第10話:発展の準備②
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俺がこの集落で生活をし始めて、数週間が経つ。
相変わらず、ルナがノックもなしに毎朝おこしにくる。ノックの意味を知らないのか。
お陰様で、毎朝目の保養ができ、すこぶる健康だ。
他のスライムたちとも、だいぶ信頼関係ができてきた。
アリフレタ草の花からは種ができ、それを畑に植えてみた。
嬉しいことに、植えて数日で芽がでてきており、簡単に栽培が可能なようだ。
これで、スライムたちの食事には困らなそうだ。
俺の食事はというと、正直満足いくものではない。
小さな果実と、暇なときに近くの小川で釣った魚がメインだ。
もう少し、腹の足しになるような作物はないかな。お米みたいな。
でも、ひとまずは集落→村みたいな感じで、発展しだしているのではないだろうか。
村の仕事も、ライリーを中心にスライムたちが自主的に農業を行ってくれている。
小屋の立て方はまだまだだが、藁ぶき屋根の心細い小屋くらいは建てられるようになった。
村のインフラは正直微妙だ。
一応「創造」で、村の周りには柵みたいなものを建ててみた。見張り台もあり、また他の種族から襲われたときには直ぐに分かるようにしている。
だけど道なんてものはほとんどなく、水も近くの小川まで汲みに行き、村に作った井戸に貯めている。街灯とかはもちろんなく、必要になったら俺が火の魔法で松明を作るといった感じだ。この世界のインフラはどうなっているのか?一度他の街を見学に行きたい。
そうこうしていると、見張り当番のスライムが声を上げる。
「ユラ様!馬人族の群れが、こちらに向かってきています!!」
「馬人族!?」
また襲撃か。前のゴブリンよりは強そうだな。
急いで見張り台の方向に向かう。
「敵意はなさそうです!数人のケガ人がいるみたいです!」
馬人族は、数人が血を流して足を引きずっている。明らかなに攻撃の意思はなさそうだが、念のため柵の外で確認する。
「俺は魔王のユラ。この村のリーダーだ。君たちに敵意がなさそうだが、念のため何のためにここに来たか教えてほしい。」
「私は馬人族の長、ロダン。仲間たちが盗賊に襲われた。できれば、ここで治療を行ってもらえないだろうか!」
語気が強い。よっぽど切迫した状態の仲間がいるのか。
正直、うちの村には十分な治療設備は整っていない。
「うちの村で静養するのは構わない。しかし、残念ながら、うちの村には君たちを治療する十分な設備がない。」
「それだけでも構わない。少しの間、傷ついた者たちを横にならせてほしい。幸い、少しばかり“ポーション”は持っている。それを飲んで休めば、いくらか傷も癒えると思う。」
“ポーション”?回復薬のことか。
敵意がないことを確認できたので、注意はしながらも村の中に入れることにした。
・・・
「藁のベッドか…ありがたい。これで仲間も休められる。」
「こんな設備しかなくて申し訳ない。で、どこで盗賊に襲われたんだ?盗賊って、ゴブリンたちか?」
ロダンが説明をしてくれる。
ロダン達は、ここの草原地帯に群れで暮らす遊牧民だそうだ。この草原地帯には魔物以外にも羊やヤギなどの動物もおり、かれらは動物たちを家畜として育て、生活しているとのこと。しかしながら、この草原地帯の近くには、人間族が暮らす街がある (なんだと!?)らしい。人間族の間では、馬人族の蹄が装飾品として高く売れるらしく、密漁目的の盗賊に襲われることが、ここ最近増えているとのこと。
「なるほどな。この草原の近くに、人間の街があるのか。」
人間への興味はあるが、魔物への扱いをみると、人間と魔物の関係はあまり上手くいっていなさそうだ。
「そうなんだ。でも助かった。ケガをした全員分は足り無かったが、数人には“ポーション”も飲ませたし、数日後にはここから動けるとは思う。迷惑をかけて申し訳ない。」
「いや、いいんだ。それより、その“ポーション”って?回復薬のことか?」
「知らないのか?少ししか残っていないが…これがポーション。あまり質がよくないから、大きな回復効果は期待できないが、ある程度の傷なら、これで治せる。」
そういって、ロダンは俺にポーションを見せる。
俺は、「創造」でポーションを作れないか確認する。
《告:ポーションを創造します。アリフレタ草を消費して、ポーションを創りますか? はい/いいえ 》
そんな予感がしていました。
アリフレタ草、持っています。
俺は即座にポーションをいくつか作成する。
「はい、これ。仲間に飲ませろよ。」
「え!これはポーション!?いま、どうやって??」
「説明は後でするよ。とりあえず、傷ついた仲間のところに行こう。」
ケガ人が集まっている小屋に移動する。
片っ端から、ケガ人にポーションを飲ませる。良かった、「創造」で作成したポーションも効いているようだ。傷がみるみる治癒していく
あらかたのけが人を治して、最後の一人。
また瞳を奪われる。
美しい馬人が、そこにいた。
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