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フォンノイマンのレクイエム  作者: 加茂晶
第7勝 世界は絡み合う人の想いでできている
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7.17. 北山社長の裏事情

 それから、オレと里奈は急いだ。


 ようやく里奈を手に入れたのだ。わずかな時間でも彼女を放っておいて、手元からこぼれ落としてしまうようなことは、二度とごめんだ。

 そして、里奈も同じように思ってくれたようだ。

 お互いの気持ちを確認できたオレたちは、デートや話し合いを後回しにした。「結婚」への第一歩を早く踏み出したい。それが、オレたちが短い話し合いですぐに一致した結論だった。

 まずは、「お見合い」の結論を大人たちに示すことだ。それで、お互いの「保護者」…オレは加賀さんに、里奈は叔母に…結婚の意志を電話で伝えた。

 すると、加賀さんと叔母、それに時宮准教授は、まだインペリアルパープルホテルのラウンジで談笑中だという。そこで、里奈と手を繋いでラウンジへ向かった。


 途中、窓から庭園が見えた。

 今日は天気が良いこともあって、結婚式やら結納やらデートやら…。カップルがあちらこちらで撮影中のようだった。木田と高木さんも、あの中にいるのかもしれない。

 多様化が進んだ昨今のことだ。よく見ると、昔からの和装、洋装の他にも、着ぐるみやらコスプレやら…いろんな「2人組」がいるようだ。

 ふと、里奈を見ると、里奈の視線はある女性に釘付けになっていた。それは、新緑の庭園の中でクラシックなウェディングドレスをまとった、やや小柄な女性…里奈と同じくらいの体格だろうか?

 そこで尋ねた。

「里奈はウェディングドレスを着たいの?」

「う〜ん、確かに着てみたいな。けど…」

「けど?」

「なんでだろう? あの人が、特に、幸せそうに見えたから…目が離せなくなっちゃって。」

 もう1度、里奈を振り返って、言った。

「里奈の白無垢姿も見てみたいな。」

「白無垢? なんで?」

「今の振袖姿がかわいいから、白無垢もいいかなって。」

 顔を赤くして黙り込む里奈を見て、オレ自身、相当のろけていることに気づいて黙ってしまった。


 やがて、ラウンジに着くと、ラウンジの入り口から遠い席の3人が手を振っているのが見えた。そこで、3人の前まで歩いて行った。

 そして、3人の前に立つと、言った。

「オレと里奈は結婚します。」

オレの言葉を継いで、里奈も言った。

「これからも、よろしくお願いいたします。」

そして、2人そろってお辞儀をした。

 すると、叔母が言った。

「里奈ちゃん、良かったわね。」

里奈がパァっとした笑顔で応える。

「はいっ!!!」

 加賀さんは、里奈が応えたのと同時にさっと席を立って、どこかへ歩いて行った。が、手を振って皆を呼んだ。どういうことかと思っていると、時宮准教授がつぶやくのが聞こえた。

 あるいは、オレに聴かせようとしたのか…?

「加賀さんは気が利くなぁ。5人で座れる席を確保しに行ったのか…。」

と。

 皆で加賀さんの確保した席に着くと、時宮准教授が叔母を向いて言った。

「どうやら、北山社長から桜井君に説明する時が来ましたね。」

「そうね。時宮先生、加賀さん、それに里奈ちゃんにも協力してもらうわよ。」

すると、3人がうなずいた。

 どういうことだろう。オレ以外、みんな知ってる? …グルなのか? 今「幸福」なオレにとって、それはどうでも良いことだけど…。


 叔母が語り始めた。

「ことの始まりは、桜井俊さんと私の姉の綾との結婚だったと思うのよ。…私としてはね。」

 その言葉を聞いて思い出したのは、ストレージにあった、母のこんな言葉だった。

「里奈は、すっかり祥くんに懐いたわね。」

そんな両親の様子は、自分たちの幸せよりも、子どもたちのことを想って家族になるかどうか検討していた…そんな感じだった。

 叔母は話し続けた。

「2人はね、祥太君と里奈ちゃんが共に片親だったことを、とても気にしていたのよ。それで結婚した…と言ってもいいくらい。そんな2人が男と女としてお互いを意識するようになったのは、ようやく亡くなる直前だった…と私は思っている。そして、初めて夫婦水入らずで出かけた旅行の帰りに、あの飛行機事故で遭難してしまった。」

 そう語った叔母の目は、どこか遠くを見ているように思えた。

 そんな叔母に、時宮准教授がツッコミを入れた。

「ですが、お2人が結婚した時、お師匠はまだ大学で教鞭をとっておられたんですよね。そして、倉橋社長のお父上の量さんが師匠をKAONソフトに勧誘した後に、北山社長がKAONソフトを乗っ取った。」

倉橋社長? 北山社長? その2人は別人なのか?

 不審に思って叔母の顔を見ると、彼女の表情は少しこわばっているように見えた。一方、加賀さんは小さくうなずいていた。

 叔母はオレと里奈の方を見ると、少し視線を落として言った。

「そう、北山…当時の私の夫が、『KAONソフトを改革する』と言いだした。私もそれを信じて協力した。でも…それは父や俊さん、それに時宮先生と加賀さんには裏切り行為だったでしょうね。北山は、最終的にはレゾナンスに()()()()()()を売り飛ばすつもりだった。私はギリギリになって、ようやくそのことに気づいた。それで、綾と俊さんに協力してもらって、なんとか防いだのよ。」

 すると、加賀さんも口を挟んだ。

「北山社長はご存知なかったと思いますが、実は我々社員も2人に協力していたんですよ。」

「そうだったの…。今さらだけど、ごめんなさい。」

そう言って、叔母は頭を下げた。

 少し青ざめた叔母は、それでも語り続けた。

「あの時、夫は平山龍生に言いくるめられて、KAONソフトの証券を買い占めた。そこに銀行と社員持株会を味方につけて、それに私の持ち株分を足せば2/3を超えるところまで来た。それで、経営権を父から奪って、夫が作ったペーパーカンパニーだった()()()()()()に吸収したの。」

 今、伯母は独身のハズ…ということは、「北山」とは叔母の元夫の苗字なのだろう。それで、叔母も「北山社長」と呼ばれているのか?

 だけど、叔母の元夫が社長だったのに、今は叔母が社長と呼ばれているのはなぜだろう?

 その疑問は、すぐに叔母が解いてくれた。

「だけどレゾナンスへ売却される前に、俊さんが金融機関の協力を取り付けて、社員持株会も離反した。それに、私と綾がレゾナンスへの売却に反対して経営権を夫から奪ったの。」

それで叔母が社長になったのなら、確かに彼女は「北山社長」であり、「倉橋社長」でもある。

 そして、「北山社長」はこう続けた。

「それでも、レゾナンスは()()()()()()の株式をいくらか持っているから、今でも口出しはして来るわ。」

 なるほど、()()()()()()の経営が大変そうなことは分かった。それに、この話で腑に落ちたことはある。おそらく、リアライズエンジン開発の裏事情は、こんなことだったのだろう。


今話で、かなり伏線回収できたと思います。

あとはもう最終回へ向かって書くだけ…になりました。

そうは言っても、始めたものをキチンと終わらせることも重要です。


でも、全ての伏線は回収してはいけないのかも…な〜んてことも考えています…。


次話もお読みいただけると幸いです。

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