十三章・3
「……ぅぅっ、ああっ、ああああ! 美弥子、美弥子ぉぉぉ……」
ぼたりぼたりと、とめどなく俺の目から涙があふれてきた。
「美弥子おおおおおぉぉぉぁぁっ……!!」
喉が張り裂けんばかりに、俺は叫んだ。
「何だよ、何だよそれ! ちくしょう!」
忘れてほしいだと?
俺の生きる意味が、美弥子を忘れることだと?
美弥子のことを忘れることが俺の生きる意味ということは、俺が生き続ける限り、忘れ続けなければいけないということだ。
「それってつまり、一生忘れるなって言ってるのと同じじゃないかよ!」
俺の中で、何かが弾けた。
「今さら好きだなんて言われても、もう遅いんだよ!」
俺は抑えきれない感情を、叫んだ。叫び続けた。
「何で、何で死んじまったんだよ!? 何で美弥子がそんな目に遭わなきゃいけなかったんだ!? 病気にならなきゃいけなかったんだ! 美弥子が何かしたか! したのか!? してねえだろうがよ!! くそったれが!」
俺は握りしめたこぶしを机の上に叩きつけ、膝からくずおれた。
「くそぅ……。美弥子がいないのに、好きだなんて言われても、どうしようもないじゃないか。今さら、遅いんだよ。もう、会えないのに。声も聴けないのに……」
俺は、美弥子にたくさん大切なものをもらった。
だけど俺は、何もあげられていない。何も、返せていない。
俺は、これから、どうすれば……。
すると、便せんの間から一枚、小さな紙が出てきた。
葉書だった。
○
追伸
つっきー、この先お仕事とか、どうするのですか?
一咲子さんとお母様を困らせてはいけませんよ?
わたし、実はあの枯山水で、つっきーのことを考えていたのです。
つっきーの将来のことを、わたしは考えていました。
わたし、つっきーは学校の先生とか、いいと思います。
学校に行っていないわたしが言うのもなんですけど。
それでもつっきーはきっと、優しい先生になれると思います。
わたしにいろんなことを教えてくれたみたいに、今度は先生としてみんなにいろんなことを教えてあげるのはどうでしょうか?
候補の一つにしてみては?
○
……うるせえ。余計なお世話だよ。自分の心配だけしてろって話だ。
最後の最後まで、どれだけいい奴なんだよ。
本当に、いいやつだった。いや、今だっていいやつだ。
俺は、美弥子の残り少ない時間をもらった。そしてその時間の中で、美弥子から大切なものをたくさんもらった。
もう、俺は美弥子に直接何かを返せないけれど。
せめて、美弥子の想いに報いよう。
せめて、俺にできることをしよう。
美弥子が生きた意味を、美弥子が俺に託した生きた証を、無駄にしないように。




