21:異常性の自覚
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立ち上る火柱、吹き付ける熱線に立ち怯む冒険者達だが、この程度の温度ではゴーレムは燃えない事はなんとなく知っていた。
溶岩でさえ温度は1000度程で、それを越える炎を作り出すには、違う属性の魔法と複合しなければ不可能である。
そもそもこの世界では、金属は、炎で溶ける事が常識であった。
「GYAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOO」
突然の咆哮、灼熱の中ケルベロスの唸り声が木魂する。
「ケルベロス!」
ベルフェの叫びも虚しく、ケルベロスの頭一つ宙に舞、ドシッっとう音共に地面に叩き付けられた。
灼熱の火柱の中、1体のゴーレムが、剣の様に加工した腕を振り下ろし、ケロベロスの首を叩き斬ったのだった。
ケロベロスは悶え、苦しみながらもゴーレム軍に突っ込んだが最後、ゴーレム各々の得物によりケロベロスの原型が、分からない程になってしまった。
「な、僕のケルベロスが・・・」
「これは思わぬ伏兵ですな・・・」
「あの火力でも倒せないとなると、私でも厳しいね」
「ケルベロスの仇・・・ギリ」
魔王ベルフェにとって、王都などもはやどうでも良くなっていた。
自らの部下を目も当てられない無様なさらし者にした物共を許せる筈が無かった。
見た目幼少男児だったベルフェはその姿を変えていく。
目は細く鋭く、前顎は伸び、口からは犬歯が鋭く目立つ。
筋肉は隆起し、だが細く絞まっており、全身からは銀色の毛に覆われ、尻尾も生えた。
それは、狼男の姿となっていた。
「フェブル、なんかあいつ変身したぞ」
「ベルフェはもともと銀狼の種族で、生まれ持った多大な魔力で魔王まで伸し上がった者にございます」
(まだ若いなぁ、魔力だけは一丁前じゃな)
「成る程。一応ステータス見ておくか」
怠惰の王:ベルフェ
体力:B
魔力:A
スキル:肉体活性 獣人化 駿歩 舞踏術 無詠唱
魔法:召喚術「極」
氷帝:フィヨルド
体力:B
魔力:A
スキル:突剣術 魔力操作
魔法:氷結魔法 水魔法[上級」 無詠唱
炎帝:イーリアス
体力:A
魔力:A
スキル:槍術 魔力操作
魔法:火魔術[極] 無詠唱
「初めて自分以外の魔王に会ったけど、自分のステータス見ちゃうと、なんだかな・・・・うちの部下達とそんな変わらないような」
「陸様、それは陸様が魔王を越えた存在なのです!その辺りの小物の魔王共と一緒と考えないでください」
(な、ナンダッテー! 驚愕の事実!!いつの間に魔王の枠を越えていたんだ僕は・・・)
(当然だ! ワシは魔界に敵なしと思ったから人間界に殴り込みをかけたのだからな!)
(なんだか、フェラーリのエンジンを積んだ軽自動車って感じな気がするなぁ)
(その例えはよくわからんが、力の使い方は慣れていけばよい)
(よしなに願います)
「数字的に見ても、部下に魔王クラスが何人もいることに・・・・・ブツブツ」
「はい、全ては陸様のお陰です。皆喜んでおります。」
「ゴーレム部隊もそこそこ魔王レベルだし・・・40体もの魔王クラス呼び出すって、確かに異常だわ」
陸は前々から自らの力に異常性は感じていたものの、比較対象がいなかった為に、魔王とは、このようなものと位置付けてしまっていた。
未だ実感していない自分の力がどうなのかは試したいところではあるが、陸の性格上好んで戦闘を行うタイプではないので、陸自身モヤモヤ感はある。
徐々に戦闘の訓練を行い、自信を付けて行くのがベストだろうと胸に秘めるのだった。
★★
「くそっなんなんだあいつら!」
イーリアスの弾幕は意味を成さなかった。
着弾する魔法を無視して突っ込んでくる敵は初めてだったし、自分の魔法がここまで通用しない相手も始めてだった。
何も防御魔法もせず、腕で弾くだけ、身体に当たっても無傷であり、恐怖に値するに十分なものだった。
「くそがあああああああああ」
「イーリアス下がれ!ベルフェも!」
「あいつら許せない!」
獣人化したベルフェが今更止まれる訳がなかった。一体のゴーレムが、イーリアスの弾幕を物ともせず突っ込んでくる。
ベルフェもそのゴーレムに触発され衝突し、交通事故とも思わせる衝撃音が響きわたる。
ゴーレムの腹を突き立ったベルフェの強化され、伸びた鉤爪は、見事に砕け散り、ゴーレムの右ストレートがカウンターで顔面を捕らえた。
インパクトの瞬間ベルフェに衝撃波が襲い、身体全体殴られるような衝撃が加わった。
音速の右ストレートには、ソニックブームが加わりベルフェの身体は吹き飛ばされた。
拳程の鉛球が、拳銃と同じ速度で飛んだのだ。
普通の人間の頭なら木っ端微塵だろう。
「うっぐ・・・・なんなんだこいつら・・・」
「イーリアス、撤退するぞ。悔しいが、手に負えん」
「くそがっ」
「許せない、許せない、ゆ゛る゛せ゛な゛い゛!!」
「ベルフェ!止すのだ!!」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
フィヨルドの静止を振り切り、断末魔を上げてゴーレムの集団に突っ込んでいくベルフェは、完全に理性を失い、ケルベロスの仇を討たんがするため、駆け出していた。
ベルフェは気が付くと宙を舞っていた。
城壁の兵士、冒険者、飛龍部隊による魔法の集中砲火である。
ゴーレム出現から敵の攻撃がゴーレムへ逸れた為、各々の部隊のリーダー達が、好機を狙っており、その瞬間が各部隊の思惑と一致した瞬間だった。
ベルフェの敗因として、部下を殺されて動揺した己の精神の弱さ、経験の少なさだろう。
だが、仲間を殺され、殺した相手が目の前にいる時、冷静でいられることが出来るまでに、どのような過酷な経験を積まなければならないのか・・・獣人として、仲間意識の強いベルフェだったが、皮肉にも仲間意識が仇となってしまった。
意識を刈り取られたベルフェは、地面に落ちたその場でゴーレムの手により止めを刺された。
「ちくしょおおお!」
「イーリアス!一旦引くのであります!!」
「フィヨルドてめぇ、悔しくねーのかよ!!」
「このままでは二人とも殺れますよ!ゴーレムの術者も凄腕の筈。ここは一度引き、それなりの準備をするのであります」
「くそが・・・必ず殺す。絶対殺す!!」
イーリアスの執念とも怨念とも取れる捨て台詞を後に、魔王の二人はその場から立ち去った。
時刻は既に、日が沈みそうになろうとしていた。
その夕日を、兵士達は長い時間眺めており、長い一日がようやく過ぎた瞬間だった。




