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十一章・1

 ということで、このあたし、伊嶋 一咲子は、年下の美少女、三園 美弥子ちゃんを、今日一日、お兄ちゃんから任されてしまった。

 てか、美弥子ちゃんを任せるとかお兄ちゃんって美弥子ちゃんの何? 保護者? 何様?


 「つっきー、用事って何なのでしょうね?」


 「さあ、何だろ。ま、何かしてるんでしょ」


 お兄ちゃんは今朝早く、忙しそうにどこかに出かけて行った。

 お母さんも今日は用事があって、今家にはあたしと美弥子ちゃんだけだ。


 「そうですか。何、しているのかなあ……」


 あたしの隣で、美弥子ちゃんはぼうっとした表情をしている。きっと、お兄ちゃんのことを考えている。

 あの男め……。こんな子をこんなにしたんだから、それ相応の責任を取る気はあるんでしょうね。無かったらぶっ飛ばす。ま、お兄ちゃん変なところ真面目だし、心配ないだろうけど。


 それに、この子は……。


 お兄ちゃんは何も知らない。

 きっとこの子は、お兄ちゃんには何も言わないだろう。

 でも、いずれは知れること。

 どうするんだろ?


 美弥子ちゃんは、あたしには打ち明けてくれた。

 きっと、歳が近くて、だけど年上だから、話しやすかったのかもしれない。

 ま、そのへんよくわかんないんだけど。

 人の気持ちっていうのは、難しいものですなあ。


 「さて、美弥子ちゃん、今日は何をしようか?」


 まあいい。あたしはもう、全部呑み込んだ。

 全部、無理やり呑み込んだ。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる、らしい。


 だからこの子には、今日という日を楽しく過ごしてもらうことにしよう。


 「そうですね……あの」


 「何?」


 「普通、わたしくらいの歳の子は、休日をどう過ごすのでしょうか?」


 そうか。美弥子ちゃんはずっと病院にいたから、普通の女の子の休日の過ごし方を、知らないんだ。


 「うーん、そうだなー。人によるけど……、うーん、そうだなー」


 「そ、そんなに難しいことですか?」


 「いや、女子高生と言う生き物はね、難しいから」


 いやホント女子高生ってめんどくさい生き物。やばい。女子高生やばい。現役女子高生が言うんだから間違いない。


 「休日の過ごし方って言っても、友達といるときと、家族といるときと、一人でいるときと、あと男といるときとで変わるし」


 女子高生は変身する生き物なんだよなあ。無論、あたしもだけれど。


 「そんな、四パターンもあるなんて……」


 「そんな驚かなくていいから」


 それに、なんならもっとある。八方美人とは言うけれど、女子高生は八つ以上の人格を持っている。ルパンもびっくりだ。


 「うかつな質問でした。軽率なことを言って、すみませんでした」


 「反省のしどころが何か違う」


 やっぱり美弥子ちゃん、ちょっと変わってるな。ま、かわいいからどうでもいいけど。


 「それじゃ、美弥子ちゃんはどのすごし方をしてみたい?」


 「そ、そうですね。では、お友達との休日というのを希望します。……一咲子さん」


 美弥子ちゃんは急に真剣な表情になると、あたしの目をじっと見つめてきた。


 「な、何かね?」


 どぎまぎしたせいで変な問いかけになってしまった。


 「あの、わたしと、お友達になってください!」


 「……ん、あ、え?」


 ……おっと?


 「あ、やっぱり、嫌ですか? 嫌、ですよね……。すみません、急に、こんなこと」


 「いやいやいやいやちょいちょいちょい!!」


 美弥子ちゃんが泣きそうな顔をしたので、あたしは慌てて声をあげた。


 「いや、全然嫌とかじゃなくって、何て言うか、その……、あたしたち、前から友達じゃないの?」


 「え?」


 「え?」


 あたしたちの間に、妙な空気が流れた。


 「あれ? あたしの勘違い? だったら超ハズいんですけど! え、うそ、あたしたち友達じゃなかったの!?」


 ショック! 一咲子ショック!!


 「い、いえ違うんです! ご、ごめんなさい! わ、わたしたち、もう友達だったのですか……。へえ、そうだったのですか……」


 「そ、そうだとあたしは思っていたんだけど……?」


 え、違うの? あたしってば超痛い子じゃん。友達だと思ってた子が実はそうじゃなかったとか、女子にとってはトラウマもんだよ?


 「えと、あの、わたし実は、今まで友達は誰もいなくて。だから、友達の作り方と言うか、どういうのが友達なのかもよくわからなくて、ですから、あの、わ、わたしたちは友達です!」


 「ご、ごり押しだね……。でも、ま、そういうこと。あたしたちは、友達だよ」


 あたしは美弥子ちゃんの前に、右手を差し出した。


 「改めて、よろしくね。美弥子ちゃん」


 「あ、はい! よろしくお願いします。一咲子さん!」


 そうしてあたしたちは固く、固く握手を交わした。


 「ところで」


 「ん?」


 「一咲子さんも、男の人と過ごす休日の過ごし方を持っているのですか?」


 「ふぇっ!? は、えっ!」


 急に何を言いだすんだこの子は!?


 「聞いてみたいです。いったいどのように過ごすのですか?」


 「そ、そんなことより、ほら! 出かける準備! お化粧と服選び! やるよ!!」


 「えー。教えてくださいよー」


 美弥子ちゃんは少し意地悪なものを瞳の奥ににじませながらしつこく聞いてきた。


 「いいからっ!」


 あたしはどうにかして美弥子ちゃんを鏡の前まで移動させた。


 美弥子ちゃんて、意外とSなのかも……。

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