ep49 悩む悪役令嬢 (※SIDE・ローラン)
※注※とっても短いです。
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難しい顔をして淡い水色の瞳を時折り僕に向けて来て、何か言いた気な素振りをオリビアは見せていた。
オリビアが思案している件に、僕は大凡の見当がついた。
建国祭最終日の茶会で第一王子の婚約者候補が全く決まらなかったのだ。 ご学友候補も。
どうやら昨年の建国祭最終日の茶会でも第一王子のお眼鏡に適う相手が居なかったらしい。
その時、運良く(悪く?)建国祭最終日のグランドフィナーレを飾る王城の夜会で、アーシュレイ侯爵閣下が絶好調で吠えた。 「我が孫娘は水属性の祝福を授かった。愛らしくも美しいアーシュレイ家の宝玉である。」と。
嫡男である息子の悪い風聞ばかりで難儀されていたアーシュレイ侯爵は、久方ぶりの明るい話題に浮かれて舞い上がっていた。
抑々がアーシュレイ家待望の祝福持ちである。
(現当主レイモン・ド・アーシュレイ侯爵、次代の当主ロベール・アーシュレイの2代続けて祝福無しであった。 当然、他のアーシュレイ侯爵家の姉弟達も同じく祝福無しである。)
嫡男ロベールに前王ロイス3世の王命で迎えた嫁は、祝福無しの『ハズレ令嬢』だった。
それ故に端から期待も何もして居なかった孫娘が、高位貴族でも数少ないと言われている祝福を授かった。 その奇跡的な幸運に浮かれるなと言う方が、難しかったのだろう。
妻の生家であるクロノア公爵夫妻たちと嬉々として歓談している話をフルーブ4世国王陛下が耳にした。
侍従にアーシュレイ侯爵を呼びにやり、玉座に座する陛下の御前へと招いた。
「余とレオに、そちの孫娘と会わせよ。」
「此れは御耳汚しを。しかし孫娘は未だ8歳で御座います。 地方の領地に引き籠って居りますので、宮廷マナーも何も判って居りません。 今しばらくお待ち頂けないかと。」
「ふむ。では来年の建国祭だな。王妃から招待状を送る故、良いな? アーシュレイ侯爵。」
「はっ、有り難く存じます。」
こうして浮かれて燥いでいたアーシュレイ侯爵に顔見せ的な婚約者候補を匂わせる王命が下った。
僕が、大枢機卿たちとオリビアの件で密談している間に、王都パルスでは第一王子の婚約者候補にアーシュレイ侯爵家の長女オリビア嬢が決まったと王都パルスの社交界で大騒ぎされていた。
宮廷情報に詳しい司教に尋ねたら、「来年の子供会への予約招集だろう。」と言う話だ。しかし、社交の場で耳にキャッチーなセリフは、「第一王子の婚約者候補が決定した。」だった。
辞職した乳母だのドロテア母娘が急遽、領主館に来訪したのは、パーティーでその噂を耳にしたからだろう。
そして、その噂は、王都パルスから三日離れた距離に居るオリビアへと届いた。───彼女は、今、苦悩している。
『僕に相談したくないのだろうな、オリビアは。 でも相談するのは精霊石のメガネを勧めたアンゼル枢機卿との伝手を持つ僕しか居ないワケで。 裸眼で人前に立つのはどうしたら良いのか?』等と、彼女は無駄に考え込んでいるのだろう。
まあ彼女が悩んでいる元は僕の所為でもあるが。
精霊に関して沈黙の暗示魔法を繰返して掛けているから、喋れなくて悶々としているのだろうな。
(話してはいけない気がする。)
と、自分の言動を意識的にセーブしてしまうから。
さて、オリビアの後ろにコレット嬢とデジレ嬢がいるから精霊の話を此処では出来ないし。
仕方ない、明日にでも礼拝堂に来て貰おう。
僕は、考え込むオリビア嬢を目の端で眺めて、いつものようにランテ語で聖典の朗読を始めた。
僕の口角が自然に上がっていることを気付きもしないで。
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