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異世界転生してエルフのお姉さんにお世話になったら激重感情抱かれてた  作者: 火海坂猫
一章 純愛編

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六十五話 味方であっても優しくはない

「じゃ、行ってくるわ」

「本当にもう始めるの?」


 告げる私に不安げにアキが尋ね返す…………まあ、無理もないとは思う。なにせノワールから遠回しな警告を聞いて話し合って方針を決めた当日決行だ。


 すでに時刻は夕方に差し掛かっていて、恐らく魔族との戦闘になる頃とすれば夜になっているだろう。そして夜というだけで大抵の作戦の成功率は下がってしまうものではあるわ。


「確かに明日まで待った方が安定ではあるけど、それよりもあちらから夜襲をかけられるほうが厄介なのよ。その場合は確実に町へ襲撃が来るわけだし」


 町に私がいれば当然魔族は私を町ごと狙うだろう。それであれば念のために私は町から離れたところで野宿する手もあるけど、それだったら最初からこちらから仕掛けた方がいいと私は思う。わざわざ不利になるだけだ。


「だから向こうから仕掛けてくる前に動きたいのよ」

「それは…………わかるけど」


 それでも行動が早すぎることがアキは不安らしい。町長にもしばらく居候させて欲しいと頼んでいたし、動くにしても数日準備を整えてからと彼は思っていたのだろう。


「心配なのはわかるけど準備不足ってことはないわよ? 町を守る算段は立ってるんだし最悪ノワールが何とかするわ」

「…………」

「それともノワールが信じられない?」

「そんなことは…………ないけど」


 そう答えるアキの表情は彼女が信じられないのではなく、彼女を利用してしまう形になることの罪悪感がまだ強いようだった。


 あの女のことだからどうせこうしてアキが罪悪感を抱いてくれるならむしろ好都合とすら思っていると私は思うんだけど…………どうにもアキはまだあの女の腹黒さをイマイチ見抜けていないらしい。



「どのみち私は意見を変えないわ…………覚悟を決めなさい」

「…………わかった」


 私が半ば強引に話を終わらせるとようやく覚悟を決めたようにアキは私を見た。


「ああ、言い忘れてたけどアリサ」


 私は黙って私とアキの話を聞いていたアリサへと視線を向ける。


「なに?」


 とぼけたその表情は私という邪魔ものがいなくなることに喜んでいるように見えた…………弟子という形になって私の師事を受けてもこいつの生意気な態度は変わっていない。


 は弱いより強い方が戦いには向いているけど、それで私が気分を害さないかは別問題だ。


「あんたはアキと一緒にいるなというか、むしろ他人のように離れておくのよ?」

「えっ!? やだよ!?」

「やだじゃないわよ」


 予想通りの反応に私は顔をしかめる。別にこれは私の嫌がらせじゃない…………いや、正確には内心ほくそえんでるところに冷水をぶっかけるつもりで口にはしたけれど。別にただ嫌がらせだけで口にしたわけでもない。


「忘れてたらもう一度説明してあげるけれど、あんたは私の弟子ってことになっているのよ…………その理由はちゃんと覚えてるわよね」

「アリサそこまで馬鹿じゃないもん!」

「なら一から説明されずに理解しなさいよ」

「うー!」


 不満そうな顔を浮かべるけど、そこまで頭が回らないからお子様なのだ。


「あんたはアキに会いたいけれど、町の掟として森に入ることは許されない。それが許されたら他の町民が不満に思ってしまうからよ」


 ましてやアリサは町長の孫であり権力者の横暴ととられかねない。それを回避するためにアリサを私の弟子にして、あくまで私に同行するために森に入っているという建前を作ったのだ。


「本当なら戦いに連れて行くところだけど流石にまだあんたは戦える段階じゃないわ。だからあんたを置いていくし、そのことに関しては町民だっておかしいとは思わないわ」


 なにせアリサを弟子に取ったのは昨日今日の話だ。流石にそれで魔族との戦いにまで連れていけるとは誰も思わないだろう。


「でも、あんたがアキを大好きって姿を見せたら話は別よ」


 アキが森の魔女の庇護下にあることは一度ノワールが同行して町に訪れていることで町民にも知れている。そんな彼に対してアリサが露骨に好意を見せているところを見られれば、私に弟子入りしたのは建前で本当はアキに会いたいだけなのではと勘繰かんぐられかねない。


「だから少なくともそれを人に見られるような真似は控えなさい」

「…………うー」


 アリサは頭の出来が悪いわけではないから私の話を理解はできる。問題はアキへの感情が強すぎて暴走してしまうところだが、幸いこの場にはその当人がいる。


「アリサ、少しの間だから我慢してくれないかな…………今回のことが片付いたらまたいくらでも一緒にいられるからさ」

「…………お兄ちゃんがそう言うなら」


 アキから直接お願いされて渋々とアリサが頷く。考えて見ると今のように人に見られない町長の屋敷の中では一緒にいても問題ないのだし、離れると言っても私が行動を起こしてそれが終わるまでの間程度…………それでこんな反応なのだからアキの特定の異性を惹きつける魅力は本当に恐ろしい。


「じゃ、話もまとまったし今度こそ私は行くわ。アキも移動を忘れずに」

「うん、わかってる」

「…………いってらっしゃい」


 アキは自分のやるべきことへの決意を込めて、アリサはまだ少し不満げに屋敷から出ていく私を見送った…………実際のところそれほど厳格に二人が離れておく必要はないとも思う。


 元よりアキは余計な相手を惹きつけないように町民には見られないように行動する予定だ。つまるところ同行したところで二人の姿が見られる可能性は低いはずなのだ。


「そこに気づかない辺りはやっぱりまだお子様よね」


 もちろんアリサは町長の孫でありこの町では目立つ存在だ。その姿が見えなければ余計な衆目を集めるだろうし家族といる姿を見せていたほうが問題は少ない。


 それに私が離れている間にアリサがアキと一緒にいることに嫉妬せずに済む。


 それが何よりも大切なことよ。


                ◇


 この島に潜んでおおよそ半日が過ぎ、概ね我はその戦力を測り終えた…………やはり我の予想は当たっていたようだ。害虫共の数は少ないがそこそこの力を持つ者が少なくない。


 もちろん我やあの女に比べれば雑魚でしかないが、此処が推測通り訓練場であれば将来的な戦力として育つ可能性はあるだろう。


「あの女ごと潰しておく方がよさそうだ」


 我はそう結論を出す。問題は順番をどうするかだ。一番面倒がないのはあの害虫共の集落にあの女がいる時にまとめて始末することだが…………あの女は忌々しいが強い。雑魚とはいえ余計なちょっかいをかけられれば我とて不覚をとる可能性はゼロではない。


 先にあの女を仕留めるか、そのまえに雑魚どもを掃除しておくべきか。


 幸いにしてあの女は昼の間は害虫共の集落を離れて森へ移動していた。それが何のため出るかはわからないが、また同じように移動することがあるのであれば狙い時となる。


「それともやはり夜襲を仕掛けるべきか」


 害虫共は夜に休息をとる習性がある。そこを狙えば混乱の中であの女を殺すことができる可能性もあるだろう。


「さて、どうしたものか」


 我は思案する。


「!?」


 その思案を打ち破ったのは、魔力感知を受けたというその感覚だった。


 お読み頂きありがとうございます。

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