか言う人達が居るんですよ!失礼です!』
覚醒魔王マクシムが用意してくれた夕食の闇料理を女神ディオーネと一緒に食べながらプリプリと怒っている女神ハルモニア。
『そうね・・・乙女に対して破壊神はさすがに失礼ね』
とりあえずハルモニアが怖いので話を合わせる女神ディオーネ。
「ははははは!ハルモニア様もそう怒らんと2人ともドンドンおあがり!まだまだあるぞ!」
大気圏外にも普通に現れるマクシム君・・・
『そ・・・そうね。あら?これも美味しい闇ね』
『そうですね!とても美味しいです!』
どっちかと言うと直接的な荒事が苦手な女神ディオーネは破壊神ハルモニアによって毎日繰り広げられる惨劇を見て見ぬふりをしている。
でも内心では「破壊神そのまんまじゃん?」とか思っているがハルモニアが怒ると怖いから黙っているのだ。
ただ・・・女神ディオーネも一応は天界を代表する高位神の1人、また女神の大先輩としては注意は必要だろうと、『ハルモニアの調和って・・・もしかしたら実力行使が前提なの?』と、遠回しに苦言を呈する。
『使える手は全て使うって感じです。それに強くなるのは単純に楽しいです!』
『そう・・・やっぱり戦いを楽しんでるのね?そういう所はアレス君に似ちゃったのね』
『えへへへへへ』
『全然褒めてませんからね?ゼウスじゃないですけど少しは自重なさい』
『あーい』
『この子、本当に分かっているのかしら・・・』
素直で良い子なのは間違いないんだが・・・いまいちハルモニアの性格が掴みきれないディオーネ。
「はははははは!ハルモニア様は俺の特製闇料理でますますパワーアップしているからな!」
『やっぱり元凶の一つはアンタかぁーーーーー!!!』
よく食う子、よく寝る子は育つ・・・ってやつですね。
寝ると言えば確かにハルモニアって神にしては珍しく毎日ちゃんとまとまった睡眠を取りますね。これはマジで珍しいです。
ちなみに学者肌の血筋の「オーケアニデス」の特性で、わたくしやディオーネお姉様はまとまった睡眠は必要ないので取りません。
正確には超短周期のショートスリーパーで1分間で1秒を5回ほどの睡眠を無意識に断続的に取ってるのです。
これで24時間、365日、1万年間以上も眠らずに連続して活動し続けられるのです。
結構これ強力な氏族特性ですよね。研究者において不眠は最強の特性です。
余談の余談になりますが古代の人間も1日の中で短時間で複数回の睡眠を取る生き物だったらしいです。
古代人の時代は現在の様に夜にガッツリと睡眠時間が取れる様な安全な環境ではなかったからだと言われています。
『ふわ~・・・ご飯も食べた事ですし明日に備えて寝ます』
食べたら眠くなる体質のハルモニア。
『はい、おやすみなさい』
『あい』
甘えん坊なハルモニアは流れる動作でディオーネの膝に頭を乗せあっという間にスースーと寝息を立てる。
妹が異様に多いディオーネも慣れたものでハルモニアの頭を撫でて深い眠りに誘う。
あー。いーなー。わたくしも癒やしの女神でもあるディオーネお姉様の膝枕で寝て癒されたい。
『その前に貴女は早く刑期を終えなさい』
あい。すみません。
こうして女神ハルモニアの1日が終わりました。
いや~女神ハルモニアって想像していたよりエグい日々を送ってましたね。
そして次の日。
『バルドルは私を破壊神だと思いますか?』
「朝っぱらからいきなりなんじゃ?お主が破壊神とな?」
寝起きの顔洗い歯磨きの最中に女神ハルモニアからの襲撃を受ける魔王バルドル。
やっぱり不特定多数から破壊神、破壊神と言われるのをハルモニアも気にしているのか朝起きてすぐに魔王バルドルに相談する事にした様子。
『私を破壊神と呼ぶ人達が居るんですよ』
「ふむ・・・儂が思うにそれは定義の問題ではないのか?」
『定義ですか?』
「嘘偽りない本音を言うとお主の一見すると無差別な破壊行動とも思われる戦闘も我々真魔族にとっては大いなる救いになっておる。
お主が来てから真魔族での戦死者はゼロなのじゃ。
お主の名前さえ教えてくれれば一族を上げてお主を救いの神として崇拝したいくらいなのじゃ」
『名前を名乗るのはまだダメと上司から言われているんですよね』
ハルモニアが来るまでは魔法世界での悪魔との戦いの最前線はヴァンパイア、つまり真魔族と天使族が担っていた。
それがハルモニアが最前線で悪魔と戦う様になり負担がかなり減ったのだ。
「なので儂や一族の者はお主を破壊神などとは思っておらぬ。
しかし見る者の立場が変われば破壊神に見えるのかも知れんな。
まあ要するに評価など人それぞれで大きく変わるので他者の評価を必要以上に気にする事はなかろう」
魔王バルドルから「気にすんな」と言われたものの気になるものは気になるので今度は龍達に聞いて見る事にしたハルモニア。
『アメリアちゃんは私を破壊神だと思いますか?』
「「破壊神ですか?何でお仕事を頑張っているハルモニアちゃんが破壊神になるんです?」」
心底不思議そうに首を傾げる海龍王アメリア。
かくかくしかじかと今までの経緯をハルモニアが説明をすると・・・
「「文句があるなら自分達でやれよと思います」」と、ど正論で返すアメリア。
「「天使達が言うのは慈悲ではなく勝手な自己肯定感なんじゃないですか?
何千年もかけて自分達で達成出来なかった事をハルモニアちゃんが簡単にやってしまうから怖い存在に見えるのでは?
要するに天使達は自分のプライドが傷ついたんですよ。
アホらしいから相手にしなくても良いと思いますよ?悔しかったら自分達も少しは努力しろよって思いますね」」
『私はそこまで怒ってませんよ?』
可愛い顔をして三龍王の中では性格的に1番情け容赦がないのがアメリアなのだ。
サキエルの抗議を自分の上司を貶されたと感じたのか、なかなかボロカスに天使を貶して来るねー。
一応解説しておくと龍種と天使の根っこは同じで対等な関係である。
天界におけるアメリアの地位を天使に例えると「第一階、座天使」となる。
「第一階、智天使」であるサキエルとは部署が違うだけで同格の存在になるので遠慮がないんですね。
自分以上に怒っているアメリアを見て頭が冷えたハルモニア。
勢い任せに少しやり過ぎた自覚はあるのでやり方を変えようと考える。
『どうすれば良いですかね?』
「儂が考えなければならんのか?!」
今度は国会の補正予算案の審議中にハルモニアの襲撃を受ける魔王バルドル。
突如として大声を出したものだから国会に参加している300名近くの視線が一斉に魔王へ向く。
「魔王バルドル、お静かに。総務大臣、続きをどうぞ」
「はい。すみません」
国会審議中に大声を出して議長に怒られる魔王。気の毒である。
「すまぬがマジで夜まで待ってくれ・・・」ヒソヒソヒソヒソ
『あい』
しかし魔王も、えらい神様に懐かれてしまったものである。
自分の国の運営を行うと同時に世界の秩序を保つ大憲章の作製までやるハメとなったのだった・・・
ちなみに、他の龍達はどう考えているのか?と言うと・・・
「「ここに来ても我々の出番ってないよな?」」
「「そりゃ俺達って「ハルモニア様が危機に陥った時のみ実力行使が可能」だからな?」」
「「ハルモニア様が危機に陥る光景って想像出来ないんだよな~」」
龍達が動く前にハルモニアが全部やってしまうので暇で仕方ない龍達なのだ。
そもそも魔法世界に龍達は必要なのか?とも疑問になって来ている。
まあ、これから龍達は忙しくなるんですけどね。




