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第48話 珍獣? その1

 俺が宿の部屋の机で1週間前に購入した魔物図鑑を読んでいると、


 トントン


 図鑑を読むのをやめて、部屋の扉に顔を向ける。


「はい、どうぞ、開いてるよ!」


 俺は扉の外にいる人に向かって部屋に入るように促す。


「失礼しまーす。」


「ん、どうした?」


 ドアから入ってくる人は、カインであった。


「えーっと、今日はね、兄ちゃんに相談というか、お願いがあるんだけど・・・」


 カインは少し神妙な面持ちである。


「珍しいな。お前が頼みごとをするとは」


「えっ!?・・・うん」


 俺は読んでいた魔物図鑑を閉じて立ち上がり壁際の棚の上に置く。


「立って話をするのもなんだから、座れよ」


 そう言うと、棚から紅茶の袋、砂糖、ティーポット、とティーカップを2個テーブルの上に出す。

 部屋に備え付けのポットからお湯をティーボトルに入れてお茶を入れる。


「ハイ、どうぞ。砂糖は自分で入れろ」


「うん、ありがと」


 俺とカインは紅茶を啜る。


「それで、相談って?」


「兄ちゃんは、今暇か?」


「・・・まあ、特に何かやる予定は無いな。」


「じゃあ、ちょっと俺達とパーティを組まないか?」


「なんだ、急に」


「あのね、今丁度いいクエストがあるんだけど、ちょっと頭数が足りないんだ」


 そういうと、カインは依頼書の写しを俺に渡す。

 そこには、次のように書かれていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆


依頼:

コボルト退治


依頼主:

カリン村村長


冒険者ランク: 


依頼内容:

村の周辺で巣くったコボルトの軍団が村人および行商人を襲ってくるので討伐してほしい。


詳細:

詳細はカリン村にて


報酬:

120000ゼニー+必要経費その他諸々


特筆事項:

4人以上のパーティ限定(※ギルド指定)


◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺はその写しをサッと読む。

 カリン村までは歩いて10日程度の距離だ。

 軍団というところに一抹の不安がよぎるが、特別難しいクエストではない。


「これ、別に俺が行かなくてもいいんじゃないのか?」


 率直に思ったことをカインに告げる。

 コボルトはそんなに強い魔物ではない。

 犬の顔をした人型の魔物で、大きさはゴブリンよりちょっと小さくて更に弱い。

 問題はゴブリンより頭が良く集団で行動することが多く、連携した攻撃をするという程度だ。

 上手く各個撃破していけば、カイン達でも大丈夫だろう。


「いやー、それが、今俺のパーティでダンとミシェルが別の仕事をやっていてちょっと手が離せないんだ。とは言ってもFランクの俺達について来てくれる人の当ては無いし・・・おねがい!」


「うーん、そーだなぁ」


 俺は天井に目線を向けて考えるフリをする。


「・・・えっと、報酬は7:3で」


「3割か、少ないな」


「ち、違うよ。7が兄ちゃん、俺達が3だよ。」


「え!?いいのか。そうするとお前ら1人1割になるぞ」


 俺はカインの申し出に少しびっくりする。


「ああ、いいんだ。この依頼、兄ちゃんの実力なら1人でもOKだろうから・・・」


 カイン達は俺がバッファローや大とかげを倒せることを知っている。

 それから考えると少なくともCランク程度の実力は推測できる。


「ふーん、でもお前達1人1割じゃたいして儲けは無いんじゃないか?」


 俺は疑問を率直にぶつける。


「えっとね。俺達こういった街から離れる遠征系のクエストは初めてなんだ。で、実力的には丁度いいレベルのクエストだから今後の実績のためにやりたいんだ。だから、リーダーは俺っていう事でおねがい。」


「ほー、実績ね。・・・うん、いいだろう。どうせ今すぐやるべきことがあるわけでもないからな。一緒に行ってやるよ」


「本当! よっしゃー、やりー!」


 カインは心底喜んだ態度をし、そういうとすぐに別の書類を出す。


「ココに、兄ちゃんのサインを書いてくれ!そうすれば後はこれをギルドに出せば臨時パーティの一員だ。」


 俺は一応前回のこともあるので、書類の中身をきっちり読む。

 カインなので騙すことは考えられないが、こういったことをクセにすることは大切だし、そのために読み書きを覚えたのだ。

 書類はカインをリーダーにしたパーティに参加するためだけの内容で、特に問題は無い。

 ちなみにこういった書類を提出する場合は、前回の事件後、必ずサインした者が同席することが義務付けられた。


「で、いつ出発するんだ?」


「兄ちゃんの準備が出来たらすぐにGOだ」


「わかった。じゃあ、明後日にしよう。明日1日で準備を済ます。」


「ありがと。じゃあ、明後日の朝ギルドに来てよ。あと、移動の馬車と道中の食料は俺が用意するから」


「馬車で移動かぁ。・・・わかった」


 カインは俺との交渉が上手くいったので非常にご機嫌な様子で部屋を出て行った。


(それじゃ、準備をしますか)


 俺はコボルト討伐クエストのための準備を始めた。





◇◆◇◆◇◆◇◆



 そして、出発の日となった。

 俺が荷物を持ってギルドホールに入ると、すぐにカイン達が出迎えた。

 一緒に行くメンバーは、


 盾職 カイン 男 人族 14才 LV6 ランクF リーダー

 弓職 ムーイ 男 人族 14才 LV6 ランクF

 弓職 キュィ 女 犬族 13才 LV6 ランクF


 皆、俺に読み書きを教えてくれた先生でもある。


「兄ちゃん、えらく、荷物が多いな。何が入ってるんだ?」


 カインが俺の荷物を見て首をかしげる。


「ああ、ちょっとな。いろいろだ!」


 俺は適当にはぐらかして答える。


「それで、荷物を馬車に乗せたいんだけど、どこだ?」


「馬車なら、ギルド裏に停めてあります」


 キュィが俺の質問に答える。


「わかった。じゃぁ、先にメンバー登録を済まして、すぐに出発しよう」


「わかった」


 カインが答えると、俺達はギルドカウンターに向かいメンバー登録を済まし、カリン村に向けて出発した。


 道中の御者は、取り敢えずカイン達3人で交代に行った。

 俺は車の免許は持っていても、馬車の動かし方は知らないのでカイン達に教えてもらい3日程度経ってやっと1人で馬車を操れるようになった。


 パッカ、パッカ、パッカ


 バレスを出発して9日たった。

 もうすぐ、カリン村に到着する。

 道中は街道沿いで、ゴブリンに数回遭遇しただけで特に問題は無かった。

 馬はリズム良く街道沿いを進んでいく。

 

 ヒィ、ヒーン

 

 急に馬が嘶いたかと思えば、馬車が急停車し、中にいた俺達はもんどり打って倒れる。

 そして、ほろ馬車の天幕にプシュ、プシュと次々に矢が突き刺さる。 


 「こっ、コボルトの襲撃だ!?みんな戦闘準備ぃー」


 御者をしていたカインが馬車内の俺達3人に大きな声で叫び、俺達はそれぞれの武器を持って馬車から飛び出した。



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