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第49話 珍獣? その2

 俺達3人は馬車の後ろ側からポポポーンと飛び出し、周囲を見回す。

 少し離れたところに三列縦隊で合計9匹のコボルトたちが、ショートソードを持って馬車に向かって走ってくるのが見えた。

 その後ろでは2匹の弓を持ったコボルトがひっきりなしに弓を放っている。

 更に、その後ろで他のコボルトより一回り大きい個体がなにやら指示を出している。

 カインは俺達のところに走ってきて、俺とコボルトたちを交互に見返し、あわてた表情をしていた。


 「カインはキュィとムーイを連れて馬車を盾に大きく回り込み、あの指揮している個体と弓コボルトを叩け」


 「えっ!?兄ちゃんはどうするの?」


 「俺が、あの向かってくる9匹を引きつけて時間を稼ぐ」


 「でも・・・」


 「議論している暇は無い。ここは俺の指示に従え!」


 「・・・わ、わかったよ」


 俺はカインの判断を待っていると間に合わないと感じ、カインには悪いと思いつつ作戦を指示する。

 行動が決まるとカイン達の動きは早かった、馬車の後ろに回り込み走ってくるコボルトたちの視界から外れる。

  

 (さて、いっちょやるか!)



 その後、俺は気合を入れて盾を前面に掲げる。

 ステータスウィンドウを開いて、土魔法にスキルボーナス値を+5にして、魔法の杖を腰のホルダーから抜いて呪文を唱える。


 「アースウォール」


 三列ダッシュで近づいてくるコボルトたちの隊列の真ん中付近に、1mほどの土の隆起が発生し数匹が空中に飛ばされる。

 そして、土壁の後ろの数匹が急に止まれず壁にぶつかる。


 (よっしゃぁ!足止め成功)

 

 上手くコボルトたちを分断出来たことを内心喜ぶ。

 しかし、前方3匹は一瞬後ろを見たが、無視して速度を保ったまま更に近づいてくる。

 俺は筋力にスキルボーナス値の23をすべて極フリして、盾を両手でしっかり持ち、走ってくるコボルト三匹に向かって全速力でダッシュする。


 ドガッ、ドガ、ドガーン


 コボルト達はボーリングのピンのように三匹とも後方に吹っ飛ぶ。

 俺はその三匹には目もくれず、そのままその後ろで陣形をなおしているコボルトたちに向かって盾を再度前面にして体当たりを食らわす。


 バカーン


 残りの6匹は、丁度3列に並び直して駆け出そうとしたところを、俺から体当たりを食らって散り散りに吹っ飛ぶ。

 俺が後ろを振り返ると、体当たりをされて吹っ飛んだコボルトたちは地面に転がっている。

 すぐさまステータスウインドウを開き、スキルボーナス値を器用さに+8、素早さに+15と振り直して、ショートソードを抜く。

 そして、一番近くに倒れているコボルトに近づいて喉に向けて上から剣を突き刺す。


 「ギャン」


 コボルトはショートソードを喉に突き立てられ、一瞬手足をバタバタさせていたがすぐに力尽きて動かなくなる。

 俺はそれを近い個体順に素早く機械的におこなっていく。


 「ワゥゥーン」


 3匹目のトドメをさしていた時に、後方から変な声が聞こえた。

 その瞬間、立ち上がって体勢を立て直しつつあった残りのコボルト達はバラバラに逃げ出し始めた。

 取り敢えず俺は一番近い場所にいたコボルトを追いかけて、背中を切りつけ1匹を倒すが、残りは近くの森に逃げ込まれて姿を見失った。


 (くっ、逃げられたか!)


 俺は安全確認のために再度周囲を見回すと、カイン達3人が俺のほうに走ってくるのが見えた。


 「お前ら怪我は無いか?」


 「大丈夫です」


 ムーイが即座に返答する。

 

 「そうか、それであの指揮していた奴はどうなった?」


 俺はカインに聞く。


 「うん、はじめは俺達が近づいてくるのを見て迎撃の態勢を取っていたんだけど、いざ戦闘という時になった瞬間、一声鳴いたあと一目散に逃げられた。結果、ムーイが弓で射抜いた弓コボルト1匹だけしか倒せなかった」


 「・・・そうか」


 「それにしても、やっぱすげぇな、兄ちゃん。あの咄嗟の状況で4匹倒すとはねぇ」


 「そんなに褒めるなよ。テレるじゃないかぁ」


 俺はまんざらでもない態度で視線をそらし、話を戻す。


 「じゃぁ、倒したコボルトたちの装備品を回収して村に向かおう」


 「「わかった」」


 話はまとまり、4人手分けをしてコボルトたちの装備品を回収する。

 コボルトの死体は街道沿いに置きっぱなしにするわけには行かないので森の中に投げ捨てた。

 後は森の動物が処理するだろう。


 「取り敢えず、村までの間、馬車の上から見張りをするよ」


 「悪いね。兄ちゃん」


 「まあ、連続して襲ってくるとは思えないが用心することにこしたことはないからな」


 そういうと俺は馬車の天井に登り、寝そべって見張りを行うことにする。

 屋根は分厚い布で出来ているため、ちょっと安定感が無いがこの際仕方ないだろう。

 俺は我慢して半日見張りを続けると、遠くに村が見えてきた。





◇◆◇◆◇◆◇◆


 村に入るとすぐに村人達がわらわらと近づいてくる。

 村の外から人が来ることが珍しい様子で、皆興味津々といった感じだ。


 「どこさから、きなすった?」


 その中の1人でいかにも農夫という感じの爺さんが、さも珍しそうにカインに尋ねてくる。


 「えーっと、バレスから冒険者ギルドで依頼を受けてきました。村長さん宅はどこですか?」

 

 「おお、冒険者さんですかい。じゃぁ、コボルトの件けぇ」


 「ええ、そうです」


 「わかった、わかった。じゃぁ、ついてきなんせぇ」


 カインは、爺さんの後ろでゆっくり馬車を進ませる。

 少し村の中を進むと、他の建物より大き目の建物が見えてきた。


 ドンドンドン

 

 「村長さーん、いるけぇ。コボルトとの件でぇ、冒険者さん一行が到着したどー」


 ガチャリ、ギィーッ


 扉が開くとそこにはハゲちゃびんで、鼻下にちょび髭を生やして、でっぷりしたおっさんが笑顔で出迎えてくれたのだった。

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