22:アウトロー
2話目です。
その後、陸や兵士達も後は追わず、負傷者の確認や、結界の確認を行っている。
結局結界の書き換えは、戦闘中隙が全く無く行えなかった為、その調整を行っている。
「そこの魔法式はその式と連立させて・・・・そこはもっと省略出来るだろ。そう、そうだ・・・」
魔法省大臣デルメルは、官僚達に指示を出し、結界の更新にあたっていた。
年季の入ったパイプを口に咥え、慣れた手つきで葉っぱに火をつける。
デルメルは、先の魔王を撃退したゴーレムについて考えていた。
彼自身魔法に精通している為、様々な魔法の研究や開発を行っていたが、デルメルの知るゴーレムとは、ノソノソと歩くくらいしかできない土人形というものだった。
本人も、魔法の奥深さは良く理解しているつもりだったが、現場から離れ、管理職に落ち着いたデルメルが、ここまで魔法に対する探究心をくすぐられるとは本人も思わなかっただろう。
「あの冒険者達の中に、ゴーレムを操っていた者が果たしていたのだろうか・・・」
あれから冒険者達は、セルクリッド王国に滞在していた。
補給を受けた後ウィークタウンに戻る段取りになっている。
デリメル含め、魔法省のスタッフ達は、ゴーレム使いに関して褒賞の授与を口実に、調査、冒険者達へのヒヤリング等々行ったが、結局ゴーレム使いは割り出せなかった。
ゴーレムその物も、痕跡を残さず、地面へ潜ってしまった。
王国の救世主が不明というのも景気が悪いので、表向き、国民には冒険者、飛竜分隊、セルクリッド兵士の友情が、魔王を退けた!と、武勇伝が国中を踊ったが、当事者達は釈然としない。
魔王撃退に、素直に喜べない者が此処にもいた。
勇者エミリーである。彼女もまた、国の一大事に何もできなかった己の非力さを改めて実感していった。ましてや冒険者や、隣国の兵士を囮に使う作戦しか思いつかず、それを実行してしまった事への怒りも沸々と込上げるのだった。
「勇者という肩書きは酷だな・・・」
エミリーはゴーレム使いに憧れてしまった。
自分が成し得なかった事をさらりと成し遂げてしまったのだ。
俄然興味が湧く。
どうにか出会い、一つご教授願いたいとエミリーは考えていた。
勇者とは名だけ。
エミリーは力を求め始めた。
そんな渦中にいる陸は、定食屋で飯を食っていた。今日の日替わりは、麦飯に漬物、お漬しに汁物、そして魚の開きだ。
一見和風だが、どれも見たことの無い食材である。
「この白身魚は油がのっていて美味いね~麦だけど、ご飯があるのはありがたい」
「陸様。陸様がお作りになられたダンジョンで、ゴブリン達に作らせたらいかがでしょう。ゴブリンは農作業を得意としております」
「そうか、しばらく帰ってないしね。ボチボチ帰宅しようかな~とも思うけど、折角新しい街にも来たし、散策してからにするよ」
「では、部下の方に伝えておきます」
「こっちのギルドも覗いてみよう!」
「承知いたしました」
昼時の食堂は人がごった返し、様々な職業の人が腹を空かせてやってくる。
「今日の日替わりは魚かよ」「文句あんなら違う店いきな」など、荒くれと強気の店主の言い合いもこの店では名物であり、夜は居酒屋となり、酒や摘みを振舞う。
食堂店主も元冒険者で、腕が立ち、酔っ払いが摘み出されるのもしばしばあるが、常連客の多くが店主の冒険者時代の同僚や、後輩だったりするのである。
「さて、僕らはギルドに向かおうか」
★★★
セルクリッドの繁華街の一角に、堂々たるやその建物は存在していた。
そこはセルクリッド国のギルドであり、建物の裏には広いグランドもあるなど、訓練場として十分な広さである。
今回の魔王防衛戦では、魔法が使える者のみ城壁に召集されたが、殆どの者が結界が突破された時にともなう、国民の避難や、防衛などを行う為、街に配置され戦闘行為は行っていない。
故に肩身が狭い空気をだしているが、街の者はそうは思っていない。
セルクリッドの城下町にはウィークタウンから来た冒険者が多く滞在し、飲み屋で危機を脱した事に祝っていた。
魔王自体は、ゴーレムにより討伐された為、達成感は無かったが、あの状況で仲間や自分が無事でいられた事に感謝していた。
「いや~こっちの酒もうまいな!身体に染みるわ」
「俺の周りなんか雑魚がわさわさよってきやがって、大変だったぜ」
「俺は魔術師の護衛任されちゃって、その子が可愛くてさ、張り切っちまったわ」
「その顔で、良く魔物と間違えられなかったな!」
「うるせい、お前も似たようなもんだろうが!」
「「がはははははは」」
そんな会話を聞きながら地元の冒険者達は、「俺も戦闘してたら武勲の一つ立てられたのによ」と、活躍の場が無かったことに悔やみながら静かに酒を酌んでいた。
「しっかし、一番の手柄を立てたゴーレム使いが名乗り出ないってのも不思議わな」
「国も懸命に探してるみたいだけど、勿体無いことだよな。まあ、自分の能力を知られたくないってのもあるけどさ」
「だけど勇者の称号を得られるチャンスなんだぜ」
なんの悪気も無く「勇者」という単語にセルクリッドの冒険者はビクついてしまう。
「そういえばこの国にも勇者ってのがいたんだったか?」
「ああ~そういえばいたね!今回はお留守番だったみたいだが」
「流石に勇者一人で魔王三体はどうしょうもないわな」
「ってこたーゴーレム使いはやべーな。1体殺した上に、もう2体もやれそうだったもんな」
「あぁ、あれはすげー迫力だった。俺が対峙してた魔物が一瞬で真二つたったぜ。たまげたわ」
★★★
陸はふら付いていた。
人が多い場所が苦手なのもあってか、人の少ない場所へ逃げてきたら、全く人気の無い裏ロジへ入ってきてしまった。
薄暗く、外灯もない。
しょうがなく引き返そうとしたその時、後ろから声がかかる。
「おう餓鬼ども。ここがどんな場所か知っているのかな? 夜道をぷらぷら歩いていい場所じゃないぜ」
中肉中背のこの男、名はディック。
セルクリッドの裏社会を牛耳る「黒き太陽」の構成メンバーであった。
「黒き太陽」はこの国での汚れ仕事を受け入れている。
暗殺、盗み、薬、誘拐など、金を積めばどんな仕事でもやってのける裏ギルドとも巷では言われている。
「すみません。道に迷ってしまって。大通りの方に戻りたいのですが」
ディックは考えた。
見かけない顔で、道も知らないときた。
この間の魔王騒ぎで、ウィークタウンから冒険者が集まってきているし、こいつらはその手伝いか、従者だろうと。
「そうか、こっちの道が近道だ。付いてきな。」
ディックは金が迷い込んできたと歓喜した。
幽閉して、悪趣味な貴族にでも売り飛ばせば高値で売れる。
女の方も顔もいい。
歳は若いが、いっちまってる奴らにはこの方が喜ぶだろう。
だが、ディックの運命はここで改心すれば、繋ぎ止められただろうが、これも運命だったのだろう。
国も大きいと、闇も大きくなりますかね
裏社会に首を突っ込んだり、引っかき回したりするの良いですよね~




