外伝 竜王の帰還
外伝と名付く話ですが時系列は世界樹の後の話なので本編にいれるか迷ったのですが、補完的な話なので外伝です。
ここでの初登場キャラはいずれちょこっと出る予定(本編には絡みません)
少し長くなってしまった感が…
外伝 竜王の帰還
二人は空を飛び、風を切っていた。
赤い竜と漆黒の竜は上下を入れ替えることはあっても赤い竜が先行していることは変わらずに飛んでいた。
「もうじき到着じゃ」
「こんなに空高くあるなんて思ってなかったな」
「ふふ、竜人族は別名を天空族と呼んでおった時期もあるそうじゃ。竜人は空が一番力を発揮できる場じゃからのう」
「あれか?」
「うむ」
そう言って見えた大陸は天空大陸ともいわれてヒューマでは伝説化されている。
その昔、竜人としてアルフ神に作られた際に少数だったこともありこの天空に浮遊する大陸を作り、そこに竜人族を住まわせたという神話がある。
ヒューマでそう伝説化されている理由もこの大陸の高さにある。飛行機などないこの世界でこの高さにまで飛ぶことはヒューマでは無理だ。
魔法で飛ぶにしろこの高さは魔力切れを起こしても無理のない高さだからだ。
特殊な結界が施されており基本、竜人以外では入ることができない。
それだけでなく特殊な結界は空気の流れや密度までも制御しているので地上と変わらない空気圧を実現しているという。
特殊なのはそれだけでなく大陸も特殊で繁殖もそうだが竜人の子供はこの天空大陸でなければ育たないという。
一人前になるには竜化することで空を飛ぶことが大人と認められるのだとか。
卵から孵った際には人の形を取っており竜化はできないのだという。
リューイが産後に体を休めるために帰郷した理由もなんとなくだが理解できた。
この大陸、竜人のためにあるという大陸だけあり妙に安らぎを感じる。
「今日リュウを連れて帰ることは里の爺様には連絡してあるでのう。後から派手に降りてくりゃれ」
そう言ってリューイはひときわ大きな門をくぐる。
リューイに続いて門をくぐると不思議なことに勝手に竜化が解けた。
当然だが全裸になるので服を着こむ。音もなく降りると以外にも人が集まっていた。
「何を集まっておるのじゃ?」
「リューイが婿殿を連れて帰ると長老殿がいって居ったのでな。興味があって集まっとるんじゃ」
「ほほう、こ奴がリューイが番いに選んだというヒューマか」
驚いているとさすがは竜人族なのかあっという間に囲まれる。
「あ、あの…」
「角があるぞ、それも金色とは染めているわけではないだろうな?」
「いや、染めてなんていないぞ」
そこは否定しておく。
よく見ると男性陣だけでなく遠巻きに女性陣もいるようだ。
ちらりと視線を送るとそれだけで逃げられた。
「なんなんだ…」
「もういいじゃろう。爺様に会いに行くのじゃからそれくらいにしてたもれ!」
リューイがさすがに暑苦しく感じたのだろう。イラついた声を上げるとサッと引くように諦めたのか道を開けてくれた。
リューイは俺の腕を取り引っ張って歩きを促した。
「すまんのう。狭い里じゃから話はすぐに行き渡ってしまうのじゃ」
「それだと当然子供がいるというのも?」
「無論じゃ。久方ぶりの子供じゃから里中で甘やかされておるのではと心配になる」
「そうか」
「だがのう、一番の困りごとはそこではなくての。二人目はいつじゃと急かされておることじゃ」
「…………。二人目…ね。欲しいのか?」
リューイは少し頬を染めていった。その俺の腕を組んでいた手に力が入っているようだ。
そして何故だか角の辺りが痒み出していた。
「腹も落ち着いたでの。せめて今期の繁殖期で三人は欲しいかの」
「三人って何かあるのか?」
「無論じゃ。三人おれば里の結界やら防備に十分な数にできる。そなたの子じゃ。強く生まれるのは黒龍であれば当然じゃからのう。子の育成は心配せんでもええぞな。里中で平等に育成する習わしがあるで多いほうが喜ぶ。母親はもちろんじゃが父親も合わずとも理解し誰が父親かもわかるでの。平等に育てることができるのじゃ」
「………そうか。リューイが望むなら俺はいいけど…」
おれもさすがに話題が話題なので少し頬が染まる。
「そう言ってくれると嬉しいぞな。後でわらわのとっておきの場所があるからリュウに見せたい」
「とっておき?」
「うむ、とても絶景な場所での。この大陸でも僻地になるからめったに人は来ぬ。逢瀬にはもってこいの場じゃ」
里の中ほどまで来た頃にぎやかだった門から遠ざかるにつれて静かな空気に包まれていく。
「リューイ。あの山には何かあるのか?」
正面の山の山頂に光る光源が気になった。
「ああ、あそこは禁足地に当たる場での。この大陸を包む結界の軛があるのじゃ。代々族長の血筋の者以外立ち入れんのじゃ」
「族長の血筋?」
「妾の血筋のことじゃ。竜王の血筋だけが入れるんじゃ。そなたはじきに入ることになるだろうて」
「それは決定事項なのか?」
「爺様は是非と思って居るようじゃの。理由があるんじゃ」
「理由?」
「うむ。角じゃ。竜人の角はとても特別なものでの。竜王になるには角持ちが必須なのじゃ」
「そういえばさっきの人たちは誰も角を持っていなかったな……」
リューイは少しためらいを見せた。何か言いにくそうだった。
「ここだけの話じゃが、今、この里には角持ちは誰もおらんのじゃ…」
「誰も?」
「うむ。角持ちはわらわの父様が最後じゃった。妾が角を持って居ればと思ったことは何度もある。仕方のない事じゃがの…」
「でも、さっき必須と言ってなかったか?」
「うむ。じゃから今この里にはこの大陸を制御できる王が居らんのじゃ。子が産まれておらん理由もそこにあっての」
「王がいないと子供が生まれない?」
「うむ。それだけではない。大陸の豊かささえも王の在る無しで大きく違うのじゃ。年々緑が少なくなっておる」
「そんなことが…」
「角は一定期間を置いて生え変わる時がある。角持ちがこの大陸に居る時、大陸の状態によっては促進されることもあるという」
「角が生え変わる?」
「うむ、この大陸に居る間だけに起こる現象じゃ。恐らくじゃが、そなたの角は今回、生え変わるじゃろう。ひょっとしたらもう前兆があるやもしれん」
「どうして生え変わると?」
「先も言ったように王になるには角持ちが必須。なぜかといえば山頂にある結界の施設にその生え変わって落ちた角を捧げるからなのじゃ。その角の能力の高さでこの大陸での竜人の繁殖能力の底上げと緑や水や空気さえも豊かになるのか決まるのじゃ」
「それじゃ…」
「うむ。今山頂にある角は父様のもの。もうとっくに限界に来ておるのじゃ。新たな角をこの大陸は欲しておる。故にそなたの角はこの滞在期間中に落ちるであろうて…」
「それでか……。里の滞在中は竜人でいて欲しいというのは…」
「すまんのう……」
「気にするな。ある意味で納得しているさ」
「?」
「里に入ってからこっち角がかゆくてな。どうにも気になっていたからな」
リューイが前方の屋敷を指さした。
「あそこがわらわの実家じゃ。妾たちの子リューガもそこに居る」
屋敷に近寄るにつれて屋敷の前に数名立っている人たちを見つけた。
「どうやらリューガが急かしてしまったようじゃの。父様に会えると興奮していたと爺様から聞かされたからの」
「随分と成長が早い…」
「うむ、あの子は黒龍だけあって成長が早いようじゃ。普通ならば今の時期は歩くだけで精一杯というからの」
更に屋敷に近づくと待ちきれないのか小さな子供がこちらに歩いてきたではないか。
歩けるようになって幾分立つのかふらつく様子もなく向かってきた。
「ととさま!」
リューイが慌てて寄っていく。
「こりゃ、爺様からお外では離れてはいかんと言うたではないか」
「ごめんなしゃい…ボク、ととさまにあいたかったの…」
おれは近寄りしゃがみ込んでリューガの黒い頭を撫でた。
「あまり爺様達を困らせてはいけないな。だが嬉しいぞ」
小さな手はギュッと俺の服を握ってしがみついてきた。
おれはリューガの背後から人が近寄ってきたのでリューガを片手で寄せて抱き上げた。
「ととさまいいにおいがする」
「そうか?」
「うん!」
「お前さんがリュウ殿じゃな」
幾分歳がいっている男性から声が掛けられた。
「初めましてリュウ=クドウ=マリノスといいます。よろしくお願いします」
おれはリューガを抱えているので軽く頭だけのお辞儀に留めた。
「リューイの選んだヒューマと聞いてどんな男かと思ったが随分と美丈夫だのう。最も外だけではないようだがの…」
「ありがとうございます」
「ふふ、儂がリューイの祖父のサイリュー=ドラクドと申す。こっちは妻のランじゃ。よろしくの」
紹介された妙齢の女性は笑みを浮かべてお辞儀をしてくれた。
「リューイをお願いいたしますね」
「はい。リューガの面倒を見ていただいて感謝しております」
「うふふ、孫は可愛いものですから」
「大旦那様も若旦那様もこのような場所で立ち話も落ち着きませんし屋敷へどうぞ」
「これはこの屋敷を管理している執事ですわ。何か用があるなら何でも申し付けていいのよ」
「ありがとうございます」
屋敷を案内されてリューイと同じ部屋に通され、その日は親子でゆっくりとした時間を過ごした。
翌日閉鎖された結界内の空気にやっと体が慣れた昼頃リューガを昼寝で寝かしつけたときそれは起きた。
ベッドから離れて立ち上がった時、床に鈍い音をたてて落ちたそれは角だった。
その直後俺に軽い脱力感が全身を襲った。
さすがにふらついて膝をついてしまう。
横目に大きな音だったのでリューガが起きたのではと心配し視線をリューガに送るとそれは杞憂だった。
何もなくすやすやと熟睡していた。
その大きな物音はさすがに他の大人には聞こえたのかリューイが心配して部屋に入ってきた。
床に跪いて座っている俺を見て少し慌てているようだった。
「何があったのじゃ?」
小声で気を使ってきたリューイを安心させようと笑った。
落ちた角を指さし言った。
「心配いらん。角が落ちただけだ」
「ああ、よう見ると角が小さくなっておるな」
そう言ってリューイは俺の角に触りかける。
が、それは俺が制止した。
「触らないでくれ。まだ少し変わったばかりで痛むんだ」
「気がつかんで悪かったの。というよりもさっきより大きくなってないかえ?」
「元に戻ろうとしているんだろう」
おれは床に落ちた二つの角を拾った。
その角はなぜだが軽く熱があるようだった。
「熱を持ってる…?」
俺のその言葉にリューイも触ってみた。
「たしかに熱があるな。爺様に聞いてみるのがいいかもしれんのう」
俺は脱力感があるものの動くには問題のない範囲なので角を持ったまま移動することにした。
さすがは族長だけあり俺の異変に気がついていたようで持っていた角を見ると深い笑みを浮かべる。
「新たな角が手に入ったのう。少しいいかな?」
俺は頷いた。
案内されて入った部屋にはランさんもいた。俺の持っている角に目がいって事態をすぐに把握したらしい。にこやかに笑った。
目の前にある特殊な籠にその角を入れるように勧められるのでおとなしくその籠に角を入れた。
すると放熱が軽く収まったことを知る。
「リューイから聞いておるかもしれんがあえて聞かせてもらうかな」
「はい」
「そなたにこの竜人の里の王になってもらいたい」
「竜王になれとおっしゃるのか?」
「うむ、そうじゃ。我ら竜人族にとって角は特別なもの。角を持つ竜人は出自関係なく竜王への継承権を持つ。今回そのほうの角が落ちたことはこの大陸と竜人族の総意ともいえることじゃ」
「拒否できるんですか?」
「他に継承権を持つ角持ちがあるのならば可能ではあるが現在、角持ちはそのほう以外には居らん」
「…………」
「そして角が落ちた時点で竜王になることは確定なんじゃ。すまんのう」
「竜王になるのはかまわないが何かに縛られるとか、義務があるのか?」
「それは心配いらん。何もないからの。竜王は称号と思ってくれい。この竜人族で最強という称号じゃ。この大陸に認められし最強の竜。それが竜王という事だけじゃ」
「あるとすればそれは万が一、里の竜人だけで対処しきれない魔物が現れ襲われれば王として私たち竜人を守らねばならないという事かしらね」
「そんなことはほぼない。この高い位置にあるこの大陸に来るような魔物などめったにおらん」
「それだけなら構いませんよ。彼女と番った時点である程度は覚悟していた事なんで…」
「そう言ってくれると非常に助かるのう。お前さんの体調がいいようならすぐにでも角を持って継承しに行きたいが構わんか?」
「動くことも億劫なら明日にすればよいのですよ?」
「大丈夫です。動く分には問題ありませんので」
「無茶ではありませんよね?」
いやに心配してくるな…
「大丈夫ですよ。普段から無茶はするなとリューイを含めていろいろな人からくぎを刺されていますから無茶をするつもりはありません」
「それならば良いのです。安心しましたわ。リューイの父は角が落ちたとき、それは、それは、動けないほどでしたからね」
「御心配ありがとうございます」
「ふふ、ではいきましょうや」
「妾たちはリューガのこともあるでな、留守番じゃ」
「ああ」
そう言うと角の入った籠をもってサイリューと共に山頂へと向かった。
山頂へ向かう道中にいろいろとサイリューは教えてくれた。
角の必要性と山頂の管理は竜王の血筋が行う事などだ。
事前にリューイから聞いたこととほぼ変わらない情報だった。
だがその中で気になることがあった。
「竜人の角は増幅器官じゃ。その身にあるうちはその者の制御にあるで何も問題はないのじゃが、落ちると制御から外れるんで角の色によっては暴走もあるんじゃ」
「暴走ですか…」
「うむ。初めに熱が籠りだしそれも放置するとやがては周囲に被害をもたらす。色によってはその被害は絶大になる。お前さんの角の色は金じゃからの、その影響はすさまじいじゃろうて」
「それは…」
「それだけではなく持っていた竜人の魔力の高さで角の持続が決まる。息子のリョーマは黒で魔力はからきしじゃったがそれでも四百年持った。お前さんは金、それも賢者と聞くほどに高い魔力を持っておる。軽く五百年はこの大陸を豊かにするじゃろうて」
サイリューは嬉しそうに語る。
「金は水を豊富にたたえ、緑や植物の成長を促進させ、この大陸におる家畜の健康を保証し軽やかな風は結界と共に我らの営みを支える。そして何よりもこの大陸におる生き物の繁殖を大きく促進させる機能もある。お前さんの金の角を捧げたとき最も大きく影響するのはその繁殖の底上げじゃ」
「底上げですか…」
「うむ、角の奉納は同時にそれぞれ個の繁殖期の期間をうち消し、新たに繁殖期の到来ともなる。今回、角持ちのそなたの来訪が里中に広がっておったのは角の奉納が起こることが予期できたからじゃ」
「そういう事でしたか…」
「うむ、子が欲しいと思う夫婦はたくさんおるでな。例外的に角の奉納時の繁殖期は全年齢に対応しておるんで、ある程度歳がいった夫婦であっても子が授かる機能がある。産みやすい土台なのじゃ」
「そこへきてお前さんはヒューマじゃ。言うことはわかるであろう?」
「種として活性化するという事ですか…」
「うむ、ほどなく出産で、にぎやかになるであろうて。リューイの番いとなってくれたことに深く感謝しておる」
「そう言ってもらえただけで価値はあります。竜人もエルフと同じでヒューマ嫌いが多いと聞いたので…」
「たしかにヒューマを嫌うものは多いがの。それ以上に己よりも強いものを好むのが竜人じゃ。そなたを嫌うものはおらんじゃろて。何しろ竜王になっておるわけでもないのにその覇気が恐ろしいほど伝わるでの」
「その覇気なんですが、抑えることはできるものですか?」
「心配はいらん。今回の継承を行えば自然と覇気は魔力と同じように操作できるようになる。今まで苦労しておったのではないのかの。なまじその覇気が強いおかげで垂れ流し状態じゃからの」
「はい…。獣人たちに怯えられてしまいました」
「じゃろうなあ…。と、見えたぞ。あの洞窟が継承に行われる竜王の塒じゃ」
「竜王の塒…」
「実はの、あの塒で竜王が番いと共にヒト化したまま繁殖を行えば竜化せずとも子が授かるんじゃ」
「え」
「知っておるじゃろう。竜人は竜化して繁殖を行わねば子は授からんということは…」
「はい」
「あの塒は特殊な場での。角を捧げた竜王とその番い相手のみがヒトのまま子を授かることのできる場なんじゃ。あの場で授かった子は無病息災と次期竜王を確約される、アルフ神の祝福されし場なんじゃ」
「なぜそんな場が?」
「お前さんは無事に竜化できたが竜の涙を服用したヒューマが全員、竜化できると限らんのじゃ」
「!」
「竜の涙を投与されたヒューマは例外なく角を持ち竜王になる定めもある故、竜化出来ねば子は残せんじゃろう。確実に子を残す手段としてあの場があるんじゃ。ヒューマの生命力を確実に血に残すための場というわけじゃの」
「そうですか…。でも俺には必要のない場だな…」
「ふふ、そうじゃの。じゃからの、二人目もよろしく頼むぞ」
「…………。善処しましょう…」
そうして俺たちは洞窟に入り奥にあった質素な祭壇に置かれてあった黒い角と自分の金の角を交換した。
交換した直後に祭壇は大きく輝きその輝きは山頂へと伝播しひと際大きく金の光を山頂から周囲に照らし出した。
「何の変哲もない洞窟に見えるんだけどな…」
「そう見えるじゃろうがそれは資格があるから変化は起きんのじゃ。資格のない者はこの洞窟すら視認できん。祭壇も触れることすらできん」
そうして俺たちは無事に継承を行い、山を下りた。
麓に降りるとなぜだか全身に力が漲るように感じた。
それはサイリューも同じなのか頷いた。
「早速、影響があるようじゃ、空気が変わったの」
「そのようですかね」
「うむ」
屋敷に戻るとリューイが興奮しているのか有無を言わさずに俺の首に腕を回して口を奪ってきた。
「…………!」
思わず抱き留める。リューイは貪るように口を奪うと落ち着いたのか首に回した腕はそのままに口を解放して言い放った。
「リューイ…?」
「体が興奮して静まりそうにない。今日はもう離さないからの…」
「え…?」
おれはよくわからないうちにリューイに腕を掴まれて引きずられていく。
「リュ、リューイ?」
「愛の交感はほどほどに子作りもしてね」
そんなランさんの言葉が聞こえ遠ざかっていった。
乱暴に引きずられて部屋に御持込されてしまった俺はリューイの興奮に煽られるように何度も食べられてしまったのだった。
翌日、朝を過ぎ昼もそこそこにやっと目を覚ました俺にリューイは開口一番泣いてすがってきた。
「すまん、すまんかった…。妾は…」
「もういいから。気にしてない。体に引きずられたんだろう事は気がつくさ…」
あの後、俺は朝まで寝かせてもらえなかったおかげでこの昼になろうかという時間に起きることになったのである。
胸にすがって泣いているリューイの頭をやんわりと撫でる。
「まさか角の奉納がここまで影響が大きいとは思わなかったよ」
「妾も予想以上じゃった…」
その日の予定としてリューイのとっておきの場へ行く予定だったがそれは一日延期した。
そうせざるをえなかったからだ。
その日は予定を延期したおかげでリューガとゆっくりとした時間を過ごした。
とは言えなぜか来客が多かった。
後でサイリュー殿に聞くとほぼ妊娠報告だったという。
さすがに驚いた。
角が変わるだけでこんなにも変化が起きるとは思っていなかったからだ。
サイリュー殿曰くここまでの変化は珍しいとのこと。
それまでの角が、かなり劣化が激しかったのに加え、俺の角の性能が良すぎたのだという。
金と黒の違いということもあるという。金は黒の上位色で黒の全属性に加えて生命に大きく作用する力があるという。治癒力があがったり、生殖能力が上がるなど多岐にわたる。
今回の俺の来訪が竜人にとって最も良いほうに向かったと聞かされ安心したのだった。
翌日昼を過ぎて俺とリューイは予定通りリューイのとっておきの場へと出かけた。
リューイが俺に見せたいと言っていたのがわかるほどその場はとても雄大で美しい自然が広がっていた。
天空大陸にあるその場は遥か下に広がる緑の大地とどこまでも蒼く白い空が広がる絶景だった。
異世界に転生し竜と化して自分のその存在が大きく感じていた俺にとってその景色は己の存在がいかにちっぽけなどこにでもある一つの命なのだと実感させてくれる場だった。
ちっぽけな自分はもっと努力し傲慢になるなと言われている気さえした。
リューイが呟いた。
「美しい場じゃろう。わらわはここに来ると世界の偉大さを身に染みるのじゃ…」
竜化し飛行しなければ来れないこの場は、確かに人はこない場だった。
リューイは誘うようにその長い首を俺の首に摺り寄せてきた。その仕草は求愛の行動である。
「そうだな。俺もそう思うよ。俺に見せたいと言ったのがわかる…」
俺は答えるように首を摺り返した。
その後は日が暮れてあたりが暗くなるまで愛を交わした。
夜遅くに屋敷に戻った俺たちはその愛の熱をそのままに二人で休んだ。
翌朝リューイを見たラン殿は開口一番に嬉しそうに祝辞をくれた。
そう二人目が腹にいたからだ。
その日俺は屋敷前の広場にゲート用の祠を設置した。
角を奉納したおかげだろうか奉納する前は設置してもなぜかうまく作動しなかったのだが今回はうまくいった。それどころか普通のゲートよりも性能は良さそうだった。
いつでも城と繋がるようにリューガが安全に俺に会いに来れるようにと設置したのだ。
当然ラン殿とサイリュー殿とリューガは身内設定したのでフリーパスだ。
本当は体調を鑑みてリューイは里に残そうかと思っていた。
だがゲートを設置したのを確認してリューイは俺と一緒に帰ると聞かなかった。
名残惜し気に俺とリューイは里を後にするのだった。
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