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第2話 伊織との出会い

 “演劇サークル 仲間募集! 初心者大歓迎”



 放課後、まだ少し肌寒いキャンパスで部活やサークルの掲示板を眺める。


 中学、高校と帰宅部だった俺の目を唯一引き付けた「演劇」の文字は、特別輝いていた訳じゃないが異様に心奪われた。


 演技なんてしたことが無い、といえば嘘になるがあくまで趣味の範ちゅうである。というか演技をしたことない人間なんていないだろ。



 興味に身を任せて歩く。人間観察の趣味が活かせるかもしれない、という淡い期待を捏造して、サークルの部屋のドアをたたく。


「おっ新入生? いらっしゃい! と言っても、僕も1年だけどね」


 テーブルすらない6畳ほどの部屋の真ん中で、彼は座布団にあぐらで座っていた。明るい茶髪を片方だけ耳にかけていて、小さな窓から入る光が金のピアスを照らす。



 ――これが、伊織との初めての出会いだった。



「初日に来て即入会希望したんだ。今は先輩たち授業で、僕は留守番中」

「1年なのに?」

「入会希望者が来たら対応するって言ったから。実際、君が来たしね……あ、名前は伊織誠ね」

「俺は葉月透」

「葉月ね、了解!」


 二人きりの空間だった。よく笑う人だった、よく前髪を触っていた、よく体を前後に揺らしていた。

 その日はすぐに帰って、伊織のことを例のノートに書き込んだ。


 すぐに1枚が埋まった。


 書き終えた文字を眺める。

 そのノートが「台本」として動き出すのは、まだ先のことである。


 口調を真似てみる。

 鏡の前で表情管理をしてみる。

 間を真似てみる。


 しぐさを真似ようとして、そこでやめた。

 これ以上はまだできない。それは技術不足か、観察不足かは分からないが、まだそのときでは無いと感じたのだ。



 次の日、先輩がいたのでその場で入会届を出し、俺は晴れて演劇サークルの一員となった。


 演技の天才、八代と出会ったのは、その少し後のことだ。

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