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第42話 [双子2]一方的な愛は花の水やりに似てる

 ミーくんには彼女がいる。

 確かお花みたいな名前の子だった


 ミーくんと言うのは、私の双子の兄だ。


 別に嫉妬したりはしない。

 むしろ安心する。


 私はよくミーくんに甘えるからね。私はただ寄り掛かりたいだけ、寄り添いたいわけじゃないの。


 彼女がいれば、ミーくんは私に寄り掛からないでしょ。

 そう、私だけが一方的に甘えるの。

 そんな狡い関係が心地よいのは当たり前。


 ごめんね、ミーくん。

 許してね。




 今日は両親が町内会の温泉旅行でいない。

 明日の夕方まで帰ってこないみたい。


 パパとママには悪いけど、私はミーくんと二人きりなので、先週あたりからこの日を楽しみにしてた。


 私はお風呂からあがり、ドライヤーで丁寧に髪を乾かすと、夜なのにテンションが上がってきてテレビを見ているミーくんに後ろから抱き着いた。


「ねぇ、コンビニ行こうよ!」


 ミーくんは鬱陶しそうに私の両腕を首から外すと、心の底から面倒そうに返事をする。


「えっ、普通に嫌だ。恵、一人で行ってきなよ」


 なんて酷い温度差なのだろう。

 でも、それも少し心地よい私は変だろうか?

 鏡がなくてもわかる。

 私は今しまりのない顔をしている。


「だって、こんな夜遅くに女の子一人で出歩いたら危ないじゃん」


「なら、出歩かないでよ」


 ミーくんは呆れる。


「えー、夜のコンビニってちょっとワクワクするじゃん」


 日頃訪れている場所もいつもと違った時間帯に行くと、まるで冒険でもしている様な高揚感があると思う。

 しかし、ミーくんは私の言葉にあまり同意してくれず、渋い顔をする。


「んー、面倒だなぁ」




 だけど、結局ついてくるのだ。

 こういうところも好きだ。

 私たちはアイスを買って家路につく。

 別にどうしてもアイスが食べたかったわけではない。

 ただ、夜道を歩きたかっただけだ。


 私は隣のミーくんにそっと手を差し出す。

 気付いているだろうけど、ミーくんはその手を取ってくれない。

 だから、私が無理やりミーくんの手を取り、手を繋いで歩く。


 私は知っている。

 ミーくんはその手を振りほどかない。



 コンビニから私たちの家に帰るのには、近所の公園を突っ切るのが早い。

 

 陽のある時は、子供たちの笑い声で溢れるこの公園も今は猫の鳴き声一つ聞こえない。


 そんなところを歩いていると、まるで世界に私とミーくんしかいないみたい。


 私は私より少し背の高いミーくんを歩きながら見上げる。


 まつ毛長いなーとか、肌綺麗だなーとかどうでもいい感想を思い浮かべると、その感想は私の中に染み込んで頭の中がミーくんで埋まっちゃう。


「えいっ!」


 私ははしゃいだ振りしてミーくんに抱き着いてみた。

 前からだ。

 後ろからはよくあるんだけど、前は少し緊張した。

 前と後ろでそんなに距離が違うとも思えないけど、こっちの方が互いの心臓が近くに感じるような気がする。

 

 私の鼓動はばれてないだろうか?


「……恵、アイス溶けるよ」


 私はその言葉を言って欲しくてわざと抱き着いたのかもしれない。


 それにしても、ミーくんはこんな時もクールだ。

 決してここで私を抱きしめ返したり、頭を撫でてはくれない。


 でも、それがいい。


 そんなことされたら、体の端から端まで浸かってしまう。


 私は直ぐに謝って、離れようとした。


「あはは、ごめん、ごめ―」



(みのる)?」



 誰かがミーくんを呼んだ。

 私の背中からだ。


 つまり、抱き合ってるミーくんには誰がそこにいるか分かる。


「……茉莉(まり)()


 あぁ、それどっかで聞いたことある。

 確か、ジャスミンの和名。

 

 私、ジャスミンってお花の中で一番好きかも。





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