メロンパンブーム到来
数日後、森への立ち入り禁止が解除され、これまで通りの森への不法侵入をする生活に戻った。
いつものように森で砂糖を作り、帰宅すると、家の前に行列が出来ている。
すごい、昨日よりも並んでる!
火の魔獣事件できていた冒険者達が、メロンパンの存在を広めてくれたらしい。
口コミって大事だよね!!
私はすぐにトトルと売り子を交代する。トトルはそのまま工房に戻り、クルトの手伝いを始める。私も手伝いたかったのだが、クルトから戦力外通告を受けている。
私だって、焼くのは出来るようになったのに…。なので、私の担当は売り子だ。
「はい、メロンパン1個ですね! 少々お待ちください」
「はい、ありがとうございます!」
何人か販売したところで、突然声をかけられる。
「ここの子供だったんだな」
「…あ!」
目の前にいたのは、ギルドで最初に声をかけた頼れるお兄さんだった。結局、頼ることはできなかったが。
「あの時は、悪かったな。一緒に探してやれなくて。後からあいつらに聞いたら、ペンダントが見つからなかったって言ってたが、その後見つかったのか?」
私はすっかり忘れていた。あの時は、なんとか森に入ろうと必死だったのだ。工房で作っているクルトやトトルに怪しまれないように、小声で答える。
「失くしたこと…父には言ってないんです」
「そうか、なら明日は時間あるか? ギルドにいるから声をかけてくれ」
「あ、ありがとうございます…」
嘘だったとは言えず、明日一緒に森に行く約束をしてしまった。そして、頼れるお兄さんは、メロンパンを受け取るとすぐにどこかに行ってしまった。
はぁ、嘘なんてつくんじゃなかったな。
なんとか行列を捌ききった時には、メロンパンを作り続けていたクルトもトトルもぐったりしていた。元々、客の少ないパン屋だ。急に客が増えたら、疲れるのも無理はない。トトルもパン作りの手伝いを始めたのは、最近なのでそこまで上手ではない。もちろん、私より風属性が高い分、時間はかかるがこねたり、切ったりできる。
このまま行列が続きそうなら、なんとかしなければならない。3人で今後について話していると、店の扉が開いた。パッと3人で開いた扉を見ると、そこには叔父のレブロが立っていた。
「クルト…俺…」
「お帰り、レブロ」
急に現れたレブロに喧嘩でも起きたらどうしようと思っていたが、クルトは笑顔でレブロを店に入れた。元々この家は、レブロにとっては実家だ。帰ってきても何の問題もない。どうして突然帰ってきてパン屋を始めたのかはわからないが、仲直りしてくれて良かった。
その後、レブロから店を閉めること、実家に戻りたいという話をされ、クルトはすぐに了承した。
ひとまず、部屋の準備などもあるので、住むのは数日後にして、パン屋の仕事は明日からできないかとお願いする。レブロは少し考えていたが、明日から来てくれることになった。
やったね! パン職人ゲット!
私は過重労働から解放される喜びと更に売上が伸びることを確信した。




