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夕食会から数日が過ぎた。
あの日の刺客はリリンを次代にと推していた一派の強硬派が企てた独断だった事が判明した。
関係者各位を処断して落ち着いたのもつかの間、俺の身に少し異変が起きた。
俺の身を心配しすぎた母君エリンから拘束されたのだ。
本人に拘束つもりなどさらさらなかったようだが守護と行動制限のかかった魔具を両の足首につけられてしまったのだがこの魔具との相性が悪すぎた。
普通の神族であれば何も問題のない普通の守護と行動制限のかかるだけの魔具なのだが俺は半人半神である。
人として生命力を夥しく吸われたのである。
後から調べた結果、知った事実だがこの魔具。
元は神族から祝福を受けた人が罪を犯した際につけられる処刑具だったことが判明した。
何が言いたいかといえば付けた本人にしか外せないばかりか神族でなく人が身に着ければ一週間も経たずに死に至ってしまう人殺しの魔具だった。
人としての自分とは相性が最悪だったのだ。
神族の部分が本来の生命力を吸う力は半減してはいたものの俺の体調が徐々に悪化していった。
ただでさえ神界に置いては人を拒絶する土壌のある場だ。
俺の体調は万全とは言い難く、重い体で神界の空気になれた矢先の出来事だった。
そして現在、最も事態は悪化していると言っていい。
なぜかといえば、先のリリンの支援者による事態の鎮静化と事実確認、及び処断された者の引き継ぎ確認のために母君エリンとリリンの実妹のリリスが駆り出され、城を出ていたからだ。
魔具を付けた本人が不在だったのである。
魔具を外すことができす、その事態は徐々に俺の体調と共に悪化していった。
初めの初日はその魔具の性能に俺自身が、気がついていなかったということもありリリスと母君を笑顔で見送った。
当初の日程は二週間ほどでその間であれば俺の図書室の案件中であったので問題がないと判断したリリスは間違っていなかった。
行動制限も自室と図書室その間の通路という制限であったので食事もない神族にとって無理のない制限だった。
おれもリリスが居ないということもあり、やることなど書を読みふけることしかなかったので初日は確かにその制限でも何も問題はなく自室で過ごしていた。
俺が異変に気がついたのは翌日の朝のことである。
朝、足元の激痛で目が覚めた俺はその時初めて事態が悪い状況になっていることに気がついた。
足元が魔具を中心に壊死しかけていたのである。
慌てるように俺は魔力を使って回復魔法を足元にかけた。
足元の壊死は回復したもののなぜか夥しいほどの魔力消費を消費した。一回で魔力切れを起こしたのだ。
魔力切れから俺は意識が途切れ、気を失ってしまった。
次に目を覚ますと空腹を腹が訴えるとともに足元に再び激痛が起こる。
確認すると足元は再び壊死しかけていた。
少し壊死が広がっている気がする…
痛むものの空腹をどうにかするのが先と判断して苦痛をこらえ食事をして窓を開けるとまだ魔力は回復していなかった。
俺自身室内に変化がなかったということもあり時間経過が麻痺しており気を失っていた時間が丸一日過ぎていたことに気がついていなかった。
ソーマを作って飲んだが魔力は回復しなかった。他の回復薬も飲んだが同じだった。
仕方なく魔力回復させるのにリリスから貰った神力を使い魔力変換し、回復を足元に行うとその消費から俺は再び気を失うことになった。
そんなことを五回繰り返した。
五回も繰り返せば当然だが、丸一日気を失っていることにも気がついた。
行動制限のせいで父君に面会もできず事態は悪化していく。
五回目に目を覚ますと父君が部屋にいた。
その顔はとても不安げに心配そうにしていた。
そばには治癒師と思わしき数名がいた。
五回目となれば壊死部分がさらに広がりを見せ俺の体調もいよいよまずい状況になっていた。
激痛の中いつものように腹が空腹を訴えて起き上がり俺は収納から軽い食事をとる。
「リュウ、エリンに至急、城に戻るように使いを出した。気がついてやれなかったことに済まない」
俺は首を横に振ってその言葉に意を示す。
口の中に物が入っているからだ。
俺は飲み込み聞いた。
「いえ、それよりも母君はいつ戻れますか。リリスも一緒なはずですよね?」
「ああ、だが使いがエリンの元へ到着するのに一日かかるように城に帰ってくるには早くても一日かかる」
「二日かかると…」
「ああ」
俺は今の状態確認のために食事をしながら窓を開けて確認した。
魔力も戻っていない。神力も今回変換すれば次の分は無理か。
「ここにいる治癒師は神族の治癒師でお前の状況を回復する術がないといった。いままで何か治癒をしていたのか?」
俺は頷く。
「魔力を使って魔法で治癒をしていたが魔力が回復しない。持っている回復薬を使ったが効果が全くないから仕方ないから神力を魔力変換して回復させてた」
「神力を使って魔力変換したのか」
「そんなことができるのですか。神界は下界と違い、魔力消費は十倍にもなります。壊死部分の回復ともなれば膨大な魔力が必要なはず。可能なのですか?」
「ああ、でもリリスから貰った神力も今回の魔力変換で底をつく。回復手段がもうない。リリスたちの帰還が早いか、俺の体の壊死が先か…」
「………!」
壊死それは事実上の俺の死につながることだった。
それでも回復しないわけにはいかないので神力を魔力変換していつものように回復呪文を壊死部分に唱える。
瞬く間に壊死部分はなくなり回復したが同時に魔力枯渇のために意識を失った。
俺は意識を浮上させるとそこには治癒師が俺の体調を見ていたのか俺の意識の浮上に安堵の表情を浮かべて背後の者たちに父君に知らせに行ったのだろうと思われた。
壊死が広がっているのか足先は既に感覚はなく膝上にまで激痛が走っているので足の大部分が壊死で広がっていると知った。
激痛から逃れるように意識が徐々にかすれかかっていて体調悪化に伴い息も上がっていた。
体の壊死が進んだことで空腹も訴えなくなった。激痛だけが酷く俺を苛んでいた。
意識を保てそうにないな…このままじゃ……
死を覚悟するしかなかった。
忍び寄る死に影にクリスたちの顔が浮かんだ。
心配をかけるつもりはなかったんだが俺が帰らなかったら心配どころじゃない…あの世界が崩壊するのに…
揺れる視界の中、父君の姿が見えた。
「リュウ!」
その顔はとても不安げに満たされていた眼をみた。
激痛と乱れる息の中、聞きたいことは一つだけだった。
神力もあとわずかになっていてリリスと再会する前よりも酷い枯渇状態だった。
魔力も使えるほどの回復はしていないことも感覚で知っていたので打つ手が残されていなかった。
「……母君と……リリスは………?」
アルフレードは首を横に振った。
「すぐに帰還すると神力で伝えてきたがそれは半日前だからまだ帰ってきていない…」
それを聞いた俺は心が冷えていた。揺れる視界が意識もそう持たないことも理解していた。
「………そう…か……」
最後に意識が途切れる前に神力を生命維持に注ぐように切り替えた。
恐らく俺の意識のある間には帰ってこれないだろう。リリスが神力を注いでくれたら少しでも意識が戻るように維持に切り替えておくしか…
父君の傍で治癒師たちがいろいろとおれに何かしていたようだがあまり効果はなく、魔具もどうしても破壊することもできず足元に装着されたまま、時間が経つにつれてやがて俺の意識は擦り切れるようになっていた。
忍び寄る死を自覚し、手を握り頬を触る父君に呟いた。
「……また…父君たちを……悲しませて……しまうのかな………おれは……」
「バカを言うな!エリンたちはきっと間に合う!」
俺は力なく笑った。
「……ああ……まってる……。リリスに……しんりき……を………と………………」
俺の意識はそこで途切れた。
軽く握っていた手に力が入らなくなりアルフレードの手から滑り落ちた。
「リュウ!しっかりしろ意識を保つんだ…!」
アルフレードは頬を叩くがその意識は戻らなかった。
リュウがその意識を失い半日後、慌てるようにしてエリンとリリスが夜の時間になって城に帰還してきた。
すでにリュウの容態は悪化の一途をたどり、城中に伝わっていて重苦しい空気が流れていた。
帰還して早々に二人はリュウの居る部屋に直行した。
リリスはリュウを連れて戻ってから二人で過ごしていた場所の空気が死臭のにおいが充満していることに驚き恐怖した。
「リュウ!」
慌てるように悲鳴を上げるように名を叫び駆け寄る。側には父アルフレードもおりその表情からかなりの事態に切迫している事を実感してしまった。
リリスは失う恐怖からリュウの頭を抱えるように触る。
その顔はすでに青白い色をしていて体温も少し冷たかった。
エリンも駆け寄り事情をアルフレードから聞いていた。
「最後に意識を失ってから半日経つ。治癒師たちでは人に処置できる術がない。それまでは一日一度リュウの意識が回復しては自分の魔力を使って回復していたが…二日前にそれもできなくなった」
「魔力って。この界で使えるの?」
「治癒師の話では使えはするが下界に比べ十倍の消費があると言っていた。壊死を直すほどの魔力だ。夥しいほどの消費を感じた。その消費のせいだろうなこの一週間リュウの意識はずっとなかったに等しい」
「そんな…」
エリンは蒼い顔をしていた。
「エリン。足の魔具を外しなさい。あれがすべての原因だ」
「でもあれはアルフちゃんにも使っていたものよ…?」
「バカ野郎!あれは人殺しの処刑魔具だぞ。半人半神のリュウに使えばどうなるかくらいわかるだろう!」
「え……、そんな…」
「知らなかったのも無理はない。あれはすでに失われた技術で作られていて今回の件で調べた結果突き止めたくらいだからな」
エリンは真っ青になって言葉も出なかった。
「エリン様、事態は一刻を争います。すぐにお外しください。でないとリュウ様は本当にお命が…」
エリンは治癒師の言葉にハッとなった。
慌てるようにエリンはリュウの足元を見る。
治癒師はそっと慎重に足元の布を外した。
そこはすでに酷い有様で壊死が広がり死臭さえ漂っていた。
少し触れただけでも形を留めているリュウの足首が崩れ落ちそうなほど変色しきっていた。
リリスは頭を抱えながらもそのエリンの動作を見守っていた。
「酷い…死臭の匂いはそれなのか…」
リリスはリュウのその足元を見て愕然としていた。
「ゆっくりとお願いします」
「ええ」
エリンは自分のしたことでリュウの命が脅かされている事実を直視せざるを得なかった。
エリンはゆっくりと慎重に魔具を外した。
治癒師たちも足を動かさぬように慎重に魔具を取り払う。
元凶だった魔具を取り払い一同はホッとした。
だが安心できなかったのはリリスだった。
取り払ってもなおリュウの意識が戻らなかったからだ。
体温は冷たいままで依然として容態が悪いことに変わりはなかったからだ。
リリスは顔を叩き揺さぶるように声をかける。
「リュウ…起きてくれ……」
力なく瞑られた眼はあくことはなかった。
リリスは再び彼を失う恐怖で満たされた。悲しみがリリスを襲う。
「嫌だ!リュウ。目を覚ましてくれ。もうお前を失いたくないんだ。いくらでも神力ならあげるから…!」
涙を流し衝動的にリリスはリュウの唇を奪っていた。
リリスは思いのたけを込めるように神力をリュウに送った。
リリスは一口で送れるだけリュウに神力を与えて唇を離した。
そのまま首筋に顔を埋めて泣き崩れてしまう。
リリスの泣き声が響く中それは起こった。
壊死のしていない腰から上の部分が淡く輝いた。
それに気がついたのはアルフレードだった。
「光った?」
微細な変化に治癒師も気がついてリュウの容態を見ると戻った神力そのすべてが生命力に注がれていたからだ。
生命力、すなわちHPが半分回復していたのである。
神力を見ると再び最低値を示していた。
「神力のすべてが生命値に変換されている。もう少し回復すれば意識も戻るかもしれません!」
「え!」
泣き崩れていたリリスがその言葉に起き上がる。
「本当か、それは!」
アルフレードが聞いていた。
「はい」
その言葉を聞き、いち早く行動したのはリリスだった。
先の願いそのもののように再びリリスはリュウに神力を口移しで送った。
今度送った神力は全てのHPを回復することはなかったが代わりにゼロだったMPが少し回復していた。
送った大部分の神力はそのままだったのである。
投げ出されていたリュウの手の指先がピクリと動く。
それを合図にするようにリュウの頬には赤みが差し、震えるように目がその碧の目を周囲にさらした。
徐々にその目には意志が戻ると間近のリリスを見た。
「……りりす…?」
「リュウ……!」
リリスは感極まり再びリュウの唇を奪った。同時にリリスから再び神力が送られてきた。
唇を奪われていたリュウは泣いているリリスに片腕を持ち上げて宥めるようにその肩に手を置いた。
唇を解放されてやっと言葉を発した。
「リリス…ありがとう…」
だが下半身に広がる激痛はリュウを苛めた。
「リュウ…」
リリスはやっと落ち着いたのか抱えていた頭から少し身をはがした。
そこで俺は初めて周囲を見るゆとりができた。
リリスの横には治癒師がその正面にアルフレードが座っていてその隣の足元にエリンがいた。
おれは神力が戻っていてリリスがくれたことを知る。
腕を持ち上げ壊死が広がる下半身に手を置いた。
神力を使い魔力に変換して全回復させると神力はその半分以下に下がるのを実感した。
その神力変換はリリスにも理解したのか少し目を見開いて驚いていた。
「リュウ?」
おれはそのリリスの問いに答えることなくブツブツと口元で術を唱えて回復呪文を唱えた。
白い光が俺を包みこむ。
桁違いの魔力放出にさすがに驚いている一同を尻目におれは全てが一度で回復しきらないことを実感して魔力がゼロになる前に術を終えた。
術の影響から大きく息を乱し整えた。
壊死が足元にまで下がることを実感しておれは起き上がり座って足元を見た。
「酷い足元だな…」
「回復しきっていないな」
アルフレードの言葉に答えた。
「ああ、ひどすぎたようだ。魔力枯渇するとまた意識がなくなる。それは少し困るから手前で止めたんだ」
「リュウ」
「ん?」
リリスを見た。
リリスは俺の頬を両手で覆って三度俺の唇を奪ってきた。
今度は長い口づけになった。その分送られてくる神力も重くずっしりとたくさん送ってきた。
「…ん……」
さすがに重い神力はクルので無意識にくぐもってしまう。
やっと解放したリリスは泣きはらした赤い顔で言ってきた。
「また、お前を失うかと思った…」
おれは頭を撫で安心させるように言った。
「心配させてごめんな…」
「うん…」
俺は足元を見た。
再び神力を使い魔力に変換する。
二回目の回復呪文を唱えた。
同じように白い光で包まれ今度は完治したことを実感した。
足をゆっくり確認するように足指を動かし隅々まで壊死が消えたことを確認した。
足を抱えるように指で確認しても完治していた。
それを見てエリンが泣きながら謝ってきた。
「リュウちゃん、ごめんなさい。私のせいでこんな事に……」
おれは素直にその謝罪を受け止めた。背後では治癒師たちが部屋から撤収を始めていた。
「リリスのおかげで命を拾った。俺もうかつだったよ。あの魔具があんなにも相性が悪いとは思ってもみなかったから」
「リュウちゃん…」
「リュウ、あの魔具は太古に作られたもので誰もその性能を把握していなかった。まさか人限定の処刑具とは思いもよらなかった。すまなかったな」
「気にしてませんよ。そうでしたか、処刑具とは。人がいない以上把握できないのも無理のない話だな」
「リュウ。戻ったとはいえまだ無理はするな。寝ていろ」
リリスはそう言って俺をベッドに押し倒した。
「リリス。わるいな、いつもお前から神力を貰ってばかりで何も返せてない」
「ふふ、気にするな。お前にやるために溜めた神力だ。お前の命を繋げるなら幾らでもやる」
「でもな…」
「そんなに気にするなら体で返して貰おうかな」
リリスはジッと半裸状態の俺の全身を舐めるように見た。
というのも治癒師たちの手で着ていた衣服は取り払われ、治療用の布一枚姿だったからだ。
「リ、リリス?」
俺はそのリリスの視線に悪寒を感じた。
「お、お前、回復したばっかりの俺に何させるつもりだ…」
「心配するな、今日はしない。今日はな」
そう言いながらもリリスは俺の体を視姦するのをやめない。
舌を舐めて言った。
「本当にお前の体は程よく筋肉もついていて男らしい体でそそるんだよ」
助けを求めるように周囲を見るとあんなにいた人たちは誰も居なかった。
「リュウちゃん、リリスちゃん。今日はゆっくりおやすみなさい。ごゆっくりね」
母エリンがそう言って遮音・遮光カーテンをしっかり閉じて部屋からアルフレードを連れて出て行った。
「あ…」
二人きりなったことで俺は助けがない事を知った。
そうするうちにリリスは肩先で結ってあった布の結び目をほどき引き抜いて俺を全裸にさせる。
身の危険を感じてもどうすることもできず、かといって逃げることもできないので焦るしかない。
「ど、どう見ても何もしない目つきには見えないんだが…」
「お前が生きてるって全身確認したいんだよ」
そう言ってリリスは俺の弱点の耳朶を甘噛みした。二回も関係を持てば当然だがリリスは俺の弱点を把握していた。
俺の体はそれだけで陥落してしまった。
「…………!…………」
その日のリリスは確かに俺と関係はしなかったが、かわりに全身をくまなく愛撫されキスを落とされて酔わされてしまった。




