51:雷伝
お久しぶりです!
ネトゲはまったり、気分転換に短編書いたりと、ぐだぐだして遅れました!
良かったら短編も覗いてください。10000文字くらいなので、暇潰しにどうぞ。
「団長! あいつらやる気ですぜ!!」
「滅炎槍龍騎士団の力を知りませんぜ! 思い知らせてやりましょう!」
「ようし、森ごと消毒だ!!」
滅炎槍龍騎士団は王国1位荒い騎士と言われ、騎士団中からも非難が出るほどであるが、戦闘能力は長けている集団である為、先遣隊として武勲を多く上げているのである。
「だ、だ、団長!!」
「なんだ、どうした!」
「前方奥より飛竜の影多数!!」
「飛竜がどうした! 纏めて焼いてしまえ!!」
「は、速い! ぐうわぁあああ」
後方の偵察役の騎士は、探知魔法を使いながらも焦りなのか、汗が吹き出ていた。
★ ★ ★ ★
「はぁあ~。折角結婚しても一人でお留守番は暇です!」
晴天の昼下がり、魔王城ではメリアが暇を持て余して城中の掃除を終えた所であったが、特にある事もなく夫の帰りを待つのみであった。
「はぁ、そう仰られましても、陸様は遠征中でございませれば致し方ないこと」
「レオルド、それは分かっています! では迎えに行くというのはどうでしょう!」
「どのようにして迎えにいかれるのですか? 現場は未知の流行り病が流行っているとか。とても危険でございます」
「はっはっは! 我もごろつくには飽きたぞ!! メリアと言ったか? 我と行くか!」
「タンニール殿、この城の警護はどうなさいます!?」
「レオルドとゴブリン達が居れば安泰ではないか! そうそう落ちるものではないぞ!」
「で、ですが……」
「レオルド殿、後はよろしく~」
「では、せめて護衛を付けて下さい」
「心配性になったな! では航空戦力を連れて行くとするか」
「タンニール様ああぁぁ」
「おぉ、手先が器用なゴブキチではないか! ついにできたという訳だな」
「はい、タンニール様の自然と剥れた鱗を打ち付けた甲冑でございます」
「おぉおお! 良い出来だ!! 魔王っぽいぞ! どれ、メリア着てみるといい」
「わ、私がですか?」
「そうとも、あらゆる属性や異常に耐性を持っていて且つ硬いし軽いぞ」
「で、ではそうさせてもらいますわ」
黒光りするタンニールの鱗から出来た鎧は、ゴブキチの多彩な彫刻と、細工により一級の芸術品に見えるまでとなった。頭の部分はフルフェイスで顔全体が覆われ、表情は分からないようになっているが、顔部分のシールドを上に上げることで顔を出すことが出来る。
メリアはタンニールに乗り込むと、振り落とされないように体をロープで固定し、陸の下へ飛び立っていった。
★ ★ ★ ★
「な、なんだあれは!」
50人弱の騎士団が、はっきりと陸達の背後から迫る飛影を目視できるようになると皆驚きを隠せなかった。飛竜にしては大きいし、かといって上位の竜種が群を率いることは無い。
「団長! まずいっすよ!!」
「んなこた見りゃわかんだよ! 十分警戒しろ!!」
迫り来る竜の群はぐんぐん大きくなり、全貌が明らかとなる。緑竜3体に黒竜1体。あとは20体以上はいると思われるワイバーンだった。
黒竜には漆黒の甲冑に身を包んだ者が一人。全身の彫刻は見る人を不安にさせる、おどろおどろしい雰囲気を出している。緑竜にも九尾やコカトリスが人型で騎乗しているが、騎士達には悪魔の使いにしか見えない程、メリアの甲冑の存在感が鮮烈であった。
「ま、魔王だ……」
誰かがポツリと呟いた。
「何! 魔王だと!!」
それは恐怖となり騎士団全体に感染していく。
「怯むなぁ! 我ら世界最強の魔法騎士団の一つ! 魔族如き遅れを「GABAAAAAAAAAAA」あわああ」
緑竜の咆哮は空気をも振動させ、体の芯をも揺さぶる程の大きさであった。
「くっはっはっはっは、お前ら虫けらが何人集まろうが、我らには敵わぬぞ人間共」
なにノリノリで悪役気取ってるんだよ、あのおっさん! 楽しい遊びを見つけたみたいにはしゃいでるし……と陸は思いながらも暖かい目でタンニールを見守るのであった。
「ひいぃぃぃ。竜が喋った!!」
「ド、ドラゴンだ! 国へ連絡を!!」
「ひけぇえええ!」
「はっはっは! 虫のように散っていきおるわ!!」
「陸様!!」
「その声はメリアか! にしても酷い格好だね……魔力感知でタンニール達が来てるのは分かったけど、その鎧は探知にも引っかからないのか」
「良いであろう! ゴブキチに頼んで作らせたのだ」
ゴブキチ? あ~手先が器用なゴブリンがいたな! 知らぬ間にみんなスキルやら姿が変わってるんだよな……緑竜なんていつ変化したんだ。
「あ、あぁ。そのままメリアが着ていた方がいいな! 安全だし」
「え! 宜しいのですか!?」
(陸様が私の身を案じて下さってる! 幸せ!!)
「メリアが着ていたほうが安心するしね」
(あんな暗黒系へービーメタルなデザインはちょっとなぁ……)
「メリアよ、その腰をくねらせる動きは新しい遊びか? 城に帰ったら教授願いたい」
「え! いや、遊びでは……」
「取り合えず帰ろうか! 王様にも報告しないと」
赤面のメリアの後ろに陸が跨り、飼い猫の様に大人しくなったメリアを心配する一幕もあったが、皆もワイバーンに騎乗し、城に帰ることになった。
★ ★ ★ ★
ラベンハルド王国は中央大陸の強国である。その理由は圧倒的戦力である魔法騎士団がある。剣術、魔法力どちらも兼ね備えていなければならず、戦闘のエリート集団である。その中でも回復魔法を得意とす騎士団が聖教徒白鷗騎士団である。現代の軍隊で言ったところ、メディックや衛生兵に近いかもしれないが、彼らは戦闘には参加しない為、敵から狙われる事が少ない。だが、聖教徒白鷗騎士団は敵を撲殺しながらも、見方の治療も行なう部隊である。ある時は、聖教徒白鷗騎士団のみで、自団の兵士達を治療しながら前線と交代して戦う事も出来る。とある国からは、倒しても倒しても沸いて出てくるゾンビ集団と異名を付けられた程だ。
「いやぁ、今日の鍛錬も疲れたわ」
ラベンハルドという異国の地で、聖教徒白鷗騎士団として異世界を満喫している異世界人がここにいた。水上 道は、ラベンハルド王国の深刻な流行り病の危機を救う為、正教徒教会の巫女であるミーヤに召還の儀をもって召還された救世主である。危機を救った後は成り行きで騎士団に配属され、前向きに鍛錬や訓練を行なっている道だったが、召還されてしまったら元の世界には戻れないと知ってからはしばらく落ち込んでいた。そんななか前向きさせたのが、病状が回復した患者からの感謝の言葉や、騎士団達の献身的な態度、またミーヤの存在も大きかった。道の中で、彼らの役立てる事が生きがいに変わっていった。
「ワタル殿、貴殿の体裁き感服いたします。どのような体制からも繰り出される攻撃に目が回りそうです」
「ドミニクもそんなこと言いながら防ぎ切ってるじゃないか」
「いやいや、防戦一方で、攻撃に移れば直ぐにカウンターが入ってきては、何も出来ませぬ」
「そうか、ジークンドーやカンフーはやっぱ偉大だな……」
「それはワタル殿の流派ですか!」
「流派になるのかな!?」
「是非私目にご教授いただけませんか!?」
「え! まぁ、いいけど……」
(俺は動きを真似てるだけだからな……う~ん)
その日から聖教徒白鷗騎士団の間で、羽織を脱いでは着るという動きが訓練場で流行りはじめた。その光景を道は苦笑いするしかなかった。
道が平穏な訓練風景を眺めている横で、物凄い形相で馬を飛ばす騎士が城へ突撃していった。馬からは泡の様な汗が噴出し、口からも泡のように唾液を出していることから、かなり無理をして走らせていることが分かる。
「伝令!! でんれぇえええい」
その日、早馬によって雷に打たれたようにラベンハルド王国は衝撃を受けたのだった。魔王襲来は日常茶飯事であった大国だが、人と魔族が手を組み襲われるというのは初めてのケースだった。
今週中にも1話あげたいですね




