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女神ハルモニアと世界の言葉。その5

上手く話数が切れずに長くなりました。

女神アテネに怒られてようやく女神ハルモニアは大霊樹ユグドラシルの元を訪れる。


中央大陸の中央部(中央大陸と言っても世界地図的には赤道直下ではなく北部地域となり山岳地帯はかなりの降雪もある)のピアツェンツア山脈の森林地域にユグドラシルは存在していた。


分かり易く立地状態を解説すると「特段深い森とも言えず高い山でもなく行こうと思えば女性でも簡単に行ける場所」だと言える。


そしてこの地域は「ウッドエルフ族」が支配している地域である。

脅威となる強い魔物も少なくユグドラシルの加護の下、彼らはのんびり平和に暮らしている。


そんな彼らが神樹と崇める大霊樹ユグドラシルに一筋の清らかな光が差し込む。

調和の女神ハルモニアの降臨である。


・・・・・・・・・・・・・・やろうと思えば女神らしく出来んじゃん!


『いちいちうるさいですよメーティス先生!・・・・・・コホン・・・失礼しました。


ユグドラシルさんはじめまして。

この度、天界より「応援」に来ましたオリュンポス12神、軍神アレスと美の女神アフロディーテの子、調和の女神ハルモニアです。


一度、ユグドラシルさんとこの世界についてご相談したく参りました』


「魔法世界は私が貰う!」とか大言壮語を吐いたハルモニアだが、やっぱり世界の管理はユグドラシルが行い自分はサポート役に徹したいのであえて「応援」に来たとユグドラシルに伝える往生際の悪いハルモニア。


《うふふふ。いらっしゃいませハルモニアちゃん。ようやく会えましたね。

貴女のお話しはフレイヤちゃんから聞いてますよ》


『フレイヤ様からですか?』


あれ?アテネ様でなくフレイヤ様から?と首を傾げるハルモニア。

聞けば女神アテネと女神フレイヤは古くからの友達でハルモニアの事を女神アテネが話してたとの事。

今日はユグドラシルと正式な会談なのでハルモニアも礼儀正しくちゃんと人型形態をとって純白の神衣の正装をしています。銀髪ポニーテールが可愛いねー。


《はい。ヌンちゃん以来の1000万年ぶりに調和の女神が産まれたと聞きました。

それにヌンちゃんもハルモニアちゃんが大好きだと楽しそうに話してましたよ》


『あれ?ユグドラシルさんはヌン様とお知り合いなのですか?』

ヌンとはハルモニアが魔法世界に赴いた時にハルモニアに髪の毛クンクンのソフトセクハラをした原初神の一柱である。

まあ、性において変態だらけの神話の中ではこの程度はセクハラにもなってないんですけどね。



☆現在の倫理観そのままで心の準備なしにギリシャ神話を読んだらドン引きしますよ。

原文そのままネットにアップしようものならR-18規制待った無しです。

具体的にどこが?との質問に関してはこちらでの解答を控えさせて頂きます。

一言で言いますとほとんど「全部」です。

真なるダークファンタジーとは古今東西の神話の原文にこそありです。

世界的にこれだけ有名なのに不思議とギリシャ神話の内容が一般的に普及していない理由が分かります。こんなん子供や孫には読ませらんわ!



《はい。これでもわたくしは「始まりのユグドラシル」ですからね。

ヌンちゃんとは同じくらいの時代に産まれて以来仲良くさせていただいてます》


「?!?!?!?!?!始まりのユグドラシル?!」


始まりのユグドラシルは大混沌時代の終わりと同時に誕生したと言われる創世の世界樹である。

そして現在、宇宙に存在している大霊樹ユグドラシル達は全て始まりのユグドラシルの種から産まれたとされている。


いや・・・わたくしもなんで始まりのユグドラシルがこんな所にいるの?と疑問です。と言うか現在まで生きていた事に驚きです。

思いもしてなかった事実にハルモニアもかなり動揺しているが冷静に役目を務める。


『でも始まりのユグドラシルは「その役目を終えた」と天界の方々から聞かされましたが?』


《はい。わたくしももうかなりの歳なので大分前にユグドラシル稼業は引退していたんですけど消えゆく最後に魔法世界に根付いて欲しいとフレイヤちゃんから頼まれまして》


『ユグドラシルってお仕事だったんですね・・・』


女神アテネからの情報だと魔法世界のユグドラシルはどこからか飛んで来た種が芽吹いて新しく生まれたユグドラシルだと聞かされていたが話しに大分と齟齬がある様子。

実際には古きユグドラシルどころか始まりのユグドラシルだった。

神に対して自分の素性を偽る理由が皆無なので言ってる事は本当の事なのだろう。


更に詳しく聞けば300万年まど前に大霊樹を引退してからはヴァルハラの奥地の密林でひっそりと穏やかに隠遁生活を送っていたとの事。

そこに女神フレイヤが現れ前述の事を頼みこまれてヴァルハラから出て来たとの事。


《だからもうわたくしには創世の力などほとんど残されていないのです。

うふふふ。出涸らしのお婆さんですね》


『だからユグドラシルさんは異世界から積極的に移民を募っているんですか?』


一連の話しを聞いたハルモニアの率直な感想は「フレイヤ様はお年寄りになにさせてんの?!」である。


《いいえそれは違いますね。

移民に関してですが・・・何と言いますか・・・・気がつけば・・・と言うのが正解です。

わたくしは誰かに頼まれると断れないタチでして。

皆の願いを聞いて世界に受け入れていたらいつの間にか世界にはたくさんの種類の子供達が増えていましたね》


『そ・・・そうですね。移民政策には気をつけるべきですね』


「貴女がちゃんと世界を管理をしないから混沌が発生したんですよ」と一言小言を言うつもりだったのだが、ユグドラシルが「世界を管理出来る霊力が完全に尽きつつあり滅びの刻が近い」のはハルモニアに目にも明らかだった。

おそらくもう2万年後には存在を維持出来ていないだろう。

とてもお婆ちゃんを責める気にはなれなかったハルモニアである。


《フレイヤちゃんはこの魔法世界を発展させるよりも「行き場の無い者達の避難場所」にしたいのだと思います。

他の世界は移民には厳しい世界が多いですからね。

でも宇宙に一つくらいはそう言う「こちらから発展を促さない世界」があっても罪はないと考えたんですね》


『なるほど・・・』


言葉しては分かるがこれからの未来の方が圧倒的に長い若いハルモニアにして見ればユグドラシルとフレイヤの考えてる事は正直「意味が分からない」のだ。

若いハルモニアは世界の発展が止まるとその世界に未来はないと考えているからだ。


それにどう考えても目の前のユグドラシルは「ただの神々の生贄」である。

古き友に頼まれたとは言えど発展を最初から放棄した世界に根付く・・・ハルモニアからして見ればこのユグドラシルは「死にゆく世界を任された老婆」に見えるのだ。


そんな考えが顔に出ていたのか・・・


《うふふふ。ハルモニアちゃんは本当に可愛くて若くてたくさんの未来がありますね。

おそらくハルモニアちゃんが今考えている事こそが宇宙の真理で正解なのです。

ですが歩みを止める老いた者がいるからこそ、これから歩み続ける事が出来る若者がいるのです》


『正直・・・よく分かりません』


《今は分からなくても良いのです。消えゆくわたくしの言葉は今のハルモニアちゃんには害悪でしかありませんからね。

今は自分の信じる道を歩む事がハルモニアちゃんに必要なのです。

あっそうでした。

わたくしはこれからハルモニアちゃんのやる事を止めませんし批判もしません。

現世から消えるその時までハルモニアちゃんのお手伝いをさせていただきます》


『・・・ありがとうございます。今日は仕事があって帰りますが近い内にまた来ますね』


《はい。わたくしはこの場から動く事はありませんのでいつでもここでお待ちします》


こんな感じにユグドラシルとのファーストコンタクトは僅か10数分で終わってしまった。


ユグドラシルの話しを聞く内に何かよく分からない「うがーー」とした得体の知れない感情がハルモニアの心の底から湧き出してなんとなくこの場に居たくなかったからだ。

会談に赴いたもののユグドラシルの話しは何一つピンと来なかったハルモニア。

何かとても釈然としないのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




『と言う事だったのですがバルドルはどう思います?』


「仕事中で他の事に頭が回らん時にいきなり難しい話しをブチ込んで来ないで貰えるかのう?!なんじゃその哲学は?

・・・おかげで一瞬の内に仕事への集中力が切れてしもうたわい・・・お主の言葉は文字通りの「世界の言葉」なのだからな?もう少し自重してくれい」


ため息を吐きつつ持っていたペンをペン差しに入れる魔王バルドル。


魔王バルドルと自分は大体同い年と言う事が判明してから最近の相談相手(主に愚痴)はもっぱら魔王バルドルになっているハルモニア。

いつもバルドルの都合も聞かずにいきなり頭に話し掛けて来るのだ。


『いえ・・・世界の主が発展を放棄している世界に住むバルドルは世界の発展についてどう思っているか気になって』


「はぁああああ・・・分かった。少し考えるから暫く待て。

そう簡単に答えが出る話しではないからな?少し考える時間をくれ」


書類仕事を中断してユグドラシルの言葉の意味を自分なりに考え始める付き合いの良い魔王。


おおよそ30分熟考してから・・・


「・・・おそらくユグドラシルは世界の発展を放棄したのではなく「世界の発展を住む者達に任せた」のではないか?」と、バルドルなりの結論を出す。


『と言うと?』


「つまりじゃな?仮にユグドラシルが世界の発展を最初から諦めていようがこの世界に住む儂は世界の発展を放棄する事など絶対にせん。

だから儂の他の誰が発展を放棄しようとも儂にして見れば意味のない行為なのじゃ。

ハッキリと言えば神であるお主や創世の霊樹のユグドラシルが世界についてどう考えるなど儂にとっては正直どうでも良い。

他者に何を言われ様とも儂が考えるのは仲間と家族が住む真魔族の繁栄のみじゃからな」


『世界を管理している存在(神)の考えなのにどうでも良いんですか?

それはバルドルも力が有る「亜神」だから言える事なのでは?」


まあ、魔王バルドルの考えは実に神らしい「傲慢」にも思えるね。


「それについては否定出来ぬな。

しかし何度も言うがあくまで儂は儂であってユグドラシルやお主ではないからな。

そして儂は納得の出来ぬ事に右習いなどは出来ん。


自分の事も満足に出来とらんのに他者の考えなど気にした所でどうにもなるまい?

そしてそれはお主にも言える事ではないのか?ユグドラシルに世界の発展を諦めろと言われたから自分の勤めを諦め辞めるのか?」


『それはないですね。私は私のやれる事をやるのみです』


「ならばもう答えは出とるではないか。ユグドラシルの狙いとはまさにそれじゃろうて。


要するに「自分の道は自分で切り開け。全てのツケは消えゆく自分が持つ、悪しきもの全てを抱えて自分は消えよう」と言いたいのじゃ。

おそらくお主は魔法世界で発生している「混沌」を収める為にこの魔法世界に派遣された「いずれかの神族に属する神」なのであろう?

ならばユグドラシルが今ある混沌を抱えて消える事も許容せねばなるまい。

それこそが「神」と言うものだからな」


『うう・・・今度はバルドルが言ってる事があんまり分からない』


「当然じゃ儂の考えなど他者に分かる訳があるまい。単に儂が今そう思っただけだからな。


皆が自分とは違う者達の全ての考えを理解出来れば混沌などは発生せんからな。

そう言った何もかもが、ごちゃ混ぜ状態になった現象が正しく混沌だからな。


儂やお主の役目は、そのごちゃ混ぜ状態なのをそれぞれが己自身で一つ一つ解して安定させて行く事じゃ。

今まで通り総括的な管理はユグドラシルに任せて儂らは「ユグドラシルが滅びる来たる刻」に備えて自分に出来る事をやるしかあるまい?」


『分かった様な・・・分からない様な・・・ところでバルドルは私に協力してくれます?』


「お主の名前さえ聞かせてくれれば儂もお主に全面的に協力するのだがのう」


『だから諸事情があって言えないって言ってるじゃないですかぁ』


「まあ出来る範囲で協力はするから安心せい」


『約束ですよ?』




・・・・・こんな感じにユグドラシル、ハルモニア、バルドルの考えや思想を聞きましたが・・・正直に言って自分勝手、傲慢の権化のわたくしには何が正解なんて分かりませんわ。おほほほほ。

ただハルモニアは「あっ・・・これは自分がなんとかせんとかなりマズイ事になる」と言う事だけはなんとなく理解しました。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






『と言う事なんですけどアテネ様はどう思いますか?』


《いきなりですねぇ~》


いまいちバルドルの主張がピンと来なかったので今度は女神アテネに相談する事にしたハルモニア。何か胸にあるつかえが取れず気持ちが悪いのだ。



《私の考えですか?うーん?そうですね・・・》今度はアテネも熟考に入る・・・



《・・・・・・・》おや?アテネちゃんが直ぐに答えを出さないのは珍しいね?



《・・・・・・・》まだまだ熟考するアテネ。どうやら魔法世界のユグドラシルが始まりのユグドラシルだったと知らなかった様子だ。



1時間経過・・・



《・・・・・・・》

更に熟考を重ねるアテネ・・・・・・・ねー?アテネちゃんまだー?



《私が思うに・・・》お?やっと考えがまとまった?


《予定通りに混沌を収めつつユグドラシルの魂を保護する必要があると考えます》


え?なんと?


『ユグドラシルの魂の保護ですか?!』


アテネの言ってる事は「形あるものは必ず滅びる」と言う宇宙の理に真っ向から逆らう事であって神とは思えないの発言に思わず聞き返すハルモニア。

この理からは神ですら逃れる事は出来ずハルモニアの力の源となる恒星が滅びる時はハルモニアも必ず滅びるのである。


何十億、何百億年先の事かは分かりませんけどね。

滅びるまで気が遠くなる時間があるので「不老不死」と言われるのです。


《無論、我々神と言えどユグドラシルのままでの保護など到底不可能ですが・・・例えば魂だけを人間に転生させるとかすれば可能ではないでしょうか?》


『魂の転生ですか?それはどうなんでしょうか?

しかしユグドラシルの魂を保護する事によって世界の何がどう変わるのか私には分かりません。なぜいきなりそんな事を言い出したのですか?』


確かにアテネの言う事は「世界にとって利益の無い無駄な行為」である。


《・・・何が変わると言うか・・・その・・・1000万年以上もあっちこっちの世界で頑張って・・・最後は混沌を抱えて消滅してバイバイ・・・じゃ・・・・・・・・・・・・・凄く可哀想じゃないですか?

役目を終えた以上は他の事は何も考えず自分の幸せのみを求める時間の権利はユグドラシルにもあるんじゃないかな?・・・・と、モゴモゴモゴモゴ》


『?!?!?!』


?!?!?!?!


《あー・・・いえ・・・私が勝手に思った事ですから気にしないで下さい》


『はー・・・いえ!分かりましたよ!

凄く単純な意見でしたけどアテネ様の言葉が私の心に深く刺さりましたよ!

やり場のない私の不満の正体がやっと分かりました!私はユグドラシルに滅びて欲しくなかったんです!


分かりましたユグドラシルの魂の保護ですね!

何をどうすれば良いのか今はまだ何も分かりませんけど最善を尽くします!』


正直、わたくしも戦いの神であるアテネちゃんが「誰にでも幸せを求める権利がある」なんて考えたのは驚きました。

あの戦馬鹿が慈愛の心を得たなんて・・・アテネちゃん・・・立派に成長したのね?お母さんも嬉しいわ。


『お母さん!メチャクチャ失礼よ!私にだって最初から慈愛の心くらいはありますよ!』


『アテネ様は普通に優しいですよ?ただ普通より腹黒いのが目立っているだけで』


全然フォローになってなくて笑う。


《ハルモニアちゃんも意外に失礼よね?!》




こうして女神ハルモニアと女神アテネは既存の任務の他にコッソリと私的に「ユグドラシル保護計画」を進める。

本編では既に結末を書いてる(でもまた改稿はします)ので結果を先に言ってしまえば保護自体には成功するものの、その他の事では大失敗して広範囲に迷惑を掛けまくります。まあ最終的にはユグドラシルは結婚して幸せになるんですけどね。




こんなやり取りを地龍王クライルスハイムに報告すると・・・

「「それで無秩序な移民政策はもう止めるんですか?」」と当たり前な疑問を呈される。


『あっ!そう言えばそこら辺の話しは全然してませんでしたねー。行って来ます!」


これ以降のハルモニアとの会談によりユグドラシルも無計画な移民政策は止めるのだが魔法世界では別の問題が発生する様になる。

この頃からハルモニアも怒りっぽくなるんですよねー。





『新たな移民・・・ってどう言う事ですか?』


《それがですね?他の世界で大規模な飢饉が発生したらしく魔法世界でも少し難民を受け入れて欲しいとの事です。ダメなら諦めるとの事ですがハルモニア様のお考えはどうでしょうか?》


天界の移民管理局から唐突にハルモニアに対して難民支援要請が入ったのだ


『はい、まあ・・・魔法世界は食糧に関しては優秀ですから多少の移民なら受け入れても大丈夫です』


ハルモニアは飢饉に苦しむ他の世界の民を簡単に見捨てるほど薄情ではない。

しかしなぜここで難民支援要請が来るのか分からない。

どっちかと言うと世界が終わるかも知れないカウントダウンが進むこちらの方が難民支援を要請する立場であるからだ。


《良かったです。では魔法世界で「人間族50万人」の受け入れをお願いします》


『はあ・・・まあそれくらいなら・・・なんとか調整して見ます』


この時のハルモニアは深く考えず簡単に移民の受け入れ要請を受けてしまったが、これがきっかけで天界の神々に自分達が考えていた以上に魔法世界が豊かな世界だとバレてしまう。


そりゃ地球の5倍規模の惑星面積を誇り、なおかつ気候も比較的安定して淡水、海水、共に水資源も豊富、加えて世界の85%が未開発エリアで抜群の将来性があり、しかも移民にも寛容な世界とくれば他の神が放っておく訳がない。


世界の運営に困っていた神々が我先に難民支援要請をハルモニアに出し始めたのだ。


『このところ毎日毎日なんですか?!

なんですか!少し前まで世界滅亡計画とか物騒な事を言ってたくせに手のひらクルックルじゃないですかぁ!』


《わたくしもこの変わり身の早さには少し呆れているんですね~》

自分のデスクに救援の依頼が殺到して来て移民管理局の女神様も困っているとの事。


こんな感じにハルモニアの所には次から次へと管理局から移民の要請が入るのだ。

「そんなん知らんわい!」と、ハルモニアがいくら突っぱねてもユグドラシルが「OKですよ~」と受け入れてしまうのだ。


しまいには抵抗して来るハルモニアと管理局のお姉様女神を通さずにユグドラシルに直接交渉するヤツまで現れる。




そんな中で事件が起こる・・・



『・・・・アテネ様。いらっしゃいませ』


『どきーーーーん?!あ・・・あらハルモニアちゃん。お久しぶりですね』


《アギャーーーー!(はーなーせーよー!)》ジダバタジダバタ


魔王世界に降臨した巨神モードになっている女神アテネを出迎える通常モードの女神ハルモニア。今日は火の玉ではなく人型できちんと神衣を着て正装をしている。

って?ハルモニアちゃんどしたん?なんか凄く怒ってんねー。可愛いお顔が怖くなっているよ?


『はい、お久しぶりです。事前に連絡をくだされば龍の皆で出迎えましたのに』


『いえいえ。ハルモニアちゃんも龍達も忙しいでしょう?

ちょっと様子を見に立ち寄っただけですから。・・・・・もう!大人しくなさい!』


《アギャーーーー!!!(やーめーろーくーるーしーい!!)》ギュウウウ!!


女神アテネは体長5mほどの漆黒の龍をホールドする為に巨神モードになっているんだね。アテネからの拘束を解かんとジダバタと暴れる漆黒の赤ちゃん龍。


『あら?それはそれはお気遣いありがとうございます。

私はてっきり・・・最近、私の探知能力が低い事を良い事に高度な隠蔽を使ってコッソリとここを訪れてユグドラシルと交渉して私に何も言わずに帰って行く方々同様なのかな?と思ってたんですけどアテネ様なりに気を使ってくださったんですね?』


父親は大神ゼウスの子である軍神アレス、母親は昼の女神ヘーメラーの娘の美の女神アフロディーテと言うティーターン神族きっての良血の産まれにしてその出自に相応しい高い神力を誇り。何でも高レベルでそつなくこなせる容姿端麗万能女神のハルモニアなのだが一つ深刻な身体的欠点がある。


その唯一の欠点とは「探知」の能力だけが著しく他の神より低いのだ。

探知に付随している「神眼」も近く物しか見えない。要するに全てを見通せない極度の近眼女神なのだ。


なので何かあればこうして近くまで来て直接目視する必要があるのだ。

要するにコッソリと隠れてユグドラシルに接触して来る不届者を現地で見張ってたんですね。

そんで見つけた相手を威圧する為に完全フル正装でお出迎えをしていた訳です。


『うふふふふふ。・・・・・あん!もう!だから暴れないで!』


《アギャーーーー!!》ジダバタジダバタジダバタジダバタジダバタ


『・・・・・・・・・・それでアテネ様?さっきから鳴いているその子は?』


《アギャーーーー!!!(だれだよ?おまえーーーー!)》


『私ですか?私はハルモニアと申します・・・それで?アテネ様?この子は?』

ニッコリと笑いアテネに圧力をかけるハルモニア。


『・・・・・・・・・・・私の管理している世界で産まれた黒龍王の赤ちゃんです』


『それは見れば分かります。

私が聞きたいのは、なぜアテネ様が黒龍王の赤ちゃんを抱っこして私の夕食時間を狙って魔法世界に降臨したのか?です』


最近は不届者の対処の為の夜間での見張りのせいで晩ご飯を食べ損ねる事も多いのでハルモニアは余計に機嫌が悪いんですね。


『えーと?ユグドラシルなら・・・この子を気に入ってくれるかな~?なんて思いまして・・・モゴモゴモゴモゴ』


『はぁああああああ・・・・要するにここに来たのは厄介払い・・・ですか?』


まあそれ以外には考えられんわな。


《アギャーーーー!!!!!!!(俺を捨てる気かーーーー?!)》


『捨てない!捨てません!ちょっと遊びに来ただけですって!』ギュウウウウ!


《グエエエーーーーーーー!!!(まな板のくせに胸で締めんなぁー!)》


『なんちゅう失礼な龍なのかしら!私だって少しくらいはありますよ!』


まあ、アテネちゃんはスレンダー美人だからね。


《・・・・・・・・・うーん?》


森に響く黒龍王の鳴き声で眠っていたユグドラシルも目を覚まして・・・

《あら?あらあらあら?きゃあああああ?何ですか?そちら子はとても可愛い子ですね!》

ひと目見て黒龍王の赤ちゃんを気に入ってしまう。


『!!!やっぱりユグドラシルならこの子の良さが分かると思いましたわ!

可愛い子でしょう?どう?!この世界で育てて見ませんか?!』

どうやら女神アテネも黒龍王には相当手を焼いてる様子。あまりにも必死過ぎて笑うわ。


《まあ?!この子を世界に下さるのですね!分かりました!大切に育てますわ!》


『勿論ですわ!よろしくお願いします!』


《アギャーーーー!!!(やっぱり捨てやがったーーー!!)》


宇宙屈指のトラブルメーカーを挟んでキャッキャするアテネとユグドラシルを凄い目で見るハルモニアの姿がそこにあった・・・


つーか、黒龍王の赤ちゃん・・・・・ユグドラシル的には可愛いのかい?赤ちゃんの時から怖くて厳つい顔をしてんねー。

どんなに身体が大きくゴツくてもクリクリなお目目でお顔も可愛い三龍達や竜達を見て来たもんで違和感ハンパねぇっす。


そしてハルモニアの懸念通りにこの黒龍王は魔法世界で騒動ばかり引き起こすのだった。

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